From Paris With Love


2010年5月15日(土)「パリより愛をこめて」

FROM PARIS WITH LOVE・2010・仏・1時間35分(IMDbでは92分)

日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(MGA?)/ドルビー・デジタルEX、dts ES、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/frompariswithlove/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

パリのアメリカ大使館職員のジェームズ・リース(ジョナサン・リース・マイヤーズ)は、CIAのエージェントというもうひとつの顔を持っていた。ただ、まだ見習いで、ミッションは車の手配や盗聴器のセットといった簡単なもの。それは上司のベニントン大使(リチャード・ダーデン)も、彼女のキャロリン(カシア・スムトゥニアク)も知らない。そしてある日、重要な任務が与えられる。空港でトラブっている相棒、チャーリー・ワックス(ジョン・トラボルタ)を脱出させ、彼のドライバーを務めろというもの。ジェームズの機転で税関を抜けると、チャーリーは捜査のため中華レストランへ向かへという。中に入るや否や、店員に向けて発砲。銃撃戦となる。撃たない主義のジェームズはただおろおろするばかり。しかし、そこからギャングが隠していた麻薬が出てくる。

70点

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 さすがリュック・ベッソン映画、冗談のような作品だった。特に前半は酷い。ジョン・トラボルタ演じるチャーリー・ワックスが酷過ぎ。存在感ゼロ。リアリティなんてお構いなし。こんなヤツいるはずがないし、とにかくめちゃくちゃ。まるで出来の悪いギャグ漫画。後半から、どうにかスパイ・アクションになるが、もう手遅れ。繊細な感じのジョナサン・リース・マイヤーズががんばっているものの、最低のジョン・トラボルタがすべてぶち壊している。もちろんジョン・トラボルタの責任というより、設定が悪く、演出が悪い。これだけ手間ひま、お金も掛けて、こんなものを作るなんて。ただアクションの派手さだけは見もの。銃撃戦は銃声も大きく、迫力満点。トラボルタのタランティーノ撃ちは興ざめだったが。

 パリというかフランスが初めてのような感じのチャーリー・ワックスが、いきなりハンドルを奪って運転したり(道知ってるなら、運転手いらないだろ)収まりっこないお菓子の缶みたいなところから銃のパーツを出して組み立てて見せたり、しかもそれがSIGのP226Xファイブのレール付き黒フレームとういう大きな銃だったり。ネービー・シールズやテキサス・レンジャーズ用にデザインされたらしいが……。スライドは缶に入ったとしても、フレームは入らないでしょ。画面ではフレームは切られていたようだったが。そして自分の名前ワックスに引っ掛けて「ベスト・キッド」(The Karate Kid・1984・米)のワックス・オン、ワックス・オフってジョークはどうよ。押収したコカインを吸うし。何度も、バカかと思った。粉もいきなり舐めるし。もし麻薬じゃなくて別な毒物だったらどうするのか。

 ハリウッド映画の小ネタをあちこちにちりばめているところも、媚びているようでなんだかイヤラシイ。オマージュになっていない。「ベスト・キッド」とか「スタートレック」とか……。だいたい主人公の名前がジェームズで、スパイで、「ジェームズ、ジェームズ・リース」って名乗るのもなあ。

 アクションのための設定・展開という感じで、これがリュック・ベッソン印なんだろう。「96時間」(Taken・2008・仏)はなかなか良かったのに残念。ただ銃撃戦は凄くて、銃もいろんなものが出ている。撃たないが、冒頭車に積んであったのはベレッタPx4。ドラゴンヘッドのアジトではグロック、サイレンサー付きMk23、ゴム・グリップのS&W.357マグナム2.5インチ、ミニ・ウージー、MP5K、KG9など。テロリストのアジトではガバメント、マイクロ・ウージー、シルバーのタウルスPT92。カー・チェイスではM4カービン、使い捨ての対戦車ロケット・ランチャーAT4。サミット会場でリースが使うのはH&KのUSPのようだった……。

 主演のジョナサン・リース・マイヤーズのリアルな演技があって本作はどうにか見れるものに。「テッセラクト」(The Tesseract・2003・日/タイ/英)で主役のイギリス青年、「奇跡のシンフォニー」(August Rush・2007・米)でフレディ・ハイモアの別れたお父さん、そしてつい最近「シェルター」(Shelter・2010・米)で多重人格の謎の男を好演していた。素晴らしい演技力。まったく別人に見えたもんなあ。

 バカ男チャーリー・ワックスを演じたジョン・トラボルタは、最近悪役が多いので本作のような役は向いているのかもしれない。「パニッシャー」(The Punisher・2004・米/独)、「Be Cool/ビー・クール」(Be Cool・2005・米)、「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelhan 123・2009・米/英)などなど。「ソードフィッシュ」(Swordfish・2001・米/豪)や「閉ざされた森」(Basic・2003・米/独)のようなイヤラシイ役もやれば、「ヘアスプレー」(Hairspray・2007・ヘー・米/英)では太ったオバサンを演じているし、変幻自在か。ただ自身製作も兼ねた「バトルフィールド・アース」(Battlefield Earth: A Saga of the Year 3000・2000・米)は最低映画のトップを守り続けているが。飛行機好きなどが高じて、ニコラス・ケイジのように借金まみれにならなければいいが。

 彼女のキャロリンを演じたのは、日本にも住んでいたことがあると言うポーランド出身のモデル、カシア・スムトゥニアク。日本公開された作品はないようだが、どこかで見た顔。モデルだったから、雑誌で見たのか……。

 ストーリーはリュック・ベッソン。ついに最近は脚本も書かなくなってきた模様。つい最近公開されて面白かったリュック・ベッソン・プロデュース「96時間」(Taken・2008・仏)は自分で書いているが……。脚本はアテセィ・ハサック。これ以前はチャーリー・シーンの「ザ・ターゲット」(Shadow Conspiracy・1997・米)の脚本を手掛けている。うーん、どうなんだろう。

 監督はピエール・モレル。カメラマン出身で、リュック・ベッソンの勧めで「アルティメット」(Banlieue 13・2004・仏)で監督に転身。この前に「96時間」を撮っている。この2本の面白いアクションが撮れてなぜ本作なんだろう。理解に苦しむ。

 1、2カ所、コピー防止のドットらしいものが気になった。フランス映画でもこんなことをやるのか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に座席を確保しておいて、30分前くらいに到着。買ってきたコーヒーを飲みながら待っていると、12〜13分前に開場。最終的には157席の8割りくらいが埋まった。よくこれだけ入ったと思う。ただ驚いたことに、20代くらいから中高年までいたが、高齢者が多かった。リュック・ベッソンは高齢者には受けるのか。男女比は6対4くらいで、思ったより女性が多かった。

 それにしても、おばあさん3人組が大きな声でしゃべっていて、うるさかったこと。後ろのヤツは足を組み替えているのか背もたれを蹴るし、年寄りでも自分のことしか考えてないヤツはいるもので情けない。そして真ん中の席なのに堂々と遅れてくるヤツ。

 気になった予告編は……「北の国から」の杉田成道監督の「最後の忠臣蔵」は面白そう。生き残った赤穂浪士の話らしい。スチル写真構成で内容が良くわからなかった邦画「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」はどんな映画なんだろう。

 上下マスクのアンジェリーナ・ジョリーのスパイ・アクション「ソルト」はすごいアクションの連続で、面白そう。上下マスク「ザ・ウォーカー」は新予告。ますます気になる。そしてまたあのお方プロデュースのリメイク映画「エルム街の悪夢」が公開されるらしい。ただ予告では面白そうだったが、なぜリメイクするのか。

 スクリーンの上下が狭まってシネスコ・サイズになったら突然のセンター・ピンボケ。せっかくの「インセプション」が……。海賊版でもそのままで、まさか本編もかとドキドキしたが、直前になって気が付いたのか、ピンが合って本編へ。助かったあ……。


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