The Box


2010年5月8日(土)「運命のボタン」

THE BOX・2009・米・1時間55分

日本語字幕:細丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、in Panavision、HDCAM)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.unmeino.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1976年12月、クリスマス間近の早朝5時45分、ヴァージニア州ラングレーのルイス家のドア・チャイムが鳴る。妻のノーマ(キャメロン・ディアス)が出ると小さな箱が置かれていた。中には鍵のかかったボタンとカギ、そして午後5時にスチュワード(フランク・ランジェラ)が尋ねるというカード。その日、NASAのカメラ・デザイナーの夫アーサー(ジェームズ・マースデン)は夢だった宇宙飛行士試験に落ちたことを知らされる。そして教師のノーマは校長から息子の学費割引が打ち切られることを告げられる。午後5時、顔の左がえぐれた紳士のスチュワード(フランク・ランジェラ)が現れ、ノーマにボタンの説明をする。そのボタンを押すと、どこかで知らない誰かが死ぬが、100万ドルを現金で受け取れるという。条件は2つ。夫以外に話さないこと。24時間以内に決断すること。アーサーが帰宅後、事情を説明するとアーサーは箱の裏ぶたを外してみる。すると中には何のメカニズムも入っていなかった。冗談かとも思われたが、スチュワードが話を聞いてくれたお礼にと置いていった100ドル紙幣は本物だった。アーサーは反対するが、ノーマは気軽に押してしまう。

73点

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 恐い。そして謎解きがなかなか面白い。ドロドロ人間ドラマかとも思ったが、あにはからんやSFミステリーとは。かなり特殊効果も多用されていて、スケールの大きなストーリー。仕掛けは良い。意外で、嬉しい誤算。ただ、後味はよろしくない。再三、まだ助かる道はあるといっておきながら、これで良いのかという所はある。これが許せるかどうか。許せないと厳しい評価になるだろう。IMDbでは5.9点。

 フランク・ランジェラ演じるスチュワードがいい。無表情があう人で、もともとクールな印象。それが、完璧な紳士の格好で、物腰も柔らかなのに、ターミネーターのダメージ・ヘッドのような恐ろしい傷跡。頬に穴が開き歯まで見える。全体がゾンビとかモンスター風でないだけに、恐さが際立つ。若干、音でおどかすところもあるが、全体としては雰囲気やカットで恐さを盛り上げていく手法。好感が持てる。

 いかにも究極の選択的なボタンの設定はあざとく、見るのを止めようかとも思ったのだが、予告編ではアクションが満載のようだったので、もしかしたらと、見ることにした。後味を別にして、まあ、見て良かった。夫も妻も人生の谷間にあり、お金が転機になるかもしれない状況。しかし、もしボタンが本当で、人が死ぬとしたらとビビる男に対して、女はお金のことを考え意外と冷静にポンと押してしまう。確かに人はいつか必ず死ぬ。遅いか早いかの違い。女性からは異論があるかもしれない。

 最初時代設定が1976年というのが不思議だったが、実は謎の答にもつながる重要な部分だった。NASAが火星に探査機を送り込み、写真を送ってくることに成功した年。そして、夫婦に関わってくる人たちの中で、重要な人物が、みな話をしながら鼻血を流す。なぜ? この辺の展開もうまい。窓の外に知らない人の影……。恐い。

 妻のノーマを演じたキャメロン・ディアスは、bのところ大作には出ていないようで、アート系の小品が多かった模様。見ていないが「イン・ハー・シューズ」(In Her Shoes・2005・米/独)や「ホリデイ」(The Holiday・2006・米)、「私の中のあなた」(My Sister's Keeper・2009・米)などに出ている。本作もその流れか。

 夫アーサーを演じたジェームズ・マースデンは、「X-メン」(X-Men・2000・米)シリーズの目から光線を出すサイクロップスを演じた人。ほかに富豪の息子を演じた「きみに読む物語」(The Notebook・2004・米)、ドジな王子を演じた「魔法にかけられて」(Enchanted・2007・米)などに出ている。

 不気味な男なのに上品な紳士という微妙な役柄のスチュワードを演じたのはフランク・ランジェラ。まさにこの人しかこの役は演じられないだろうというドンピシャの配役。つい最近「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)でニクソン大統領を演じていたが、古くはジョン・バダム監督の「ドラキュラ」(Dracula・1979・米/英)でドラキュラも演じている。やっぱりノーブルなんだ。

 脚本・監督・製作を手掛けたのは、リチャード・ケリー。1975年生まれ、35歳の若手。あの不思議な映画「ドニー・ダーコ」(Donnie Darko・2001・米)の脚本と監督を担当した人。実在の女賞金稼ぎを描いた「ドミノ」(Domino・2005・仏/米)の脚本も書いている。普通でないものを作るのが好きなようだ。今後も期待したい。暗いエンディングを避けてもらえば。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由なので、55分前くらいに到着。すでに男性が4人並んでいた。1人20代くらいで、あとは40代以上という感じ。50分前に10人くらいになって、45分前には20人くらいに。女性はオバサンが3人ほど。ここで案内があって、35分前くらいに窓口が開き、当日券と交換して地下へ移動。25分前くらいに開場した。

 最終的には183席に6.5割りくらいの入り。関係者らしい人は1人か2人だったようで、それで充分でしょ。団体じゃ迷惑。スクリーンはシネスコで開いていて、予鈴、本鈴の後、半暗になってビスタでCM・予告。気になった予告は……上下マスクの「座頭市THE LAST」は、なんだかのらないというか、うんざりな感じが……なぜだろう。

 内容は良くわからなかったが、ヴィゴ・モーテンセン主演のモノトーンの「ザ・ロード」は親子の絆を描いた暗いSFという感じ。もう少し材料がないと何とも……不明。これは上映劇場によるかな。ジブリ・アニメ「借り暮らしのアリエッティ」は新予告。人に見つかってはいけない小さな人、妖精の話? 面白そう。

 上下マスクの「レポゼッション・メン」はSFハード・アクションといった感じ。効果な人工臓器移植で、代金を支払えなくなった者から、臓器を回収するレポゼッション・マン=回収人を描くらしい。で、優秀なレポ・マンが大けがをし、自分がレポされる立場になると。よくあるバターンだが面白そう。

 新予告の上下マスク「マイ・ブラザー」はトビー・マグワイアは激痩せしていて恐いが、ドーンと重苦しい感じがちょっと……。上下マスクの「グリーン・ゾーン」も新予告。マット・デイモンはAKも使っている。面白そう。上下マスクの「アイアンマン2」も新予告。絵がキレイ。そしてミッキー・ロークの悪役が良い。

 星空のドルビー・デジタル・デモの後、海賊版のCMがあって本編へ。場内が久しぶりのエアコンが働いたせいか、かび臭いようで、ちょっと気分が悪かった。そして上映が始まるころ、外から大声の話し声が……関係者かスタッフか、うるさい。


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