Kyouhu


2010年7月14日(水)「恐怖」

2010・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテインメント/Entertainment FARM/CELL/オズ/東京テアトル・1時間34分

ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.kyofu-movie.jp/
(音に注意。入ると画面極大化。全国の劇場案内もあり)

取り壊された古い病院から発見されたモノクロ・フィルムには、ロシア人や中国人などの人体実験の様子が収められていた。日本人医師たちは側頭葉のシルヴィウス裂を刺激し、幻覚を見させる実験を行っていたのだ。そしてさらに刺激を続けると、被験者たちは普通の人間には見えないものを見てしまったらしかった。ともに脳外科医の夫婦はその研究をやって見たいと思っていたが、幼い2人の娘、みゆき(中村ゆり)とかおり(藤井美菜)にそのフィルムを上映しているところを見られてしまう。17年後、姉のみゆきは脳外科の研修生となっていたが、自殺サイトで知り合った仲間たちとバンで練炭自殺を図る。しかし実行直後、黒いバンが現れ、蘇生術を施すと彼らを怪しげな実験室へと連れ去ってしまう。

71点

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 ハッキリ言って、わからない。どういう物語なんだろうか。帰りがけ、女子大生らしい2人組が「さっぱりわかんない。最初からわからなかったし」「そんなに恐くなかったよね」たぶん、これがすべてではないだろうか。

 解釈がいくつも可能というものではなく、実際どんな事件だったのかがわからないということ。せめて1つくらいは本線の解釈があって、その他にも解釈が可能でわからないというのでないと、商業映画として成立しないのではないだろうか。観客を混乱させたかったというのかもしれないが、タイトルが「カオス」じゃなく「恐怖」なんだから。いろいろ起こって説明なしって……。

 ボクが無い頭を絞って無理に解釈すると(そんなことをしなければならないのも悲しい)、これは最近流行の脳内事件なのではないだろうか。どこからが本当で、どこからが脳内のことなのかわからないが。つまり、ある女性が自殺サイトで知り合った同士と自殺をし、完全に死ぬまでに脳内で起こっていた地獄を描いたものだと。そして、その夢のようなものは少女時代の事件がモチーフになっていると。子供のころなので、解釈が現実とはかなりかけ離れているかもしれないのに、それでもそれが恐怖のトラウマとして深く少女の頭の中に固定されてしまったから、こんな地獄を見たと。

 何回か繰り返されるのは「自殺したものはその後どこへ行くのか」ということで、1人は「地獄」ではないかと恐れるが、1人は「どこにも行かない。ただ消え去るだけ」と答える。見てきた人はいないので、誰も説明できない。本作も説明していない。

 低予算映画のようで、リアルな脳手術のシーンはあるが、おかしくなった姉のメイクがカラー・コンタクト・レンズのみって。謎の光も後からくっつけたようだし、光だけって……。

 一見、謎解き風の展開は面白い。どうなるのか引き込まれる。しかし答えはない。謎解き風にするのなら答えを用意してくれないと。大いなる肩透かし。側頭葉のシルヴィウス裂なんてものまで持ち出しておきながら……。残念。まあ日本映画なのに、2009年に作られていて2010年に公開というのはそれなりのの理由があると言うことだろう。

 最初主人公かと思った姉のみゆきを演じたのは中村ゆり。「パッチギ!」(2007・日)などに出ていたらしい。2009年2010年とたくさんTVに出ている。コンタクト・レンズだけで異常な感じっていうのもなあ……。

 妹のかおりを演じたのは藤井美菜。姉とも母とも似ていないが、その辺はまったく気にしていないらしい。「犬と私の10の約束」(2008・日)に出ていたそうで、やはり本作以降、2009年、2010年とTVの出演が増えている。

 理解できない行動をとる脳外科の母、悦子を演じたのは片平なぎさ。2時間ドラマによく出ている印象だが、もとは歌手としてデビューした人で、「スチュワーデス物語」(1983〜1984)で悪役を好演。桂三枝の「新婚さんいらっしゃい」では長年アシスタントを務めた。

 看護婦役でチラリと登場するのは吉野公佳。劇場版シリーズ第1作、佐藤嗣麻子監督の「エコエコアザラク」(1995・日)で黒井ミサを好演した人。良かったのに最近はあまり見かけない印象。どうしちゃったんだろう。

 年長の刑事を演じたのは、ベテランの高橋長英。やはり1人こういう人がいると映画に重みが出る。ボク的には東宝・加山雄三のアクション・シリーズ第3弾「豹(ジャガー)は走った」(1970・日)の加山の部下役が印象深かった。そこからか、刑事役が多い気がする。

 脚本・監督は高橋洋。昔から脚本家としてホラー系を書いている人。恐かったものでいうと中田秀夫監督の「女優霊」(1995・日)があるが、あれも結末が無かったっけ。「リング」(1998・日)シリーズなどはちゃんと結末があるが、あれは原作がある。最近面白かったものでは「おろち」(2008・日)だが、これも原作あり。

 公開5日目の水曜日、2回目35分前くらいに着いたらロビーに5〜6人の人。全席指定で、席が取れたので見ることに。若い人が多いのは平日ということで、大学生か。あとちょっといた中高年は営業中のサラリーマンとか。20分前くらいに入れ替えになり場内へ。女性は10〜12人に1人くらいだったが、次第に女子大生くらいが増えてきて、最終的に男女比は6対4くらいまでに。10分前は30人くらいだったが、最終的には218席の6.5割くらいが埋まった。平日なのにと思ったら、毎週水曜は1,000円均一なのだった。そうだったのか。失敗した。

 明るいまま始まった予告編で気になったのは……「ちょんまげプリン」は、とんでもないおふざけかと思ったら、原作漫画があって、侍が現代にタイムトリップしてくる話らしい。うーむ。やや上下マスクの「ゾンビランド」はシリーズ中最もアメリカでヒットした作品らしい。とにかく思いっきりやっつけまくる。ちょっと見たい気もするが、劇場がなあ……。

 「乱暴と待機」はアニメのようだったが、後半実写で、実際のところ実写らしく、かなりエロティックっぽいものの、アート系自主映画のような雰囲気もあって、どうなんだろう。

 予告なのに、思わずため息が出てしまうようなものも多く、気が滅入る。バブリーなときに企画されたからか。うーん、見たくない。


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