The Yellow Handkerchief


2010年6月27日(日)「イエロー・ハンカチーフ」

THE YELLOW HANDKERCHIEF・2008・米・1時間36分(IMDbでは米版102分)

日本語字幕:手書き書体下、石田泰子/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)
公式サイト
http://www.yellow-handkerchief.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2007年8月5日、6年の刑期を終え刑務所を出所した男ブレット(ウィリアム・ハート)は、ミシシッピー川を渡るため渡し舟を待っていると、旅をしている青年ゴーディ(エディ・レッドメイン)の車が近づいてくる。助手席には、彼氏に振られた腹いせに町を出ようとゴーディの車に乗ったマーティーン(クリスティン・スチュワート)。そしてコーディと2人だけでは不安になったマーティーンが一緒に乗らないかと声をかけてくる。ゴーディは何もしていないのに周りから疎まれ、自分の居場所を探して旅をしていた。マーティーンは父子家庭で、ドライバーの父は留守がち。しかも父には新しく恋人ができたらしく、自分はほとんどほったらかし。初めて町を出ようとしていた。ブレットはニューオリンズでやらなければならないことがあるようだった。ブレットはバス停まで乗ることにするが……。

70点

1つ前へ一覧へ次へ
 2008年の作品がなぜ今になって?と思ったが、見てわかった気がする。日本版にあったエンタテインメントな部分というか、お芝居的な楽しい部分がなくなって、こぢんまりとした(つまりは非常に現実的でリアルな)アート作品に仕上がっていた。笑い一切なし。ラストの感動はあるが、一言でいえば、暗い。後ろ向き。

 楽しさもなく、辛い、自戒的(内省的)な、それでいて学びというか進歩もない。もちろん人はそんなに簡単には変われないが、それでもそうしようとする前向きな姿勢や希望くらいはもっと見せてくれても良かったと思う。というか、日本版で良かったコミカルな部分や、明るい希望、人間って良いなあという部分がまったくなくなっている。だからクレジットに日本人の名前や作品名などが登場しなかったのか。かろうじてエンド・クレジットのスペシャル・サンクスにYOUJI YAMADAとあったくらい。これはピート・ハミルの原作小説に忠実に作ったと言うことなのだろうか。ボクは山田洋次版の「幸福の黄色いハンカチ」(The Yellow Handkerchief・1977・日)の方が、あざといかもしれないが商業映画としては何倍も優れていると思う。

 キャストは豪華。日本版で高倉健が演じた主人公、島勇作に相当する男ブレットにアカデミー賞俳優のウィリアム・ハート。最近では「バンデージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)に大統領役で出ていたが、「アルタード・ステーツ」(Altered States・1980・米)や「蜘蛛女のキス」(Kiss of the Spider Woman・1985・ブラジル/米)などは強烈だった。

 桃井かおりが演じた小川朱実に相当する若い女性マーティーンに、だんだんイタくなってきた「トワイライト〜初恋〜」(Twilight・2008・米)シリーズの美女、クリスティン・スチュワート。暗い感じは「トワイライト」と一緒かも。桃井かおりは安モーテルの日系人受付係(オーナー?)役で出演もしていた。ワニが出てくるところは唯一笑えるかもしれないシーンだった。

 武田鉄矢が演じた花田欽也に相当する若い男ゴーディにエディ・レッドメイン。ロバート・デ・ニーロが監督したスパイ映画「グッド・シェパード」(The Good Shepherd・2006・米)でマット・デイモン演じる主人公の自殺する息子を演じていた人。日本版とは正反対の設定で、ちょっと異常な感じが抜群にうまく、うますぎて好きになれないキャラクターだった。

 倍賞千恵子が演じた待っている妻、島光枝にアクションもいける「ヒストリー・オブ・バイオレンス」(A History of Viorence・2005・米/独)のマリア・ベロ。美女なのにスッピン系で、しかも生活に疲れた感じを出しているので、実に地味な感じ。本作は流産のシーンもありかなり汚れ役。できる女優は辛い。最近、残念だった「ハムナプトラ3 呪われた皇帝の秘宝」(The Mummy: Tomb of the Dragon Emperor ・2008・米ほか)に出ていた。

 暗い脚本を書いたのはエリン・ディグナム。本作前に日本劇場公開作品はなく、この2008年以降も日本劇場公開作品はない。過去の未公開作品はいずれも監督もしていて、タイトルには愛の文字が入っている。監督も兼ねた「ギルティ・オブ・ラブ(未)」(Loved・1997・米)ではショーン・ペンのプロデュース・出演で、ウィリアム・ハートを主演に使っている。ただ、なぜこの人だったのか。プロデューサーのアーサー・コーンの選択だろうか。この人もアート系の作品が多い人。

 監督はインド生まれ、イギリス育ちのウダヤン・プラサット。TVで活躍していた人で、2001年から劇場作品も手がけるようになっているが、日本劇場公開作品は「天使にさよなら」(Gabriel & Me・2001・)のみ。やはりアート系での公開で、IMDbで4.5点の低評価。結局本作の後はなく、2010年にTVにもどっている。うーむ。

 やはりコピー防止のドットが所々で気になった。アート系の作品にコピー防止なんて必要なんだろうか。暴行事件で出てくるパトカーの警官はオートマチックを装備。グロックかベレッタか。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席自由で40分前くらいに着いたら誰も並んでいなかったので、涼しいエスカレーター前で待つことに。久しぶりに行ったら、ボックス・オフィスには前売り券も当日券との引き換えが必要という文字が見当たらなかった。ところが30分前くらいになって係の女性が降りてきてエスカレーターの準備を始め、一言。「当日券との引き換えが必要です」。だったらボックス・オフィスに大きく貼り出しておけって感じ。外に出ると、すでに15〜16人の行列。でも、中があるにも関わらず、日差しを受ける暑い外で並ばせるなんて。しかも初回は場内がまだ冷えておらずちょっと暑かった。

 年齢層はほとんど高齢者。白髪が目立った。たぶん日本版を劇場で見た人たちではないだろうか。男女比は6対4くらいでちょっと男性の方が多い感じ。最終的には435席に3.5割くらいの入り。この作品ではこれ以上伸びるとは思えない。

 スクリーンはビスタで開いており、チャイムの後アナウンスがあって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「武士の家計簿」は森田芳光監督の時代劇だが、まだ絵がないのでなんとも言えない。ただ森田芳光監督は「椿三十郎」をそくりそのままリメイクした人だからなあ……。でもタイトルを最初に出すのはわかりやすくて良い。

 「大奥」は男女逆転の物語なんだとか。豪華なキャストだが、どろどろの人間ドラマ的な予感はする。絵がないのでなんともわからないが。10/1から。

 アニメの「みつばちハッチ」は、なぜか薄いベールが1枚かけられたような白っぽい絵。色に鮮やかさがない。どうしたんだろうか。「シュアリー・サムデイ」は公開が近いので新予告に。ワルサーPPKが出ていた。


1つ前へ一覧へ次へ