Legion


2010年5月29日(土)「レギオン」

LEGION・2010・米・1時間40分

日本語字幕:手書き書体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG12指定)

公式サイト
http://legion.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

12月23日の夜、L.A.の街に全身に刺青、翼を持った男、ミカエル(ポール・ベタニー)が落ちてくる。ミカエルはナイフで翼を切り取り、金属の首輪を外すと武器庫を襲い、多数の武器を持ってパトカーで逃走する。翌日、荒野の真ん中にあるドライブ・イン「パラダイス・フォール」で引っ越し途中の3人の親子連れが車の故障で修理を待っていると、道に迷った男カイル(タイリース・ギブソン)がやって来て、携帯が圏外で使えないので電話を貸してくれという。そこに車で老婆クラディス(ジャネット・ミラー)がやってくる。老婆はウエイトレスのチャーリー(エイドリアンヌ・パリッキ)にお腹の子は焼け死ぬと予言し、ここにいる全員が死ぬと言い放つ。そして親子連れの父親ハワード(ジョン・テニー)の首に喰らい付き重傷を負わせると、次にオーナーのボブ(デニス・クエイド)の息子、ジープ(ルーカス・ブラック)に襲いかかる。あわやと言うときカイルが1911カスタムで老婆を射殺、ジープは助かる。そこへ今度はパトカーに乗ったミカエルがやって来て、奴らが来るから武器をとって一緒に戦えと、奪ってきた銃を渡す。「パラダイス・フォール」には1本道の両端から暗雲が迫りつあった。

73点

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 まさに王道のB級映画。とんでもない内容だが、観客を楽しませようと一生懸命真剣に作っている感じが伝わってくる。一言でいえば元祖リビング・デッド「ゾンビ」(Zombie: Dawn of the Dead・1978・伊/米)とか、またはそれを謎の生物に置き換えた「トレマーズ」(Tremors・1989・米)などと物語の構造は同じ。何ものかに襲われ、色んな人たちが集まって立てこもって打ち破るというパターン。西部劇の傑作「駅馬車」(Stagecoach・1939・米)もこのパターンで、これが元祖かもしれない。まあ物語のほとんどのパターンは西部劇で出尽したと言われているが……。

 ただ、キャラクター設定とドラマの構築がみごとで説得力があり、予算も少なく、見せ場もスケールが小さいが、面白い。ハラハラさせるし、感情も良く伝わってきた。インディアンやゾンビをレギオン(軍団、ここでは神に使わされた天使の軍団)に変えて、見た目というか、味付けをちょっと変えたと。

 印象としては、ちょっと連続TVドラマの初回のパイロット版のような感じ。この後、逃げのびた者は神が使わした天使の軍団と戦いながら全米を逃げ、人類の救世主となる息子を守り育てていくと。毎回色んな州の色んな街を訪れて、人々と交流していくと。デヴッド・ジャンセンのTV「逃亡者」(1963〜1967・米)のような感じ。最近で言えば「スーパーナチュラル」(2005〜2009・米)のようというか。これも定番の鉄板パターン。ただ、アメリカではヒットにならなかったので、TVドラマが実現しなかったとか。

 トライブインのオーナーで、近くにショッピング・モールができるとにらんでドライブインに賭け妻を失望させてしまったと悔いているボブを演じたのはデニス・クエイド。1970年代末からずっと活躍を続けているベテラン。最近では「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra・2009・米/チェコ)は酷かったが、「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)では自信を失ったシークレット・サービスを好演。すっかり父親役が板について来た感じ。

 その息子で、ドライブインのメカニックをしているジープは、ドライブインで働くウエイトレスのチャーリーに好意を持ち、自分に関心もなく別の男の子供を妊娠しているのに、いつも気づかっているような青年。しかもいつも悪夢にうなされている。父からは早くここを出て、おまえは間違った選択をするなと言われている。演じたのはルーカス・ブラック。どこが見たなあと思ったら、「ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT」(The Fast and the Furious: Tokyo Drift・2006・米)で主役のアメリカの高校生を演じていた人。なかなかの好青年。あまり活躍しないが、印象に残る。大切に育てようとしている感じか。

 ドライブインの黒人コック、パーシー・ウォーカーはオーナーのボブを昔から知っているようで、何でも言える仲らしい。演じているのはチャールズ・S・ダットン。最近は主にTVで活躍しているようで、以前は映画が多かった。最近では、なかなか恐かったハル・ベリーの「ゴシカ」(Gothika・2003・米)とかシルヴェスター・スタローンの「D-TOX」(D-Tox・2002・米/独)に出ていた。

 ドライブインのウエイトレスで、父無し子を妊娠しているチャーリーは、それでもタバコを吸い、産まれた子は養子に出そうと思っている。ジープの気持ちはわかっているが、感謝しつつも応えることができない。演じているのはなかなかの美人、エイドリアンヌ・パリッキ。ほとんどTVで活躍していた人で、日本語吹替が残念だったあの面白い心霊現象ハンター「スーパーナチュラル」(Supernatural・2005〜)などに出ているらしい。今後、映画でも活躍しそうだ。

 車が故障して、修理待ちをしている一家の父ハワードは、口うるさい妻と我がまま娘に手を焼きながらも、なんとか家族を1つにまとめようと奮闘している。演じているのはジョン・タニー。やっぱりTVが多い人で、人気の警察もの「クローサー」(The Closer・2005〜)のレギュラー。その妻がケイト・ウォルシュ。「グレイズ・アナトミー」(Grey's Anatomy・2005〜)のレギュラー。超ミニの娘がウィラ・ホランド。「The OC」(The O.C.・2003〜2007)の後半に出ていたらしい。何と映画監督のブライアン・デ・パルマの義理の娘なんだとか。子供の時からモデルをやっていたというだけあって、抜群のスタイルと美貌。

 道に迷ってやってくる1911カスタムを持っている訳ありの黒人男性は、どうやら息子の養育権か何かでトラブっているらしい。演じたのはタイリース・ギブソン。「ワイルド・スピードX2」(2 Fast 2 Furious・2003・米/独)で注目された人で、最近ではマイケル・ベイのバカ映画(IMDbでは7.3と高得点。続編でさえ6.0と高評価だが)「トランスフォーマー」(Transformers・2007・米)シリーズに出ている。

 神に逆らった天使ミカエル(劇中では英語読みのマイケル)は、人間を守るために地上に降り立つ。キリスト教ではガブリエル、ラファエル、ウリエルと合わせて四大天使というらしい。甲冑姿で天の軍団を率いるイメージで描かれることが多いそうで、本作でもそんな格好になっている。だからアメリカではわかりやすかったのではないだろうか。日本人には今ひとつピンと来ない。演じたのはポール・ベタニー。「Rock You ![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)や「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind・2001・米)でしっかりと存在感を示し、最近は「ダ・ヴィンチ・コード」(The Da Vinci Code・2006・米)や「ファイヤーウォール」(Firewall・2006・米/豪)など悪役が多かった。

 神の指示通り人類を滅ぼすため、救世主となる赤ん坊を殺そうと軍団を率いてやってくる天使はガブリエル。「神の言葉を伝える天使」だそうだが、本作では甲冑を身にまとい天の軍団を率いているので、イメージはミカエルに近いのかもしれない。演じたのはケヴィン・デュランド。傑作リメイク西部劇「3時10分、決断の時」(3:10 to Yuma・2007・米)で、イヤラシイ地主の手下をやっていた。まためちゃくちゃアクションの「スモーキン・エース」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)では、モヒカンの殺し屋を演じていた。

 脚本はピーター・シンクとスコット・スチュアート。ピーター・シンクは編集者として活躍していた人で、脚本は日本未公開の「Gotham Cafe」(2005・米)に続いて2作目。スコット・スチュアートは主にビジュアル・エフェクトをやって来た人で、劇場長編の脚本・監督はともに初。なるほど特殊効果がうまく使われているわけだ。ひょっとすると大化けするかも。次作がどうかだろうなあ。またポール・ベタニーで「Priest」という作品のポスト・プロダクションに入っているらしい。さて出来はどうか。

 公開2週目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて、20分前くらいに到着。ちょっと量が少ない豆乳入りのカフェオレを買って待っていると、12〜13分前に開場。まあ、とにかく遅れてくるヤツが多い。入れ換え式なんだから本編が始まってから来たら訳がわからないと思うが、なぜ?

 年齢層は、20代くらいからいたが、メインはやはり中高年。女性は1割りほどで、ほんとんど中年。遅れてくるヤツが多いので確かではないが、たぶん最終的には70席の8割りほどが埋まった模様。箱が小さいが、2週目でこれは優秀かも。

 気になった予告編は……上下マスクの「ソルト」は新予告。凄いアクションの連続。ただ最近は見どころを全部見せてしまうこともあるので、逆に心配になる。7/31か。ただタイトルは早く出せ。

 上下マスクの「インセプション」も新予告。凄いビジュアル、凄いキャスト、凄いアクション、凄い音楽……カッコいい。どうやら夢がキーワードのようで、夢を使ってあるものにセキュリティを掛けるとか、アイディアを盗むとか、そういう話らしい。SCARを撃っていた。映画初登場かも。

 ベッソンの上下マスク「アデル」も新予告。ようやく最新のベッソンお気に入りの女優が顔出し。北野武監督上下マスク「アウトレイジ」も新予告。怒声ばかりからちょっとストーリーっぽいものも。でも結局は暴力のみ。


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