Les aventures extraordinaires d'Adele Blanc-Sec


2010年7月3日(土)「アデル ファラオと復活の秘薬」

LES AVENTURES EXTRAORDINAIRES D'ADELE BLANC-SEC・2010・仏・1時間47分(IMDbでは105分)

日本語字幕:手書き書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts

(日PG12指定)
公式サイト
http://adele.asmik-ace.co.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

1911年11月4日深夜、パリのエジプト考古学者エスペランデュー教授(ジャッキー・ネルセシアン)のアパートで怪しい光が発光した。同じ時、自然史博物館の卵の化石が孵化し、翼竜プテロダクティルスが生まれ天井を破って外に出ると、元知事を乗せた車を襲う。翌日、事件解決のためパリ警視庁のカポニ警部(ジル・ルルーシュ)が捜査に当たることになる。そして自著のサイン会をしていたアデル・ブラン=セック(ルイーズ・ブルゴワン)は出版社から南米へ取材に行くように言われていたが、自分の双子の妹アガット(ロール・ド・クレルモン)を救うため、エジプトへミイラを探しに行く。

71点

1つ前へ一覧へ次へ
 もっと古代エジプトをフィーチャーしたアドベンチャー物かと思っていたら、コミカルなSFアドベンチャーという点では同じだったが、もっとマンガチックで、たぶん監督が好きなハリウッド映画の名場面をたくさん取り込んで、女性を主人公にして「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(The Mummy・1999・米)系にまとめたちょっと古い味付けをしたSF(というか荒唐無稽の)アドベンチャーだった。エジプトよりはパリを舞台にしたシーンの方が長い。

 結構、笑えるシーンも多く、セリフがよく練られているようで会話も面白い。SFXにもお金を掛けているが、やはり人間をデジタル化したものは動きが変でバレてしまう。アクションも満載。ただ、ハリウッド映画を多く取り込んでいて、原作がある割にはオリジナリティが薄く、底が浅い感じがしてしまう。笑わせたら最後にはちょっと感動もさせてくれたら良かったのに、最後まで軽い感じで行ってしまう。ギャグもみなどこかで見たようなものばかりのような気がした。昔の映画のようにシネスコを生かしたワイプも何回か使用。

 たとえばその影響が見られるのは、「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(Raiders of the Lost Ark・1981・米)だったり、「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」だったり、「ナイトミュージアム」(Night at the Museum・2006・米/英)だったり、「サハラ 死の砂漠を脱出せよ」(Sahara・2005・英ほか)だったり、「タイタニック」(Titanic・1997・米)だったり。まるでそれらの良いところを取り込んでつなぎ合わせた感じさえする。これはどうなんだろう。アデルの邪魔をする黒眼鏡の老人なんてまるで「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」のゲシュタポみたいなナチ党員そのまんまだもんなあ。

 アデルを演じたのはフランスのお天気お姉さん、ルイーズ・ブルゴワン。毎回趣向を凝らしたファッションで登場するのがトレードマークだったようで、本作でもその一端を垣間見せてくれる。2008年〜映画の世界に進んだようだが、主役に抜擢されたのは今回が初めて。どうやらリュック・ベッソンに見初められたらしい。なかなか明るくて楽しそうな感じの人らしい。

 ゲシュタポみたいなナチ党員の雰囲気のデュールヴーを特殊メイクで演じたのは、マチュー・アマルリックという人。「007/慰めの報酬」(Quantam of Solace・2008・英/米)で敵のボス、ドミニク・グリーンを演じていた。「ジャック・メスリーヌPart 2」(Mesrine: Part 2 - Public Enemy #1・2008・仏)では、ミスリーヌと刑務所で知り合う犯罪者を演じていた。本作では老人のようだが、実際は1965年生まれの45歳。部下が

 エジプトのシーンで裏切る男が持っていた銃は、SAAフロンティアの黒色火薬モデル。シルバーでアイボリー・グリップ付きとはなかなかマニアック。兵士たちが持っていたのは、モーゼル・ミリタリーとたぶんイギリスのリー・エンフィールド(SMLE)ライフル。アフリカから呼び戻される名ハンターが持っているのは、水平二連のライフル。スコープまでついていて、かなりの高級品らしい。タイプライターはレミントンだった。

 原作はフランスの人気コミック、タルディの「アデル・ブラン=セック」。2007年までに9巻がでているのだとか。

 脚本・監督はリュック・ベッソン。確か「アンジェラ」(Angel-A・2005・仏)が最後の監督作品といっていたが、本作の後、子供向けのCG冒険物語「アーサー」シリーズの第3作目を監督するのだとか。どういうことだろう。プロデューサーとしての活躍の方が多くIMDbで94本、その半分ほどの脚本も書いている。特に2000年に入ってから多く、いくらなんでも作りすぎという感じ。だからか1本1本は非常に味が薄い。粗製乱造の一歩手前か。それにしても、公式サイトのベッソンの写真はあまりにも昔の写真で驚く。今は太ってしまって見る影もないほど。やっぱりお金持ちになるとみんな太るんだなあ。ジョージ・ルーカスや一時期のピーター・ジャクソンもひどかった。その点、ジェームズ・キャメロンはほとんど体形が変わっていなようだ。

 音楽はリュック・ベッソンとの仕事が多いエリック・セラ。スゴク面白かったデビュー作の「最後の戦い」(Le Dernier Combat・1983・仏)から音楽を担当している。

 エンド・クレジットの最後におちの映像があるので、すぐに席を立たないように。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に座席を確保しておいて、30分前くらいにコーヒーを買って到着。すでに劇場は開いていて、スゴイ混雑。どうやら「踊る……」の人らしい。プログラムのところにもスゴイ行列が。ほかに何か話題作の前売り発売があったのかも。15分前くらいに開場した。客層はほとんど中高年で、男女比は4.5対5.5くらいで、やや女性が多い感じ。最終的に287席に7割くらいの入り。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……ジャッキー・チェンとウィル・スミスの息子が共演する「ベスト・キッド」。日本が舞台でないのは残念だが、なかなか面白そう。ジャッキーはこの役にピッタリかも。

 上下マスクの「ソルト」は新予告に。アクション満載という感じ。面白そう。これほどのアクションが演じられる女優はアンジェリーナ・ジョリーくらいだろう。男顔負け。

 少し上下マスクの「バウンティ・ハンター」は元妻を刑務所に入れたら5,000ドルという仕事を受けた元夫との戦いらしい。結構体を張ったギャグもあって面白そう。

 「ゴースト ニューヨークの幻」のリメイク、日韓合作?の「ゴーストもういちど抱きしめたい」は、以前見たときは人物が写っておらず、セットだけでまだ絵ができていないんだなあと思ったのだが、今回良く見て見たら、カメラがパンというか移動して行くとき、机の上の小さな鏡に一瞬女性の顔(松嶋菜々子?)が写るのだ。もちろんこちら側には誰もいない。ちょっとゾッとして、驚いた。これが気付く人はたぶん少ないと思う。おしゃれな予告。

 スクリーンが左右に広がってシネスコになって、ビスタでもやった「大奥」をもう一度。なぜ? 絵もないのに。


1つ前へ一覧へ次へ