The Book of Eli


2010年6月19日(土)「ザ・ウォーカー」

THE BOOK OF ELI・2010・米 ・1時間58分

日本語字幕:丸ゴシック体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日PG12指定)
公式サイト
http://www.thewalker.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

イーライ(デンゼル・ワシントン)は終末戦争の後、1冊だけ残された本を持って「西」のどこかにそれを届けるため旅をしている。空にあいた穴から有害な紫外線が降り注ぐため、みんなサングラスかゴーグルを掛けている。ある日、iPodの充電が切れたため、充電してもらうためある街に入る。そして水を買うため元映画館というサルーンに入ると、悪党どもが因縁をつけてくる。あっという間に悪党どもをやっつけたイーライだったが、それを見た悪党のボス、カーネギー(ゲイリー・オールドマン)は、次の街を作るのに役に立つから仲間になれと声をかけてくる。とりあえず一晩泊まることになるが、ボスが部屋によこした女ソラーラ(ミラ・クニス)によって、ボスが探している本をイーライが持っていることが判明する。翌朝、イーライは監視を振り切り街を出るが、ソラーラが付いてくる。そして、ギャング一味が本を奪うため追いかけてくる。

74点

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 世界が滅亡して、残った貴重な本を守る男の話。なんだかありがちな設定だが、内容的にはほとんど西部劇。1人のボスが牛耳っている街に1人の流れ者のできる男がやってくる。そしてそいつらをたたきつぶす……。本来、主人公が守り、そして西に届けようとしている「本」はマクガフィンで、どんなものでも良いのだが、それをキリスト教国らしく聖書にし、奇跡までを付け加えたことから、ラストで非常に宗教色が強くなってしまった。ラストで強く印象に残るから、全体としてウエスタンなのに、宗教映画のような印象になってしまったのが残念。悪くないできなのに……。アメリカでは逆に受けが良かったかもしれない。

 つまり本がキーとなるので、原題は「イーライの本」。イーライとは主人公のかつてKマートの店員であったらしい男の名前。人類滅亡後30年も、啓示に従って本を守り西にあるどこかへ届けようとしている。ただ悪党のボスから旅人だということでウォーカーと呼ばれる。日本語タイトルはそれから取られている。なるほど。

 世界観は「華氏451」(Fahrenheit・1966・英/仏)や「リベリオン」(Equiblrium・2002・米)、「マッドマックス」(Mad Max・1979・豪)的世界。世界は核戦争で1度滅び、いたるところ廃虚と化している。よくある未来観。特に新しいところはない。ただ、セピア調でモノトーンのようにした色がその荒廃感を高めている。車やビルの残骸が実にリアルでスゴイ。

 主演のデンゼル・ワシントンはかなり格闘技などの訓練をしたのではないだろうか。スクリーン上ではとても切れが良く、説得力のある身のこなし。良い殺陣師と適切な演出だったのかもしれないが。「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)でハード・アクションも演じているので、素地はできていたはず。本作の前に残念なリメイク「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)に出ていた。メインの武器は銃架と思いきや大きな50〜60cmくらいもあるナイフ。銃はハンドガンがUSP、ロング・ガンがソード・オフしたたぶんレミントンの870。

 悪党のボス、カーネギーを演じたのはゲイリー・オールドマン。悪役が本当にうまい人だが、大ヒット作「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」(Harry Potter and the Prisoner of Azkaban・2004・英/米)や、傑作「ダーク・ナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)では良い役も演じている。そして日本映画「レインフォール/雨の牙」(Rain Fall・2008・日)さえも出てくれる。使っていたハンドガンはブローニング・ハイパワー。

 ボスの片腕、レッドリッジを演じたのはレイ・スティーヴンソン。痛快アクション「パニッシャー:ウォー・ゾーン」(Punisher: War Zone・2008・米/加/独)で主演していた人。つい最近、残念な「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)に出ていた。使っていたハンドガンはベレッタM92、ロング・ガンはFN FAL。クライマックスではRPG-7も使う。

 ヒロインのソラーラはミラ・クニス。ちょっとマリオン・コティヤールに似ている気がするが、生まれはキエフだそうで、日本ではほとんど知られていない。「マックス・ペイン」(Max Payne・2008・加/米)や「寝取られ男のラブ♂バカンス」(Forgetting Sarah Marshall・2008・米)に出ていたらしいが、どちらも小劇場や限定公開。クライマックスでMP7を使う。

 その母で盲目のクラウディアを演じていたのがジェニファー・ビールス。オジサン的には何といっても「フラッシュダンス」(Flashdance・1983・米)が強烈だった。あの可憐な女性が年ごろの女性のお母さん役だもんなあ。最近はTVの「Lの世界」(The L Word・2004〜2009・加/米)などに出ていたようだが、映画では日本発のホラー「呪怨パンデミック」(The Grudge 2・2006・米)に出ていた。

 引きこもっている農家のオヤジ、ジョージはマイケル・ガンボン。まさにゲイリー・オールドマンが出た「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」からダンブルドア校長を演じている人。悪役が多かったがダンブルドアのせいか、最近は良い役が多いか。使っていた銃はM4カービン。

 ほかに出ていた銃は、ギャングたちがAKを使用。クライマックスで持ち出してくるのは西部劇に登場する手回しのガトリング・ガン。そしてなぜか冒頭のシーンで砂の上に落ちているのがコルト・ポリス・ポジティブ。しかも古いタイプのグリップが付いている。

 脚本はゲイリー・ウィッタ。公式サイトによるとビデオゲーム誌の編集者から脚本家に転身したらしい。初脚本作品。悪くはない思うが、どう評価されるのか。

 監督はアレンとアルバートの双子のヒューズ兄弟。切り裂きジャックを描いたダークな「フロム・ヘル」(From Hell・2001・米)を監督した人たち。アクションもいけることを証明した。印象が今ひとつなのは宗教色を強くしすぎた脚本のせいか。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて30分前くらいに到着。トイレに行ってコーヒーを飲んで待っていると、15〜16分前に開場。下は中学生くらいの男の子から、上は中高年まで幅広かったが、メインは中高年。女性は1/3くらい。最終的には607席の4.5割くらいが埋まった。

 半暗になって始まった予告編で気になったのは……リュック・ベッソンの上下マスク「アデル」は、主人公の女性メインの新予告。ミイラを妹のために蘇らせるとか何とか。はたしてどうか。

 スクリーンが左右に広がってシネスコ・サイズになってスタローン、シュワルツェネッガー、ジェイソン・ステイサム、ジェット・リー、ドルフ・ラングレン、ミッキー・ロークといったオール・スターによる「エクスペンダブルズ」はまだティーザーで、傭兵軍団ということしかわからない。


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