Green Zone


2010年5月16日(日)「グリーン・ゾーン」

GREEN ZONE・2010・仏/米/西/英・1時間54分(IMDbでは115分)

日本語字幕:手書き書体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、RED cam、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定)

公式サイト
http://green-zone.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

2003年3月19日、イラク軍が大量破壊兵器を持っているとの情報で、アメリカ軍はイラク攻撃を開始する。4週間後、アメリカ軍はバグダッド市内に10キロ平米の安全地帯「グリーン・ゾーン」を作ると司令部を置き、そこから指令を出していた。ミラー上級准尉(マット・デイモン)率いるMET隊は、大量破壊兵器(WMD)の捜索を担当、アメリカ軍とイラク軍の戦闘、一般市民の掠奪などで混乱が続く中、上層部から与えられた情報を基に危険地帯に突入していた。しかし3回ともガセネタで実際には何も存在しなかった。そんなとき1人のイラク人、フレディ(カーリド・アブダーラ)の情報で、イラク軍幹部が集まっている現場を急襲する。幹部には逃走されたものの、1人を逮捕しさらに隠れ場所を記した手帳を押収するが、突然ヘリで特殊部隊が現れ捕虜を連れ去ってしまう。

73点

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 実に残念! せっかく緊張案あふれる良いアクション・ドラマなのに、初めから終わりまでカメラが手持ちで動きっぱなし。止まることはない。おかけで集中できない。軽い車酔い状態で、気持ち悪くなった。めまいがする。

 こんなにカメラを動かしたかったら、ビスタどころか1.33のスタンダードでやれ。それは腹が立つほど。ドキュメンタリー・タッチを出したかったのだろう。無意味なズームやピント外しまでがある。オマエはシロートか! お金を取る商業作品と思えない。せっかくの作品がこれで台無し。アクション・シーンでは、役者も動いているし、カメラも動いているから、何が映っているかわからない。思い切って突っ込めば「バカか?」

 それ以外は良く出来ている。実に緊張感あふれる作り。本当は演出がうまいんだろうに。そしてストーリーも興味深い。明らかにアメリカ政府を、ブッシュ前政権を批判する内容。これをこの時期に作れることも驚き。さすがアメリカ。実話っぽい作りなので、わかりやすい明快な結末は用意されていないが、それでも見ごたえがある。銃声は大きく、恐い。周りが全部敵というような恐い状況。そしてますます状況は悪くなっていく。その焦燥感。大きなものが動いていると、慣性が大きくて、小さな力では簡単に止めることが出来ない。何も出来ない絶望感。こんなことで戦争をするなんて。

 戦争映画なので銃器は当然米軍のACOG付きM4A1がメイン。M16A2やM203グレネード・ランチャー付いた物もあった。そしてデザート迷彩のレミントンM24らしいものも。M249はもろにSAW(ソウ)と呼んでいた。ハンドガンはベレッタM9。夜のシーンではナイト・スコープにレッド・ドット。イヤラシイ特殊部隊のヤツらはなぜかMP5。敵はAK47の折りたたみストックAKS47。MET(メットと発音していた)はハンヴィーで移動し、特殊部隊はブラックホーク・ヘリで登場。

 マット・デイモンは「ボーン・シリーズ」の2と3でポール・グリーングラス監督と組んだ縁で、本作に出演となったらしい。ボクは1作目の「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)は面白いと思うが、2と3は好きではない。そっちの方がヒットしたのが不思議。つい最近イーストウッド監督の「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)に出ていた。

 腹黒い国防総省の役人クラークを演じたのはグレッグ・キニア。二枚目だがこんな役が多い感じ。見ていないが「リトル・ミス・サンシャイン」(Little Miss Sunshine・2006・米)では一家のお父さんを、全員記憶喪失のミステリー「unknownアンノウン」(Unknown・2006・米)ではその1人を演じていた。

 恐いほどイヤラシイ特殊部隊の隊長を演じていたのはジェイソン・アイザックス。イギリス生まれの貴族っぽい人だが、本作ではヒゲを伸ばしてサングラスを掛け荒くれを好演。「ハリー・ポッター・シリーズ」のルシウス・マルフォイ役が有名だが、ボク的にはメル・ギブソンのアメリカ建国物語「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)が良かった。この人はうまい。本作でもセリフはほとんどないのに印象に残った。

 CIAの中東担当マーティはブレンダン・グリーソン。この人も「ハリー・ポッター・シリーズ」でマッド・アイ・ムーディを演じ、メル・ギブソンの「ブレイブハート」(Braveheart・1995・米)に出ているからジェイソン・アイザックスと共通する部分がある。

 女性記者ローリーはエイミー・ライアン。TVで活躍していた人で、2005年くらいから劇場映画に出るようになったらしい。メジャー作品ではイーストウッドの実話の映画化「チェンジリング」(Changeling・2008・米)に病院の患者役で出ていたようだ。本作ではいかにもベテラン女性記者という風に見えた。

 原作はラジーフ・チャンドラセカランの“Imperial Life in the Emerald City: Inside Iraq's Green Zone”だそうで、これがヒントとなって本作が生まれたのだとか。脚本はブライアン・ヘルゲランド。アカデミー脚本賞を受賞した「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confidential・1997・米)の脚本、傑作中世アクション「ROCK YOU! [ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)の監督・脚本、心に残るアクション「マイ・ボディカード」(Man on Fire・2004・米/英)の脚本などを手掛けている人。凄い力の持ち主だが、最近は「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)や「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)の脚本など振るわない。本作の脚本は悪くなかった。

 監督のポール・グリーングラスは、「ボーン・シリーズ」の好きではない2と3を監督した人。9.11の実話を映画化した「ユナイテッド93」(United 93・2006・仏/英/米)はお得意の手持ちカメラによるドキュメンタリー・タッチが生きて、緊迫感と臨場感が出たが、あとはあまり感心しない。どうなんだろう。良いプロデューサーがいて、手持ちカメラを抑えさせたら良い作品ができそうだ。

 金曜スタートで公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。40分前くらいに着いたら、まだ劇場自体が開いておらず、歩道に長い列。50人以上いただろうか。30分前くらいに劇場が開いてロビーへ。10分ほどでロビーはいっぱいになり、席は埋まった。コーヒーを飲みながら待つと10分ちょっと前に開場した。

 とにかく遅れて入ってくるヤツが多くハッキリはわからないが、最終的に287席の7割りくらいが埋まった。20代くらいから高齢者まで割りと幅広かったが、メインは中高年。男女比はマット・デイモンということもあってか5.5対4.5くらいで、戦争映画なのに意外と女性が多かった。

 気になった予告編は……スタローンの戦争アクションっぽい上下マスクの「エクスペンダブルズ」は、キャストが驚き。内容はほとんどわからないが、ジェット・リー、ミッキー・ローク、ブルース・ウィリス、ジェイソン・ステイサム、ドルフ・ラングレン……そうそうたる名前が並んだ。どうだろう? 10/16公開。

 北京が舞台で、ジャッキー・チェンが登場し、黒人少年に空手を教える「ベストキッド」は、もちろんあの映画のリメイク。リメイクというだけでB級な感じがするが、ジャッキー・チェンだから面白いかもしれない。でもなんか日本から取られた気もする……。複雑な気持ち。8/14公開。

 リュック・ベッソンが監督する「アデル」は、主人公のアデルが出てこない予告。ラストにちょっとだけ出るが、ようやく顔が見えてきた。わざと出し惜しみか。どうも監督の愛人に見えて引いてしまう。

 上下マスク「ザ・ウォーカー」は新予告、スクリーンが左右に広がりシネスコになって、ラッセル・クロウの「ロビン・フッド」の予告。スローを多用しカッコいいが、あれだけの大軍を見せておきながら、リドリー・スコットだから最後はまた1対1の対決か。


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