Inception


2010年7月24日(土)「インセプション」

INCEPTION・2010・米/英・2時間30分(IMDbでは148分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(マスク、by Panavision、IMDbではデジタルも)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(IMAX版、日本語吹替版もあり)
公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/inception/mainsite/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

コブ(レオナルド・ディカプリオ)は、他人の夢の中に侵入して機密事項を盗み出す専門家。巨大企業の経営者サイトー(渡辺謙)の依頼を受け、ライバルの巨大企業コボル社のモーリス・フィッシャー(ピート・ポスルスウェイト)が病気のため息子のロバート(キリアン・マーフィー)に経営権を渡すさい、全社を1つにさせないためロバートの心に独自路線の経営をするアイディアを植え込む〈インセプション〉仕事を受けることになる。コブは妻のモル(マリオン・コティヤール)を殺害した容疑で指名手配されており、2人の子供がいるアメリカに帰国できないでいたが、サイトーは電話1本でそれを取り消しに出きるという。コブは相棒のアーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)とともに、恩師のマイルズ教授(マイケル・ケイン)から優秀な学生のアリアドネ(エレン・ペイジ)を紹介してもらうと、夢のデザインを任せ、偽造師にイームス(トム・ハーディ)、調合師にユスフ(ディリープ・ラオ)を雇い、サイトーも加えた6人でロバートを夢の世界に誘い込む計画を立てる。

86点

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 驚異のビジュアル。そして驚異の物語。まさに映画向きの、映画ならではの、異世界体験。久々にハラハラ、ドキドキし、心拍数が上がった。描かれる夢の世界。現実と同じ様に見えながら、自在に変化していくさまは圧倒的なインパクトと力を持っている。ただ、CM・予告で良いところを見せ過ぎ。おかげで、本当はもっと驚くことができたはずなのに、予告で見ているから「あっ、あの時の絵か」と思うことが多かった。これが惜しい。多くが初めて見る絵なら、もっと感動できて、今年一だったのに……。

 夢をテーマにしたのもは、なんだとガッカリさせられることが多い。夢だからという逃げ道として使われるからだが、本作は先に夢と明かしておいて、正面からそれを描いて行ってドラマをきっちり成立させている。ラブ・スーリー、SF、ミステリー、アクション……そして「スティング」(The Sting・1973・米)のようなピカレスクものの要素も。コミカルさはないが、印象として良く似ている気がした。トータルとしては良くできた007のようなスパイものにも近いかもしれない。

 コブを演じたのはレオナルド・ディカプリオ。雰囲気的には「ブラッド・ダイヤモンド」(Blood Diamond・2006・米/独)に近いかもしれない。「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米)もそうだったが、プロの男を演じることが多くなってきた感じで、タクティカル・シューティングもすでに身にしみ込んでいるようだ。本作でもちゃんと正しいスライドの持ち方でローディングしているし、ウィーバー・スタンスも決まっている。使っていたのはベレッタPx4。M9000Sに続く変なデザインで、なぜこの銃を選んだのか。ベレッタからお金が出ているのかもしれない。サイレンサーも使っている。雪山では白くカモフラージュしたブレイザーR93ライフルを使用。

 相棒のアーサーを演じたのはジョセフ・ゴードン=レヴィット。ヘレン・ミレンが末期ガンの殺し屋を演じた「サイレンサー」(Shadowboxer・2005・米)の医師や、がっかり作品「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra・2009・米/チェコ)で狂気の科学者コブラコマンダーをやっていた。ちょっと気弱そうな感じの約が多かったが、本作はスマートでさっそうとしてカッコ良かった。「(500)日のサマー」((500) Days of Summer・2009・米)で主演しているらしいが見ていない。使っていた銃はグロックとFN SCAR。FN SCARは数発だが撃っていた。たぶんスクリーン初登場。

 コブの妻モルを演じたのはマリオン・コティヤール。「エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜」(La vie en rose・2007・仏/英/チェコ)でアカデミー賞主演女優賞に輝き、その後ミュージカルの「NINE」(Nine・2009・米/伊)やローリング・トゥエンティを描いた「パブリック・エネミー」(Public Enemies・2009・米)と話題作に続けて出演、そのどれもが素晴らしい演技。「TAXi」(Taxi・1998・仏)で注目されて、いまや世界的名女優。フランス生まれの35歳。使っていた銃はP230。

 依頼者のサイトーを演じたのは渡辺謙。「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)が抜群に良く、ハリウッド・ブレイクしてクリストファー・ノーランと「バットマン・ビギンズ」(Batman Begins・2005・米/英)で仕事をするものの、映画自体もそれほどではなく、役もみょうちくりんで酷かった。それのお詫びという感じなのか、本作の役はクリストファー・ノーランが渡辺謙をイメージして書いたという。確かに日本人である必要もなく、悪くはない印象。「SAYURI」(Memories of Geisha・2005・米)、「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)もとても良かった。「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)は酷かったが。

 学生のアリアドネを演じたのはエレン・ペイジ。なんといっても「ハードキャンディ」(Hard Candy・2005・米)がショッキングで良く注目され、ハリウッド大作「X-MEN:ファイナルディシジョン」(X-Men: The Last Stand・2006・加/米/英)で壁抜け少女を演じ、「JUNO/ジュノ」(Juno・2007・米/加)では主演でアカデミー主演女優賞にノミネートされている。

 インセブションのターゲット、若社長のロバートを演じたのはキリアン・マーフィー。「バットマン・ビギンズ」と傑作「ダークナイト」(The Dark Knight・2008・米/英)で布袋を被った不気味なスケアクロウ役で、クリストファー・ノーラン監督と仕事をしている。「麦の穂を揺らす風」(The Wind That Shakes the Barley・2006・アイルランドほか)でもアイルランド戦士を演じてみごとだった。本作でも独特の味を出している。

 変装名人の偽造師イームスを演じたのはトム・ハーディ。ガイ・リッチー監督の暴力映画「ロックンローラ」(RocknRolla・2008・英)でドライバーノハンサム・ボブを演じていた人。「ザ・エッグ〜ロマノフの秘宝を追え〜」(Thick as Thieves・2009・米/独)にも出ていたらしいが、マイクロ劇場での公開で見ていない。使っていたのはUSPコンパクトとミルコールのグレネード・ランチャー、そしてSIG SG552。

 調合師ユスフを演じたのはディリープ・ラオ。サム・ライミの残念なホラー「スペル」(Drag Me To Hell・2009・米)に出ていた人で、つい最近「アバター」(Avator・2009・米/英)で医師の役を演じていた。

 コブの恩師マイルズ教授を演じたのは名優マイケル・ケイン。ちょい役だが印象に残る。贅沢な使い方。おそらくクリストファー・ノーラン監督の「バットマン・ビギンズ」と「ダークナイト」に出ているからだろう。

 コボル社の重役ブラウニングを演じたのは、最近B級映画の出演が多いトム・ベレンジャー。最後に見たのはシリーズ第3作目のスナイパー映画のビデオ作品「山猫は眠らない3 決別の照準」(Sniper 3・2004・米)、そして日本劇場未公開のビデオ作品「スモーキン・エース2」(Smokin' Aces 2: Assassins' Ball・2010・米/加)。「プラトーン」(Platoon・1986・英/米)とか「誰かに見られている」(Someone to Watch Over Me・1987・米)なんて良かったのに。ちょっと太り過ぎかな。

 コボル社の社長モーリス・フィッシャーを演じたのはピート・ポスルスウェイト。傑作「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)のコバヤシを演じていた人。最近は残念なリメイク「タイタイの戦い」(Crash of the Titans・2010・英/米)に出ていた。

 監督・脚本・製作はクリストファー・ノーラン。大傑作もあるが、この監督にしてはどうだろうという作品もある。時間細切れ再編映画「メメント」(Memento・2000・米)でアカデミー賞最優秀脚本賞にノミネートされ、一気に一流の仲間入りをはたすと、「ダークナイト」でヒース・レジャーにアカデミー賞最優秀助演男優賞をもたらした。それらに並ぶ、あるいは超えたのが本作だろう。そばらしい才能だと思う。007映画のファンだそうで、本作で似た感じがあったのはそのせいだろう。自分のペースで映画を作り続けて欲しい。

 アーマラー、武器係はIMDbによると「バットマン・ビギンズ」でクリストファー・ノーラン監督と仕事をしているデイヴ・エヴァンスと、007シリーズを手掛けたジョス・スコットウの2人。劇場のエンド・クレジットでは「ダークナイト」や「パブリック・エネミーズ」(Public Enemies・2009・米)を手掛けたハリー・ルーの名があった。

 他に出ていた銃器は、コボル社のセキュリティ要員が持っていたのが、ベレッタM92やMP5、M4A1カービン、そしてハンヴィーの車載銃にFN MAG。あとチラリと南アのヴェクターCP1も出ていた気がする。

 音楽はハンス・ジマー。「バットマン・ビギンズ」と「ダークナイト」でクリストファー・ノーラン監督と仕事をしている。そして「ラスト・サムライ」の音楽も担当している。つい最近手掛けたのはガイ・リッチーの「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)。耳に残る。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に座席を確保して、30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待っていると17〜18分前くらいに開場。客層は小学生くらいから中学生、高校生、大学生、上は中高年まで幅広かった。珍しく若い人も多い。しかし小学生で内容がわかったのか。自分でも難しかったのに。外人さんも目立っていた。男女比は4.5対5.5くらいでやや女性の方が多かった。ただ隣に座った若い女、座った途端に靴脱ぐか?

 ほぼ暗くなってCM・予告が始まっても続々と入って来て、じゃま。しかも遅れてきて携帯をチェックするな。液晶画面の光がまぶしい。ロビーでチェックしてから入ってこい。最終的には607席に8〜9割の入り。さすが期待作。

 気になった予告編は……フェイスブックを作った学生たちのドラマ、上下マスクの「ソーシャル・ネットワーク」はなんだかドロドロのドラマのようで、監督はデヴッド・フィンチャーなんだとか。

 スクリーンが左右に広がってシネスコになってから、なぜか左右マスクで「最後の忠臣蔵」。良くわからなかったが、生き残った赤穂浪士の話らしい。画質が余り良くなかったが、なぜ? 監督はTV「北の国から」の杉田成道。

 「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」は良くわからなかったが、面白いのか。もう少し内容よりの予告にならないとなあ。

 シリーズ最新作にして最終作の「ハリー・ポッターと死の秘宝」は、ついにヴォルデモートとの直接対決になるらしい。そして前後編の2部作で、後編は2011年公開。しかも初の3D版上映もあり。なんだかすべての悪役が再登場するような感じだったが……。

 中央から少し上にかけてピントがあまいまま本編へ。うむむ。それにしても、冒頭いきなり流ちょうな日本語から始まるので、日本語吹替版と間違ったかと焦った。


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