Shuter Island


2010年4月10日(土)「シャッター アイランド」

SHUTER ISLAND・2009(IMDbでは2010年)・米・2時間18分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG12指定)(超日本語吹替版もあり)

公式サイト
http://www.s-island.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

1954年、精神障害の重犯罪者だけを収容する絶海の孤島「シャッター・アイランド」から1人の女性収容者が消えた。連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)と新しく相棒になったチャック・オール(マーク・ラファロ)は捜査のため島に渡り、院長のジョン・コーリー医師(ベン・キングスレー)から事情を聴き、捜査を開始する。

74点

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 残念ながら、謎解きミステリーというのとは違う。これを期待すると肩透かしをくらう。ネタバレになるが、これは「“アイデンティティ”」(Identity・2003・米)などと同じ構成で、心象風景をメインにした作品。だいたい食堂で尋問するあたりで気が付く。ボクもわかったのだから、ほとんどの人が気付いたのではないだろうか。すると、あとは真相とは関係のないどうでもいい内容なので、飽きてしまう。悲惨で痛ましい話ではあるが、眠かった。真相はそれほど衝撃的でもなく、エンディングはちょっと意外だったが、それほどの「謎」でもなかった。ただIMDbでは8.1点の高評価。

 上映前に、予告でも使われていた「錯視」の例が出るが、ほとんど関係ない。映像は重厚でいかにも映画という感じの堂々とした作り。特に導入部の収容所に入って行くところは、まるで観客がその施設に入って行くかのような雰囲気。恐いと同時に何かが起きる予感というか、期待も含まれる微妙な感覚。さすがの横綱相撲。

 ただ脳の中での話だから、いくら矛盾があっても良いし、時間軸がデタラメでもいい。説明の必要もない。もちろん日常生活で実際にあったことや、過去の人生で体験したことなどがキーにはなっているが、それはあまり重要ではない。となると観客の興味としては、どこまでが現実の出来事で、どこからが頭の中での出来事なのかだけ。

 時代を反映して、やたら煙草が登場する。男も女も、みんな吸いまくっている。ラッキーストライクが多かったような。銃はディカプリオがS&Wのスナブノーズを腰の革ホルスターに入れている。時代的に言うとミリタリー&ポリスかチーフスペシャルか。相棒のラファロはコルトのメダリオンが入っていたので、ディテクティブだろう。同じく腰の革ホルスターに入れていた。

 回想シーンの自殺したドイツ兵はワルサーPPKではなくPPのようだった。しかもシルバーめっき。この時ディカプリオはもちろんM1ガーランド。ほかにM1カービンもあった。現在の島の警備員はM1903ボルト・アクション・ライフルとショットガン。ディカプリオがM1903を奪う。ラストでは4インチのS&Wリボルバー、たぶんミリポリ。ただしおもちゃという設定。

 ラストのディカプリオのセリフがショッキングだ。「どっちがマシかな、モンスターとして生きる方のと、正気で死ぬのと」。これはつらい。

 レオナルド・ディカプリオは作品を厳選しているようで(できる立場で)、考えさせられるおもしろい作品が多い。どちらかといえばアクションものが多い感じ。本作も実に素晴らしい演技だし、自作となる「インセプション」も期待大。知的障害の少年を演じてブレイクした「ギルバート・グレイブ」(What's Eating Gilbert Grape・1993・米)の時は幼い感じだったが、いまや36歳。プロデューサーとしても活躍している。銃の撃ち方もうまい。

 相棒のチャック・オールを演じたのはマーク・ラファロ。良い役も悪い役もこなす人で、最近では「ブラインドネス」(Blindness・2008・米)でジュリアン・ムーアの夫を、「かいじゅうたちのいるところ」(Where the Wild Things Are・2009・米)でママの恋人を演じていた。

 院長のジョン・コーリー医師はベン・キングスレー。「ガンジー」(Gandhi・1982・英/印)でアカデミー主演男優賞を受賞した実力派。悪役が多いような気がするが、本作はそれをうまく使っている。なんだか怪しい雰囲気。最近はあまり作品に恵まれていない感じで、良かったのは「ラッキーナンバー7」(Lucky Number Slevin・2006・独/米)くらいか。

 もっと謎の存在のジェレマイアー医師はマックス・フォン・シドー。この人は出てるだけで謎っぽい雰囲気がある。なんといっても強烈だったのは最恐ホラー「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)の神父役だろう。その時からおじいちゃんのイメージだった。1929年生まれだそうだから、81歳。これは驚き。スパイ・アクション「コンドル」(3 Days of Condor・1975・米)の殺し屋も良かった。この前に見たのは「ラッシュアワー3」(Rush Hour 3・2007・米/独)だったか。

 ディカプリオの美しい妻レイチェルというかドロレスは、ミシェル・ウィリアムズ。ちょっとHなミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)でSを演じた人。とにかく美人で、魅力的。急逝したヒース・レジャーとの間に子供をもうけているのだとか。

 原作はクリント・イーストウッド監督の「ミスティック・リバー」(Mystic River・2003・米/豪)の原作者でもあるデニス・ルヘインの同名小説。自ら製作総指揮として参加もしている。脚本はレータ・カログリディス。なかなか面白かったロシアのファンタジー・アクション「ナイト・ウォッチ/NOCHNOY DOZOR 」(Nochnoy Dozor・2004・露)や、オリヴァー・ストーン監督の退屈だった歴史劇「アレクサンダー」(Alexander・2004・独/米ほか)を手掛けている。うまいのかヘタなのかというより、得意分野かどうかという問題かもしれない。プロデューサーでもあって「アバター」(Avator・2009・米/英)の製作総指揮にも名を連ねている。本作の製作総指揮も務める。

 監督は名匠、マーティン・スコセッシ。衝撃の「タクシー・ドライバー」(Taxi Driver・1976・米)、巻き込まれコメディの傑作「アフター・アワーズ」(After Hours・1985・米)などニューヨークを舞台としたものが多かったが、最近はいまひとつの感じ。香港映画のリメイク「ディパーテッド」(The Departed・2006・米/香)で念願のアカデミー賞監督賞を手にするが、そんなに良かったかという感じも。

 公開2日目の2回目、超日本語吹替版の後の字幕版初回、新宿の劇場は前日に座席を確保しておき、30分前くらいに着。外で買ったものの劇場内への持ち込みが禁止されているので、買ってきたコーヒーを飲みながら待つ。20分前くらいに開場し、場内へ。

 遅れてくる人が多く、予告どころか本編が始まっても入ってくる人が多かった。当日券を渡す時にもっと徹底したらどうか。せっかく気分が高まってきている時に、しらける。年齢層は20代くらいから中高年までと幅広く、男女比は4対6くらいで女性の方が多かった。まあディカプリオだからなあ。最終的に287席がほぼすべて埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「ザ・ウォーカー」は新バージョンか長いバージョンでの予告。早く見たい。画面が左右に広がってシネスコになってから、3D-CGアニメの「ヒックとドラゴン」は最初人形アニメかと思ったほど、リアルな絵で驚いた。が、ストーリーはどうなんだろう。ありふれ過ぎている感じがしたが……。

 意外だったのは「エアベンダー」。あのM・ナイト・シャマランの最新作だが、新予告で、ティーザーはガッカリな感じだったが、今度はちょいと面白そうだった。はたして?

 劇場は全館禁煙のはずなのに、隣の席のヤツがタバコ臭くて、困った。そして相変わらず、エンド・クレジットになるとすぐ携帯をチェックするヤツ。どうしてロビーに出るまで待てないのだろう。出るまで1分も掛からないだろうに。しかもロビーなら明るくて見やすいわけだし。そして、新劇場は前列との間が広めなのに、それでも足を前席の背もたれに当てるヤツ。響くんだって言うの。マナーがなってない。遅れて堂々と入ってくるヤツは多いし、「盗撮禁止」ばかり上映してないで、マナー向上の上映をもっとすべきでは?


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