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2010年5月9日(日)「9(ナイン)9番目の奇妙な人形」

9・2009・米・1時間20分(IMDbでは79分)

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/ビスタ・サイズ(TV版は1.33、映画版は1.85、デジタル)/ドルビー・デジタル、dts

(米PG-13指定)(5/9はナインの日ということで、2005年版の11分の短編「9」を上映)

公式サイト
http://9.gaga.ne.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

背中に「9」と書かれた人形(声:イライジャ・ウッド)が気付いたとき、廃屋のような家の部屋には人間が倒れており、窓の外には廃虚のような光景が広がっていた。そして外に動いている人影を見かけ追いかけて行くと、自分と似たような姿形で背中に「2」と書かれた老人(声:マーティン・ランドー)だった。声が出なかった「9」は「2」に直してもらってしゃべれるようになるが、突然現れたビーストと呼ばれるロボットに「2」がさらわれてしまう。しかも部屋から持ち出した奇妙なマークにある半球状の装置を奪われてしまう。かろうじて逃れた「9」は片目の「5」(声:ジョン・C・ライリー)に助けられ、仲間のところに連れて行かれる。そこには「1」(声:クリストファー・プラマー)をリーダーとするマッチョなボディーガードの「8」(声:フレッド・ターターショー)、ずっと絵を書き続けている「6」(声:クリスピン・グローヴァー)らがいた。人類と機械が戦争を始め、自分たち人形と、ビーストというロボットだけが生き残ったのだという。そしてビーストから逃れるため隠れすんでいるのだと。「2」が連れ去られたのは自分のせいだと思う「9」は「5」を誘って「2」の救出に向かうが……。

77点

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 まるで実写の人形アニメのような3D-CGアニメーション。語られる話は少しダークだが、登場キャラクターは愛嬌タップリでかわいらしく、どれもパッと見には似ているのに、良く見ると個性的で魅力的。たぶんこのまま3D 上映しても迫力が増して面白いのではないかと思えるほどダイナミックでメリハリのある絵作り。まさに大冒険といった感じで、わずか80分ほどの作品なのに、出来の良い2時間近い作品を見たかのように充実していて堪能した。

 とにかくキャラクターが良い。人形で、体は麻袋みたいな布で出来ているし、手は鉤爪みたいだし、目はカメラのような絞り付きレンズなのに、表情があって感情移入できる。不思議なことに、始まってすぐ感情移入できるのだから凄い。これはやっぱり愛嬌があってカワイイからか。素晴らしい。映画が終ってからすぐプログラムを買いたくなったのだが、とにかく我慢した。これも最近では珍しいこと。人形が主人公で、ありえない話なのに。

 とにかく現状を変えたくないリーダー、好奇心旺盛なヤツ、絵を書き続けるヤツ、女なのに男優りの武闘派、お人よしなヤツ、知識は豊富だが外へ出たがらないヤツ……実に良くできている。人形なのにそう見える。ケガをしたり、酷い事を言われて傷ついたりすると、かわいそうに見える。一方、マシンはしゃべることはないが、実に凶悪に見え、猛獣のような声を当てられていて、かなり恐い。

 声の出演は豪華。リーダーの「1」がクリストファー・プラマー。名作「サウンド・オブ・ミュージック」(The Sound of Music・1965・米)のフォン・トラップ大佐だ。さまざまな作品に出ているが、最近では「Dr.パルナサスの鏡」(The Imaginarium of Doctor Parnassus・2009・英/加/仏)にパルナサス役で出ていた。1927年生まれというから、83歳。ビックリ。頑固なリーダーらしい説得力があった。

 老発明家の「2」がマーティン・ランドー。TVのスパイ・アクション「スパイ大作戦」の変装名人役から、映画もたくさん出ているが、感動作「マジェスティック」(The Majestic・2001・米/豪)の映画館館主役は良かった。82歳。

 主人公「9」はイライジャ・ウッド。子役から活躍していて、感涙作「ラジオ・フライヤー」(Radio Flyer・1992・米)の弟思いの兄役は良かった。「ロード・オブ・ザ・リング」(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring・2001・ニュージーランド/米)は有名だが、CGアニメ「ハッピーフィート」(Happy Feet・2006・豪/米)でも主役の声をやっている。

 唯一の女性「7」はジェニファー・コネリー。イエール大卒の才女。ダークSF「ダークシティ」(Dark City・1998・豪/米)は良かったし、「レクイエム・フォー・ドリーム」(Requiem for a Dream・2000・米)のジャンキーは衝撃的、そして最近の「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・米/独)も彼女らしく良かった。才女で美人で、天はニ物を与えたと。

 気のいい片目の「5」はジョン・C・ライリー。つい最近「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)にヴァンパイア役で出ていた。「ダーク・ウォーター」(Dark Water・2005・米)でジェニファー・コネリーと共演している。

 変な絵ばかり書いている「6」はクリスピン・グローヴァー。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」(Back to the Future・1985・米)でマーティのパパを、「チャーリーズ・エンジェル」(Charlies's Angels・2000・米/独)で殺し屋の痩せ男を演じていた人。つい最近ティム・バートンの「アリス・イン・ワンダーランド」(Alice in Wonderland・2010・米)で殺し屋のようなハートのジャックを演じていた。

 原案・監督はシェーン・アッカー。2005年版の11分の短編「9」を作って、アカデミー最優秀短編アニメーション賞にノミネート。それを見たティム・バートンが感動して長編映画化のプロデューサーとして名乗り出たらしい。「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還」(The Lord of the Rings: The Return of the King・2003・ニュージーランド/米/独)ではアニメーターとして参加しているという。5/9の上映でオリジナル版を見たが、驚異的な映像だが、確かに短すぎてもったいない感じ。長編になって良かった。

 素晴らしい脚本を書いたのはパメラ・ペトラー。TV出身で映画ではティム・バートンの人形アニメ「コープス・ブライド」(Corpse Bride・2005・英/米)や、アニメ「モンスター・ハウス」(Monster House・2006・米)の脚本を書いているという。今後、期待できるかもしれない。

 ティム・バートンとともにプロデューサーを務める有名人が、ティムール・ベクマンベトフ。驚異のダークSF「ナイト・ウォッチ/Nochnoy dozor」(Nochnoy dozor・2004・露)の脚本と監督を手掛けた人。

 これはDVDが出たら欲しいかも。いや、これからはブルーレイか。プログラムも欲しかったが、人形アニメではなくCGアニメなのでガマンしてやめた。うむむ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、30分前くらいに到着。コーヒーを飲みながら待っていると、22〜23分前に開場。157席はほぼ満席。20代くらいから中高年まで幅広かったが、メインは中高年。男女比は7対3くらいで男性が多かった。関係者らしい人は2人ほど。

 ナインの日ということで、CM・予告編無しで、オリジナルの2005年版の短編からの上映。ビデオというかCGの設定解像度が低いようで、ドットが目立つ画質。クレジットの文字の見せ方はうまいのだが、動かし過ぎで気持ち悪くなる。長編版のクレジットでも同じ手法が使われていたが、ほどよく動きを抑えていて、気持ち悪くなることはなかった。さすがプロの仕事というところか。

 海賊版の注意が流れてから本編の上映。ギリギリまでドアが開いていたようで、光が漏れてくるのがちょっと気になった。


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