District 9


2010年4月11日(日)「第9地区」

DISTRICT 9・2009・米/ニュージーランド・1時間52分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(デジタル、Red One Camera、1.85)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://d-9.gaga.ne.jp/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

1982年、南アフリカ、ヨハネスブルク上空に突如として巨大なUFOが飛来、空中に停止したまま動かなくなった。その後、人類が船体に穴を開けると中には栄養失調状態のエビのようなエイリアンが多数おり、難民として隔離地域「第9地区」に一時的に住まわせることになった。飛来理由もわからないまま28年が経過。エイリアンの数は増え、犯罪を働くものも出現し、「第9地区」はスラム化していた。超国家機関MNUはより環境の良い「第10地区」への強制移住という名目で、エイリアンの武器を没収する作戦を開始する。責任者はMNUの重役の娘タニア(ヴァネッサ・ハイウッド)と結婚した娘婿のヴィカス(シャールト・コプリー)に任命された。ところが、強制移住執行中にクリスチャンと名乗る知能の高いエイリアンの家で、黒い液体を浴びてしまい、とてつもない事態が発生することに。

75点

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 かなり気持ち悪い。1つにはエビみたいなエイリアンが、ゴミがあふれるスラム地区が、チビ散る肉片、血飛沫、膿、暴力が……そして1つには手持ちカメラによるぐらつきが(シネスコでない分いくらか助かってはいるが)。物語としては特に新しくないが、設定が面白く、SFXもすばらしい。UFOの巨大母船は本当にそこに浮いているようだし、立って2足歩行するエビみたいなエイリアンも同時撮影したように見える。どうやって撮ったんだろう。エンディング・クレジットではものすごい数のSFXスタッフの名前の列が!!

 ただひとつ惜しいのは、誰1人有名俳優が出ていないのは良いとしても、主人公が地味で、またキャラクターも娘婿ということでか、ちょっと気弱で、ポリシーがなく、ヘラヘラしていて、すぐ逃げ出すし……ようするに魅力ない人物だということ。たぶん計算でこうしたのだろうが、あまりに魅力なさ過ぎ。応援したくなくなってくる。でも、最後に立ち上がって男を見せてくれるのだが。それがなかったら、怒ってた。そして続編が作られそうなエンディング。

 知能が低い働きバチ・タイプのエイリアンだと思われていた中に、知能のあるヤツがいる。そして、どうやって動かすかわからなかったパワー・ローダーのようなロボット、撃てなかった大型のライフル・タイプ銃がついには動き出し、傭兵部隊と戦争のような状態になる。見どころもたっぷり。その破壊力がえげつない。CGの血煙が舞う。

 MNUの特殊部隊が使用しているライフルは、南アということでだろう、ヴェクターCR21。それを国連軍風に白く塗っている。またポンプ・アクションのショットガンも使っている。ヘリのスナイパーはスコープをつけた木製ストックのFALを使っており、スラム街の中の黒人ギャングたちはガバ似のスター・オートマチック、AKライフルなど。MNUの凶悪な傭兵たちはガリル・ライフル、MP5、M4A1、G36C、ベレッタM92、ミニガン、そして南アの長距離狙撃用20mm口径ダネルNTWアンチ・マテリアル・ライフル、はてはRPGまで。憎たらしい隊長のクーバス大佐はイングラム風の小型サブマシンガンも使っていた。あれは何だったか。ノートPCはソニーのVAIO。

 主演の気弱そうな男ヴィカスはシャールト・コプリー。素顔は結構二枚目だが、本作ではイケてないヤツを好演。南ア生まれで、プロデューサーや監督もやっているようだが、映画は2005年からでほとんど新人同然。これから公開される映画版「特攻野郎Aチーム」に出ているらしい。南アの民放TV局の最も若い重役なんだとか。

 憎たらしいクーバス大佐を演じたのはデヴィッド・ジェームズ。南アのTVで悪役として活躍しているようで、映画は初出演の模様。いい味を出している。ハリウッドから声がかかるかも。

 唯一、ハリウッド作品で見たことのあるのが、インタビューで登場する女性社会学者を演じていたナタリー・ボルト。パンクSFアクション「ドゥームズデイ」(Doomsday・2008・英/米ほか)に出ていた。実はこれにTV局の特派員役で出ていたジェイソン・コープも出ていたらしい。

 脚本は監督も務めたニール・カンプとテリー・タッチェル。もともとCMやミュージック・ビデオで活躍する南ア出身のニール・カンプの作った6分の短編が基になっているらしい。その才能を認めたピーター・ジャクソンが、プロデューサーを買って出たと。出演者も南ア時代の友人がほとんどだという。テリー・タッチェルはカナダ出身で、ほぼニール・カンプ作品を共同執筆しているパートナーだそう。

 公式サイトでは監督は1人になっているが、IMDbではサイモン・ハンセンの名も上がっている。南アのTVなどでVFXを手掛ける人で、本作ではインタビュー・シーンを担当しているらしい。本作の前にもニール・カンプと仕事をしている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、30分ほど前に着いて買ってきたコーヒーを飲みながら待つと、15分前くらいに開場。中学生くらいから中高年まで幅広かったがメインは中高年。ほとんど男性。SFだし、スターは出ていないし、グロいからそんなものだろう。しかし人気は高いようで、301席の8割りくらいが埋まった。素晴らしい。

 もう監督しないはずだったリュック・ベッソンの上下マスクの新作「アデル」は翼竜が出てくるファンタジーかと思ったら、副題がついて、「ファラオと復活の秘薬」だそう。ちょっと絵が加わって、うーん「ハムナプトラ」系か?

 「ウルフマン」は新予告か、ちょっと長いバージョンでの予告。なかなか恐そうで面白そう。そして3D-CGアニメなんだけれど人形アニメのような雰囲気の「ナイン9番目の奇妙な人形」は、冒険ファンタジーで、なんだかかわいくて、感動しそうで、子供向けという割り大人向けのような感じで期待できそう。


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