Karigurashi no Arrietty


2010年7月17日(土)「借りぐらしのアリエッティ」

2010・スタジオジブリ/日本テレビ/電通/博報堂DYMP/ディズニー/三菱商事/東宝/ワイルドバンチ・1時間34分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル、dts


公式サイト
http://www.karigurashi.jp/index.html
(劇場案内なし)

翔(声:神木隆之介)は、離婚した母が海外出張のため母の姉の貞子伯母さん(声:竹下景子)の家で心臓病の手術前の夏の1週間を過ごすことになった。そこは古い屋敷で、翔の母が昔、小人を見たことがあると言っていたので、翔は楽しみだった。そして到着した日、庭で猫がじっと見つめていたところで小人の影を見かける。その夜、その屋敷に住んでいる小人一家の長女、アリエッティ(声:志田未来)は、父親のポッド(声:三浦友和)と14歳になって初めての「借り」に出ることになっていた。母のホミリー(声:大竹しのぶ)からは、ティッシュと角砂糖を借りてきて欲しいと言われていた。ところが、翔の部屋の人形の家に入ったとき、2人は少年に見つかり、角砂糖を落として逃げ出す。翌日、小人の家の近くに角砂糖と手紙が置かれている。

70点

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 一言ですべてが言える映画。すなわち、人間に見つかった小人一家が家を出て行く話。それ以外なし。これを94分の長編にするなんて。「引っ越し」と言っているが、新しい家は出てこないので、引っ越しですらない。ただ出て行くのみ。事件もない、ドラマもない、ロマンスもない(気配はある)、心の交流もない……いったいなぜ映画にしたのか。ただ、絵と音は抜群に良い。色使いも鮮やかで多彩でキレイ。

 そもそも冒頭に、少年が病気で来週手術することになっている、ということを大きく取り上げていながら、解決していないというか描き切っていない。余韻なのか、宿題なのか知らないが、観客は気になって仕方がない。これを狙ったなんて言わないで欲しい。描かないなら、最初に課題のように言わないで欲しい。この企画と脚本が宮崎駿とは信じられない。

 ジブリ作品というとどうしても宮崎アニメを想像してしまうが、本作は雰囲気や登場人物は似ているが全くの別物。物語というより散文的な印象の作品。何編かあるうちの短編の1本ならこれでも良いかもしれないが、まったく物足りない。大いした事件も起きず、平凡な1日を切り取ったような感じ。お手伝いさんが小人を捕まえようとしたことだけが事件か。アリエッティがマチ針を拾って腰に差すのに、使わないんだもんなあ。だったら意味深に描くなよ。手ごわい強敵と死闘を繰り広げるのかと思うじゃないか。「おわり」の文字が空しかった。

 主人公のアリエッティの声は志田未来。「誰も守ってくれない」(2008・日)で誰からも守ってもらえない少女を演じていた子。見た感じはちょっと暗くて、どうせアタシなんかという感じがするが、声だけ聞いているとアリエッティにぴったりに聞こえる。かわいく、前向きでひた向き。さすが女優。

 心臓病の少年、翔の声は神木隆之介。幼い頃から活躍していて、今年17歳。アニメの声優も多い。ジブリ作品では「千と千尋の神隠し」(2001・日)から坊の声で出演しており、「ハウルの動く城」(2004・日)ではハウルの助手の少年マルクルの声をあてている。「妖怪大戦争」(2005・日)では主演を演じているし、異色ジュブナイル「遠くの空に消えた」(2007・日)でも主演を演じている。

 アリエッティの父、ポッドの声は三浦友和。イメージは大ヒット作「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)の宅間先生がぴったりで、本作の骨太でがっしりした人の声は合わない気がした。母のホミリーの声は大竹しのぶ。ややオツムの弱そうな、ちょっとヒステリックな女性の声を違和感なくあてていた。外見的にはアニメのキャラはやせ形でイメージが異なるが、さすが名女優。翔の母の姉の貞子伯母さんの声は竹下景子。もうここんなオバサンの声がピッタリの感じになったんだなあ。TVの「北の国から」(1981〜2002)の雪子おばさんが印象深い。一時は「お嫁さんにしたい女性No.1」になったことも。お手伝いのハルさんの声は樹木希林。このキャラだけは最初から樹木希林をイメージしたかのような外見で、声もピッタリ。

 脚本は宮崎駿と丹羽圭子。丹羽はちょっと残念な「ゲド戦記」(2006・日)も書いているらしい。原作はメアリー・ノートンの「床下の小人たち」(岩波少年文庫)。小説もこんな内容なのだろうか。少年文庫ということで、ささいな事件を描いたということかもしれないが。

 監督は米林宏昌。「もののけ姫」(1997・日)以降の宮崎駿作品の動画・原画を担当していた人。「ゲド戦記」の原画も描いている。だから宮崎アニメといわれても絵の違和感は全くない。演出も適切だと思うが、いかんせん脚本が……。

 セシル・コルベルの主題歌はすばらしい。実にいい感じ。iTunesで買う手かな。セシル・コルベルはフランス生まれの歌手でハープ奏者の30歳。日本語で歌っている。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保。8時40分という早朝からの上映で、30分前くらいに付いたら劇場がまだ開いておらず20〜30人の行列ができていた。数分で劇場が開きロビーへ。コーヒーを飲んで待っていると、10分前くらいに開場。入場プレゼントがあり、劇場の名入りひとくちチョコレートを1コもらった。

 最終的には早朝にも関わらず607席に6割くらいの入り。男女比は3対7くらいで女性の方が多く、年齢層は下は小学生くらいから、上は中高年までと幅広かった。さすがジブリ・アニメ。ただCM・予告が始まってもぞくぞくと人が入って来ていたが……。

 ほぼ暗くなって始まった予告で気になったのは……上下マスクの「SPACE BATTLESHIPヤマト」はとにかく絵がスゴイ。まあビックリ。アニメがそのままリアルな実写になった感じ。はたして面白いのか。

 内容は全くわからないが、凄そうな感じがしたのは「GANTZ」。人気劇画の映画化らしいが、アクションが大迫力のよう。11/1〜。気になる。あとは夏休み前ということでか、アニメ作品がやたらに多かった。


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