Clash of the Titans


2010年4月25日(日)「タイタンの戦い」

CLASH OF THE TITANS・2010・英/米・1時間46分

日本語字幕:丸ゴシック体下、太田直子/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/clashofthetitans/
(入ると画面極大化。音にも注意。全国の劇場案内もあり)

神話の時代、漁師の男スパイロス(ピート・ポスルスウェイト)が海で棺おけのような箱が漂流しているのを発見する。開けると中には幼い子供ペルセウスと女マルマラ(エリザベス・マクガヴァン)がいた。男は女を妻とし、子を自分の子として迎えることにする。そしてペルセウス(サム・ワーシントン)が立派な青年に成長したころ、アルゴスで横暴な神々に対して人間が反旗を翻し、祈りをやめ、ゼウス(リーアム・ニーソン)の像を倒し、宣戦布告した。これにゼウスの弟ハデス(レイフ・ファインズ)が応じ、戦いが始まる、この中でペルセウスは育ての父スパイロスと、母マルマラと幼い妹を失う。ハデスはケフェウス王(ヴィンセント・リーガン)に娘のアンドロメダ(アレクサ・タヴァロス)をオリンポスの神々にいけにえとして捧げるように命ずる。従わなければ無敵のモンスター、クラーケンを放つと脅す。ここで、ペルセウスをはじめ、数名のものが立ち上がり、ハデス打倒の旅に出る。

70点

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 レイ・ハリーハウゼンがSFXを担当した「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・1981・米)のリメイク。今人気のサム・ワーシントンやリーアム・ニーソンらが出てるし、最新の3D-CG技術を使いまくって、驚異の映像を作り上げた。しかも話題の3D上映で、古代ギリシア神話のロマンあふれる世界。

 しかし残念ながら、凄いのは3D-CGだけで、物語は納得できないし、冒険もハラハラしないし、主人公以外の登場人物はちっとも魅力的じゃないし、3D上映もほとんど効果なし。わざとらしく飛び出るのも嫌だが、それすら1つもないと3Dの意味がない。わずかに立体感というか奥行きがある程度。これでプラス700円は納得がいかない。

 3D上映に関しては、まず眼鏡が汚れている。700円も取るのなら、機能チェックした上で毎回洗浄して消毒したものを貸し出すべき。傷や手の脂がついていて、眼鏡クリーナーでも簡単には拭き取れないほど。ちょっとグリーンがかっていて、掛けると画面が暗く見える。その上で、演出的にも効果を生かせない点が多々ある。暗い絵、短すぎるカット、揺れ動く手持ちカメラ撮影、シャロー・フォーカス……これらが立体感を阻害している。一番ハッキリと飛び出して見えるのは、なんと字幕。ピントをあちこと合わせるのが大変で疲れる。プラス200円くらいなら文句はないが、700円だからなあ。

 まず脚本に問題ありだろう。ストーリーはオリジナル版に基づいているとは言え、とにかくキャラクターも魅力的じゃないし、展開がどうにも納得できない。神らしくない神、神同志、兄弟の確執……それがギリシア神話の面白いところとしても、どうしてこういう展開になるもか、少しはリアルさがないとなあ。旅の仲間はキャラが立っていないし、突っ張ったアンチャンみたいなヤツばかりで感情移入できないから、仲間意識も沸かないし、殺られてもかわいそうじゃない。

 オリジナル版で出てきたロボットのフクロウが冒険に出発する前に出てくるが、それは置いていけと言われるシーンがある。これは敬意を払ったのか、それともおふざけじゃないんだといいたいのか。いずれにしても、この出来ではどっちにしてもやらなかった方が良かったのでは。ゴーゴン(メデューサ)は全体が蛇になっていて、「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(Percy Jackson & the Olympoians: The Lightning Thief・2010・加/米)の方がそれらしかった。そして、あんまり恐くない。昔見たモノクロの映画で出ていたゴーゴンはもっとスゴク恐かった気がしたが、幼かったからだろうか。

 ペルセウスはサム・ワーシントン。たぶんこの人が主役でなかったら、もっと地味な作品になっていただろう。ただ、今最も旬なサム・ワーシントでも、この作品はどうしようもなかったと。「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)、「アバター」(Avator・2009・米/英)と絶好調だったが、ここへ来て勢いが衰えたか。

 ゼウスを演じたのはリーアム・ニーソン。なぜこの仕事を引き受けたのか。もうベテランなのに、お金ということか。この人である必要もないようだし、意味もない感じ。「96時間」(Taken・2008・仏)や「セラフィム・フォールズ(未)」(Seraphim Falls・2006・米)は良かったのに。

 悪役ハデス(劇中ではヘイデス)はレイフ・ファインズ。「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)のあの恐いドイツ軍将校を演じた人が。たしかに本作でも恐い。「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」(Harry Potter and the Goblet of Fire・2005・英/米)シリーズのヴァルデモート卿も恐いが、あの流れか。つい最近アカデミー作品賞を受賞した「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)に民間軍事会社のオペレーター役で出ていた。

 顔半分が焼けただれたモンスター、実はアクリシオス王を演じたのはジェイソン・フレミング。雰囲気は「リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い」(The League of Extraorinary Gentlemen・2003・米/独ほか)のジキル博士とハイド氏。悪役が多く、「ボビーZ」(The Death and Life of Bobby Z・2007・米/独)でもいい味を出していた。低予算から超大作まで選ばず出ているようだ。

 アンドロメダを演じた美女はフランス生まれのアリクサ・タヴァロス。スティーヴン・キング原作のホラー「ミスト」(The Mist・2007・米)やダニエル・クレイグが出た「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)に出ていた人。やっぱり目立つ。

 脚本を担当したのは3人。トラビス・ビーチャムは短編の脚本で高い評価を得て長編に挑むが、それはあまり良い評価を得られなかった。日本劇場公開作はない。うーむ。フィル・ヘイはマット・マンフレディと一緒にジャッキー・チェンの残念な作品「タキシード」(The Tuxedo・2002・米)のストーリーやシャーリーズ・セロンの残念な作品「イーオン・フラックス」(AEon Flux・2005・米/独)の脚本を書いた人。なぜ本作を? 成功する要素が見られない。

 監督はルイ・ルテリエ。なんと傑作「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)や「トランスポーター2」(Transporter 2・2005・仏/米)、悲しいアクション「ダニー・ザ・ドッグ」(Danny the Dog・2005・仏/米/英)そしてエドワード・ノートンの「インクレディブル・ハルク」(The Incredible Hulk・2008・米)を監督した人。それで、どうしてこうなるの。プロデューサーたちの責任か。

 公開3日目の初回、新宿の劇場版は3D字幕版、全席指定での公開。前日に座席を確保しておいて、30分前くらいに到着。コーヒーを飲みながら待つと、10分前くらいに開場。観客層は、下は中学生くらいから、上は中高年まで幅広かった。男女比は6対4くらいで男性の方が多かった。最終的に287席の9〜9.5割りくらいが埋まった。さすが話題作。ただ、数人が眼鏡があわなかったのか、具合が悪くなったのか、途中で出て行った。

 帰りがけ、「SFXは予告でやってた分だけだよね。あれで全部」という声が……。

 気になった予告篇は……上下マスク「パリより愛をこめて」は、またまたリュック・ベッソン印映画。タイトルから察するに「ロシアより愛をこめて」のパロディとすると、スパイ映画か。でも、キーワードは外交官、パートナー、CIA、AT4らしい対戦車兵器などで、「シェルター」のジョナサン・リス・マイヤーズ、スキンヘッドのジョン・トラボルタが出ていて、「96時間」なみの出来なら見る価値ありかも。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになり、「メガネをかけてください」の文字が出た後、「バイオハザードIVアフターライフ」の予告。ミラ・ジョボヴィッチのアリスが日本刀2本を背中に背負っていて、手裏剣を投げて、ソウド・オフ・ショットガンの2挺拳銃を抜いて……アクション満載、面白そう。ただ冒頭の3Dの軽飛行機は紙で作ったものを貼り付けたようてへ残念。9/10公開。


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