Kokuhaku


2010年6月13日(日)「告白」

2010・東宝/博報堂DYメディアパートナーズ/フェイス・ワンダワークス/リクリ/双葉社/日本出版販売/ソニー・ミュージックエンタテインメント/Yahoo! JAPAN/TSUTAYAグループ ・1時間46分

ビスタ・サイズ(16mm、HDCAM)/ドルビー・デジタル

(日R15+指定)(一部の劇場で日本語字幕版もあり)
公式サイト
http://kokuhaku-shimasu.jp/
(全国の劇場案内もあり)

3月25日、終業式のあと、1年B組のホームルーム。担任の森口悠子(松たか子)は生徒たちが牛乳を飲み終わった後、今期限りで教師をやめると言う。盛り上がる生徒たち。騒ぎの中森口は淡々と話していく。数カ月前の自分の娘、愛美(芦田愛菜)の死は警察によって事故死と判断されたが、実際にはこのクラスの少年Aと少年Bによって殺されたと。そして警察に訴えても犯人たちは少年法で守られているから、復讐のためある仕掛けをしたと明かす。騒然とする教室。新学期、何も知らない新任の熱血教師、寺田良輝(岡田将生)がやって来るが、クラスはすでに崩壊を始めていた。

74点

1つ前へ一覧へ次へ
 うーん、悪い映画ではないが、見ない方が良かったかも。原作がこうなんだろうが、衝撃的で、血まみれで、気持ち悪い。そして何より、解決のない大きな現実の問題を突きつけられて戸惑う。あまりにリアルな荒れる中学(たぶん高校も似たようなものだろう)の実態。すべての学校がこんなはずはないだろうが、大なり小なりある問題だと思う。一歩間違えばこうなる。

 結末はあるが解決はない。問題は残され、宿題を突きつけられた感じ。これ、デート用としてはあまりふさわしくないと思う。友達同士でも、この後喫茶店に行って会話が弾むとは思えない。

 確かに、映画の作りとしては、現実的ではないリドリー・スコットのような片光で、いかにも作り物、セットという印象は強くなっている。冷たく硬い雰囲気を狙ったのだろう。しかしリアルであまりにも残酷。地なのかもしれないが、子役たちも、みな演技うま過ぎ。出口のない迷路に迷い込んでしまったような、さめない夢の中で空しく逃げ続けているような……重いため息が出た。問題が大きすぎる。少年犯罪、教育問題、モンスター・ペアレント、いじめ、ブロフ、シングル・マザー、AIDS……近年の学校に関わる悪い問題をすべて集めて、ぎゅーっと濃縮した感じだろうか。

 最初に犯人が明らかにされ、何人かの告白という形で事件の全体像が語られるので、いわゆる謎解き物ではない。それによって起こる悲劇に焦点が置かれている。だから辛い。

 ていねいな言葉遣いで、感情を抑え淡々としゃべるのは恐い。これは昔からある手法。森口悠子を演じた松たか子はこれをうまくこなしている。本作の役での口癖は「なんてね」(「ものいい」か!)。「K-20怪人二十面相伝」(2008・日)のお嬢様役もうまかった。ま、実際お嬢様だし。芝居がうまいのは遺伝だろうか。「隠し剣 鬼の爪」(2004・日)も良かったし、「THE有頂天ホテル」(2005・日)もいい味を出していたし、TVの「HERO」(2006・ 日)も良かった。

 熱血教師、寺田良輝を演じたのは岡田将生。痛いくらいの熱血ぶりが実に良かった。ボクは見ていないが「重力ピエロ」(2009・日)などに出ている。

 犯人Bのモンスター・ペアレント、下村優子を演じたのは木村佳乃。「おろち」(2008・日)でもこんなエキセントリックな役だった。

 犯人Aの壊れた秀才、渡辺修哉を演じたのは西井幸人。大きな役は本作が初めてらしい。普通から壊れてしまう犯人B下村直樹を演じたのは藤原薫。「20世紀少年」の2と3(2008〜2009・日)でサダキヨの少年時代を演じていた子。犯人の唯一の理解者、北原美月を演じたのは橋本愛。やはり大きな役は本作が初めてらしい。いずれも等身大で、自然な演技で良かった。むしろリアルで恐かった。素晴らしい才能だ。子役たちは全国1,000人以上のオーディションで選ばれたらしい。才能ある子が多いんだなあ。

 原作は湊かなえの同名小説。2009年の本屋大賞受賞作品なんだとか。結末は映画版とは違うらしい。それにしても、この発想はすごいと思う。

 脚本・監督は中島哲也。「下妻物語」(2004・日)や「嫌われ松子の一生」(2006・日)、「パコと魔法の絵本」(2008・日)などを手掛けている人。感動的だが、いかにも作り物、漫画的世界を実写でコミカルに撮る人という印象。本作では、犯人Bの直樹が壊れるシーンでちょっとその辺燐が出ているが、全体としてはコミカルさを抑えて、今までとは逆の方向色や光を極端に抑えて撮ったと。でもやはり作り物的な世界観は変わらない。好き嫌いがハッキリ分かれるかも。とにかく感情は大きく動かされる。CM出身で、豊川悦司、山崎努が温泉卓球で格闘戦を繰り広げるCMなどを撮っているヒット・メーカーだったという。なるほど。

 コピー防止のドットがあったようだが、ついに日本でも入れるようになったのか。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保して、25分前くらいに着。コーヒーをのみながら待っていたら15分前くらいに開場。下は高校生くらいから中高年までいたが、メインは20代くらい。男女比は3対7ほどで女性が多かった。ただこの内容が若い女性に受けるとは思えないのだが……。最終的には607席に6割くらいの入り。りっぱ。

 気になった予告編は……アニメ「借りぐらしのアリエッティ」は新予告。だんだん内容がわかってきた。面白そう。上下マスク「踊る大捜査線3」は引っ越しということ? この予告編だけで楽しそうな雰囲気が伝わってくるのが凄い。なかなかタイトルが出なくてイライラした「悪人」は、キンパツの妻夫木聡と深津絵里という顔合わせ。監督は「フラガール」の李 相日。結構おどろおどろしい話のようだが……。


1つ前へ一覧へ次へ