Alice in Wonderland


2010年4月17日(土)「アリス・イン・ワンダーランド」

ALICE IN WONDERLAND・2009(IMDbでは2010)・米・1時間48分

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/ビスタ・サイズ(デジタル、HDCAM、1.85、IMAX版は1.44)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版、3D版、IMAX3D版もあり)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/movies/alice/
(音に注意、全国の劇場案内もあり)

13年前に父を失ったアリス(ミア・ワシコウスカ)は19歳になり、貴族のハーミッシュ(レオ・ビル)がプロポーズすることになっていた。しかし当日、ハーミッシュのもとを逃げ出したアリスは、白ウサギの後を追いかけて穴に落ちてしまう。気付くとそこはドアだらけの部屋で、テーブルの上に鍵があり、一番小さなドアだけを開けることが出来た。ところが体が大きくて出ることができない。するとテーブルの上に「飲んで」と書かれた小瓶が。飲むとたちまち体が縮み、ドアから出ることができるサイズになった。さらに白ウサギ(声:マイケル・シーン)の後を追いかけていくと、マッドハッター(ジョニー・デップ)と3月ウサギ(声:ポール・ホワイトハウス)がティー・パーティーを開いていて、予言の通りあのアリスが再び現れて、赤の女王(ヘレナ・ボナム=カーター)に支配されたこの世界を救ってくれるという。アリスは自分にはそんな力はなく人違いだというが……。

73点

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 基本路線をちゃんと守り、原作に比較的忠実な冒険ファンタジー。よくできている。しかもアンダーワールドの世界観を、実にユニークにティム・バートンらしくきっちりと作り上げて見せてくれる。しかもティム・バートン作品に多いダークな感じが少なく、比較的明るく楽しめるところが良い。キャラクターがどこか変わっていて、ちょっとフリークスっぽいところは、そのままだが。

 人間型のキャラは、みなどこかヘン。まるで「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)のフリークスのよう。しかも、どこか笑える。マッドハッターはできそこないのピエロみたいだし、ハートのジャックは恐いのだが10頭身くらいに頭が小さくて、異様なプロポーションで、対照的なのがヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王、別名イラスベスで、3頭身くらいに頭がとてつもなく大きい。使える家臣たちも鼻が大きかったり、胸が尖っていたり

 ただ、撮影は3Dカメラではないようで、CGとして付け加えられたものが3Dになっているようだ。だからリアルなものよりもっと飛び出すのではないかと思う。3D版を見ていないのでわからないが。キャラクターなどの立体感や画面の奥行き感は逆に乏しいかもしれない。風景はちょっと「スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃」(Satr Wars: Episode II - Attack of the Clones・2002・米)っぽいところもあった。ただ、なんでも3Dにしてしまう傾向はいかがなものかとは思う。

 現実世界をワンダーランドの世界に反映させることによって、ワンダーランドの問題を解決していくことで、現実世界でやるべきことを見つけ、大人への道を一歩歩み出すという成長の物語でもある……というのは良くあるパターン。お説教臭くないのでそれほど気にならない。

 アリスを演じたミア・ワシコウスカは、オーストラリア生まれの21歳。TVから映画に進出し、ロシアの第二次世界大戦秘話「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)にも小さな役で出ていたらしい。本作では冒頭、目の回りにクマができているようなメイクで登場、わざとらしい気もしたが、次第に薄くなり気にならなくなった。鎧姿はジャンヌ・ダルクのようだった。

 マッドハッターはジョニー・デップ。ティム・バートン監督とは「シザーハンズ」(Edward Scissorhands・1990・米)から一緒に多くの作品で仕事をしている。ボクは実時間アクション「ニック・オブ・タイム」(Nick of Time・1995・米)やモノクロ異色西部劇「デッドマン」(Dead Man・1995・米/独/日)が好きだが、もっともハマっていた作品は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribean: The Curse of the Black Pearl・2003・米)のジャック・スパロウ船長役ではないだろうか。

 でか頭の赤の女王はヘレナ・ボナム=カーター。ティム・バートン監督の奥さんだからここまでやってくれたのか、剃り上げている感じがスゴイ。まあ、憎たらしい感じが素晴らしい。つい最近「ミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)で、機械の体を作ってしまう博士を演じていた。ボク的には「ファイト・クラブ」(Fight Club・1999・米/独)が良かったというか、強く印象に残っている。

 顔も白塗りの白の女王はアン・ハサウェイ。ボクには美人なのかわからないが、「プリティ・プリンセス」(The Princess Diaries・2001・米)でブレイクし、「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)は大きな話題となった。ボクは「パッセンジャーズ」(Passengers・2008・米/加)がハマっていた気がする。

 ハートのジャックはクリスピン・グローヴァー。黒ずくめの殺し屋といった風体で、頭のバランスがおかしく10頭身くらいに見える。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)で主人公のマーティのパパを演じていた人。強烈な印象を残したのは「チャーリーズ・エンジェル」(Charlies's Angels・2000・米/独)での殺し屋、痩せ男(シン・マン)役。酷薄な感じが抜群に良かったが、本作もどうもそのイメージのよう。

 ちょっとヨーダのような顔の芋虫のアブソレムの声はアラン・リックマン。「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)で犯人のボスを演じていた人。最近は「ハリー・ポッターと賢者の石」(Harry Potter and the Sorcerere's Stone・2001・米/英)シリーズのセブルス・スネイプス先生役が定着した感じ。悪役がピッタリの人だが、傑作SFコメディ「ギャラクシー・クエスト」(Galaxy Quest・1999・米)ではコメディもいけることを証明した。

 アリスをワンダーランドに連れて来る白うさぎの声はマイケル・シーン。「クイーン」(The Queen・2006・英/仏/伊)でトニー・ブレア首相を演じたかと思えば「アンダーワールド:エボルーション」(Underworld: Evolution・2006・米)ではキレやすいライカン族を演じ、また「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)で実在の名司会者デヴィッド・フロストを演じるなど、実に多彩。本作ではウサギだ。

 サラゼンクラムの城にいるというモンスター、ジャバウォッキー(これも「スター・ウォーズ」っぽい)の声は、なんとクリストファー・リー。元祖吸血鬼ドラキュラ。「スター・ウォーズ」でドゥークー伯爵を演じていた。ティム・バートン監督とはホラー「スリーピー・ホロウ」(Sleepy Hollow・1999・米/独)で顔合わせしている。

 ルイス・キャロルの原作を脚本にしたのは、リンダ・ウールヴァートン。「スター・ウォーズ」のスピオフ、「イウォーク・アドベンチャー」のTVアニメ版「スター・ウォーズ イォーク物語」(Ewoks・1985・加/米)の脚本を書いている。その後もTVのアニメーションの脚本を手掛け、大ヒット作「美女と野獣」(Beauty and the Beast・1991・米)や「ライオン・キング」(The Lion King・1994・米)などを手掛けている。ぴったりの人選だったのかもしれない。

 監督はティム・バートン。アニメーター出身で、監督作はダークな作風のものが多い。個人的にはどれもあまり好きではないが、ホラーの「スリーピー・ホロウ」と「ビッグ・フィッシュ」(Big Fish・2003・米)と本作はいいなあ。

 公開初日の2D版初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に席を確保しておいて30分前くらいにコーヒーを買って到着。おいしくてちゃんと量のあるコーヒーを楽しみながら待っていると、10分ちょっと前くらいに開場。入るとすぐ携帯をチェックするヤツがいる。なぜロビーでやらない? 理解に苦しむ。場内の方が暗いのに。液晶が明るすぎて周りの迷惑にもなるし。

 10代くらいから中高年まで幅広かったが、メインは20代前半くらいか。たぶん7割りくらいが若者。男女比は3.5対6.5くらいで女性の方が多かった。最終的には287席の8割りくらいが埋まった。まあ、場内が半暗になって予告が始まったからも続々と入ってくる。来るのが遅い!

 気になった予告編は……小栗旬監督作品「シュアリー・サムデイ」は、バカで最強だったあの頃にもどる映画らしい。意外に面白そう。CGアニメの「9〈ナイン〉〜9番目の奇妙な人形〜」は、何だか感動的で、スペクタクルで、ファンタジーで面白そう。

 驚いたのは上下マスクの「トロン レガシー」。あの初期のCG映画がリメイクされる。リメイクというか、コンピューター内にとり残された父を息子が救い出しに行く続編らしい。ジェフ・ブリッジスも出ているし。凄いビジュアルと迫力。ちょっと感動的。もちろん3D上映だが12月公開とか。

 「トイストーリー3」は予告だけでも感動的。アンディが大きくなって、玩具は捨てられ幼稚園か保育園にもらわれていく。そこでは捨てられることはないが、子供たちに乱暴に扱われ……ウッディはアンディのもとを目指すと。

 上下マスク「プリンス・オブ・ペルシャ 時間の砂」は新予告。ペルシャの雰囲気たっぷりの冒険活劇ファンタジーという感じ。面白そう。劇場で前売りを買うと砂時計みたいなストラップがもらえるらしい。


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