Repo Men


2010年7月3日(土)「レポゼッション・メン」

REPO MEN・2010・米/加・1時間51分

日本語字幕:手書き書体下、岡田壮平/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R15+指定)
公式サイト
http://repo-men.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

レミー(ジュード・ロウ)は、相棒のジェイク(フォレスト・ウィテカー)とともに戦場で戦い、軍を辞めてからは人工臓器のユニオン社で、ローン滞納者から人工臓器を回収する腕利きレポ・メン、回収屋として働いていた。収入は良かったが、妻のキャロル(カリス・ファン・ハウテン)からは、非人間的な殺し屋のようなレポ・メンを辞めて販売係に転向するよう頼まれ、悩んでいた。そんなとき、滞納のミュージシャンから人工心臓を抜くとき、AEDがショートして吹っ飛んでしまう。気が付くとレミーはユニオン社の人工心臓で一命をとりとめていた。それまで相手のことなど考えずに「仕事は仕事」と割り切ってクールにレポしてきたレミーだったが、退院してからはレポができなくなってしまう。さらに、配置転換を申し出なかったため、妻から家を追い出される。レポできないレミーはやがて人工心臓の支払いが滞り、ついには滞納者となってしまう。

73点

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 いやあ、ショックキングな映画。予告もほとんど見ていなかったので、どんでん返しがあるとも思っていなかったので、よりショックだった。ということは、予告では「あなたはだまされる」とか「見抜けるか」などとは言わない方が良いのでは。雰囲気としては短編小説のような感じ。

 まさにハードSF。血が飛び、肉が割け、腹の中に腕を突っ込む……それをリアルにしっかり描いて見せる。決して後味は良くない。良くないが、悪いというのとは違う。ただ、全編に流れる暗い雰囲気と退廃、諦観、行き詰まった感じがちょっと重くて、うんざりしそうな感じになる。微妙なところ。うんざりしてしまうと、楽しめない。

 箱の中に、猫といつ出るかわからない毒を入れてふたをする。猫はふたを開けて見るまでどうなっているかわからない。つまりその状態では生きているか死んでいるかわからない状態だと。そして主人公がその状態になる。

 レポ・メンの主要武器はテーザー(スタン・ピストル)で、どうも未来的なスタイルの実在の装薬銃をベースにテーザーに仕立てたもののような気がする。ただどうにもベースのガンが思い出せない。どこかのガン・ショーのレボートで見たような気がするのだが……。レポ・メンは首に独特のマークが入っている。これで不法侵入してもOKになっているのか。未来社会の景観は、ちょっと「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)に似ている。

 ユニオン社の重役フランクが持っているのはグロック。レミーが使うランチャーは、レス・リーサルでセミ・オートマチックのFN303というものらしい。相棒のジェイクが使うリボルビング・グレネード・ランチャーはアメリカ軍が採用したミルコールのマルチ・ショット・グレネード・ランチャー。ラスト、本社のせまい廊下を2本のナイフにハンマーも使い、レポ・メンたちをなぎ倒しながら1人でピンク・ドアへ進んで行くシーンは、まさに韓国映画の「オールド・ボーイ」(Oldboy・2003・韓)そのもの。やっぱり刃物は銃より恐い。監督はきっとあの絵が撮りたかったんだろう。

 ジュード・ロウはマイナーな作品にも良く出ている。つい最近ハリウッド大作のヒット作「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)に出ていたばかり。ちょっと暗い感じがするところが魅力なのだろう。「シャーロック・ホームズ」でもちょっと雰囲気が違っていた。はっきりとはわからなかったが、たぶん頭髪のあちこちに円形脱毛のような跡がつけられていた気がする。これはメイクで、精神的に大きなプレッシャーを受けているという演出だったのではないだろうか。しかもイギリス・アクセントを前面に出していたような。

 フォレスト・ウィティカーは最近恐い。うまいだけに余計恐い。存在感だけで恐いのだからスゴイ。ちょっと笑福亭鶴瓶にも似てきた気がするけど。「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)では小さな役だったが、なんだか最近悪役が多いようだ。

 ユニオン社の重役フランクを演じたのはリーヴ・シュライバー。最近がんがん映画に出ている感じ。「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)に出ていたなあと思ったら、つい最近「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米)に出ていて、早くも本作。まもなく公開される「ソルト」にも出ているんだから、すごいなあ。

 ジャンキーの女性ミュージシャン、ベスを演じたのはアリシー・ブラガ。ウィル・スミスの「アイ・アム・レジェンド」(I Am Legend・2007・米)、ジュリアンロムーアのダークなSF「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/ブラジル/日)、ハリソン・フォードの「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」(Crossing Over・2009・米)、そしてまもなく公開される「プレデターズ」にも出ている。大人気だ。かわいらしい感じが良い。

 冷たい妻キャロルはカリス・ファン・ハウテン。あのポール・ヴァーホーヴェン監督のショッキングな戦争映画「ブラックブック」(Black Book・2006・蘭/独/ベルギー)で全裸になり、汚物まみれになっていた人。さすがにうまい。美人が冷たくすると本当に冷たく見える。

 原案を作り、小説と脚本を同時進行で手掛けたのはエリック・ガルシア。ニコラス・ケイジの詐欺師を描いた「マッチスティック・メン」(Matchstick Men・2003・米)の原作(タイトルが本作と似ている)を書いた人。もう1人脚本を書いたのは、ギャレット・ラーナー。TVで脚本やプロデューサーをやっている人。最新作は「Dr.HOUSE−ドクター・ハウス−」。

 監督は製作総指揮も兼ねるミゲル・サボチニク。「トレインスポッティング」(Trainspotting・1996・英)や「普通じゃない」(A Life Less Ordinary・1997・英/米)のストーリーボードの仕事から、ミュージック・ビデオの世界に進み、短編を監督して評価され本作で長編劇場映画デビューを飾った。雰囲気作りや絵作りは、さすがミュージック・ビデオの人だけあってうまい。

 スタント・コーディネーターでジェフ・イマダとヒロ・コダの名前があったが、IMDbではジェフ・イマダの名前がなかった。どうしたんだろう。そして日本語タイトルは英語のカタカナ書きなのに、なぜオリジナルより長いのだろう。なぜオリジナルどおりの「レポ・メン」じゃないのだろう。エミリオ・エステベスの「レポマン」(Repo Man・1984・米)があるからか。オリジナルをパロった日本タイトルの作品は未公開B級作品に多いから、それを避けたということか。

 公開2日目の2回目、銀座の劇場は2回目から全席指定なので前日に確保しておいて、20分前くらいに到着。前回の掃除中らしく15分前になって開場。ほとんど中高年で、男女比は6対4くらいで男性の方が多かった。最終的には183席がほぼすべて埋まった。

 スクリーンはシネスコで開いていたが、本鈴のあとビスタへ。暗くなって始まった予告編で気になったのは……25年前の殺人事件の謎を解くらしい「ミレニアム ドラゴン・タトゥの女」のようなアルゼンチンの映画は「瞳の奥の秘密」。早くタイトルを出せ。色が濃くて絵に力がある。見たいけど、劇場がなあ。

 ハリソン・フォードとブレンダン・フレイザー共演の感動ドラマは「小さな命が呼ぶとき」。これは見たいけれど辛そうで……実話だし。これもタイトルが出るのが遅い。

 これまたタイトルが出るのが遅くて、危うくタイトルがわからないところだったアニメ「カラフル」は人生をやり直す話らしいが、感動作なのか、コミカルなのかも良くわからなかった。

 上下マスク「十三人の刺客」は暴君を暗殺するために選ばれた13人の刺客の話らしい。監督は三池崇だし、なかなか面白そう。劇場次第だけど、見たい。

 上下マスク「ザ・ラストメッセージ海猿」は見たいけれど、3Dというのが気になった。そっちに力が行ってしまって、肝心のドラマがつまらなくなっているような……だいたい3Dで撮影しているんだろうか。

 ジブリ・アニメ「借りぐらしのアリエッティ」は新予告に。面白そう。ミーガン・フォックスの「ジェニファーズ・ボディ」はミーハーな映画かと思ったら、バンパイアものらしい。かなり過激で、恐そうで、面白いかも。舌をライターで焼くシーンはショッキング。


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