The Karate Kid


2010年8月15日(日)「ベスト・キッド」

THE KARATE KID・2010・米/中・2時間20分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)(日本語吹替版もあり)(一部デジタル上映)
公式サイト
http://www.bestkid.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場案内もあり)

父を亡くし、母のシェリー(タラジ・P・ヘンソン)と二人暮らしとなった12歳の少年ドレ(ジェイダン・スミス)は、母の仕事が転勤となり、中国の上海へ引っ越しすることになる。すぐに小学校で美しい少女メイ(ハン・ウェンウェン)を見つけ話しかけるが、カンフーを習っているチョン(ワン・ツェンウェイ)の反感を買い、いじめられることになる。そんなある日、アパートの管理人ハン(ジャッキー・チェン)がドレを助けてくれ、打撃を使わず1人で6人を撃退する。ハンはイジメをやめさせ、仲直りさせるためチョンのカンフーの先生のところにいくが、まもなく開催されるカンフー大会でかたを付けようという。その日からドレはハンからカンフー特訓を受けることになる。

73点

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 ラルフ・マッチオが主演した「ベスト・キッド」(The Karate Kid・1984・米)のリメイクで、ストーリー展開もわかっているが、舞台を日本からうまく中国にはめ込み、定石のパターンではあるがちゃんと感動させるあたりはさすがハリウッド作品。ラストの試合の盛り上げ方が抜群にうまい。これぞショービズ。

 日本が舞台でないのは残念だが、こういう内容だと、いまの日本には合わないだろう。「ベスト・キッド」の1984年でさえ、とても日本とは思えないような表現もあったが、今ならよほどの田舎でないと異文化という感じは出ないからだろう。結局のところハリウッドは「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)的な異文化との出会いを描きたいのだろうから。野蛮人的に下に見ていた人々がちゃんと文化を持っていて、西洋人と同じ様な感情を持っていて、しかも心の交流ができたと。

 やっと解放されてきた中国ならそれが可能だと。しかもアジアの格闘技を教えるわけで、今なら空手よりカンフーだろう、それなら中国だとなってもちっとも不思議じゃない。ブルース・リーとジャッキー・チェンがいる。

 ジャッキーが教える戦いの極意は、ちょっとブルース・リーに似ている。「最高の闘いは闘わないことだ」。「燃えよドラゴン」(Enter the Dragon・1973・香/米)でブルース・リーは実践していた。この作品には無名時代のジャッキーも出演しているから、意識していないことはないだろう。

 ドレを演じたのはジェイダン・スミス。ウィル・スミスと「マトリックス レボリューションズ」(The Matrix Revolutions・2003・)のナイオビを演じたジェイダ・ピンケット=スミスの長男。父と母は本作のブロデューサーでもある。失業シングル・ファーザーのサクセス・ファンタジー「幸せのちから」(The Pursuit of Happyness・2006・米)で父のウィル・スミスと共演している。体の柔らかさに驚かされる。エンディング・クレジットでメイキングの写真が出るが、かなりトレーニングを積んだらしい。パパもママもよく撮影に立ちあっていたようだ。

 母のシェリーを演じたのはタラジ・P・ヘンソン。「スモークン・エース暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・米)で、アリシア・キーズの相棒で.50バーレット使いの女スナイパーを演じていた人。「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)ではベンジャミン・バトンの育ての親を演じていた。

 管理人(英語ではメンテナンス・マンと言っていた)のハンを演じたのは、もちろんジャッキー・チェン。この人しかいないという感じ。つい最近、残念な「ダブル・ミッション」(The Spy Next Door・2010・米)でハリウッド進出30周年となったんだとか。主演作は全60本。それだけでも超人だ。

 同級生の美少女メイインを演じたのはハン・ウェンウェン。なかなか芸達者のような感じがしたが、メジャーな作品はこれが初めてらしい。今後期待できるかもしれない。ただ子供は大きくなるに従ってどんどん顔も変わって行くので、この雰囲気を保てるのかはわからないが。「シックス・センス」(The Sixth Sense・1999・米)のハーレー・ジョエル・オスメントとか(変わり過ぎ!)、「ホーム・アローン」(Home Alone・1990・米)のマコーレー・カルキンとか、「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgement Day・1991・米/仏)のエドワード・ファーロングとか、「ファミリー・ゲーム/双子の天使」(The Parent Trap・1998・米)のリンジー・ローハンとか、天才子役はみんなまともに育っていない感じだし……。

 カンフーを習っているいじめっこのチョンはワン・ツェンウェイ。この子も憎たらしい役をうまく演じていたが、メジャーな作品はこれが初めてらしい。カンフーもうまかった。

 最初、ドレに話しかけた来たりして目立っていたが、途中からまったく存在感がなくなった金髪の少年ハリーはルーク・カーベリー。なんとこの子もメジャーな作品はこれが初めてらしい。

 悪いカンフーの先生リーを演じたのは、ユー・ロングァン。1980年代後半から香港映画で活躍しているベテランで、ツイ・ハーク・プロデュースのブリジット・リン主演アクション「スウォーズマン/女神復活の章」(風雲再起・1993・香)に出ていた。最近に本公開された作品ではアンディ・ラウ 版の「三国志」(Three Kingdoms: Resurrection of the Dragon・2008・中/韓/香)がある。

 脚本はクリストファー・マーフィー。1984年のオリジナル版はロバート・マーク・ケイメンだが、本作には関わっていないもよう。クリストファー・マーフィーは脚本家としては初めてのメジャー作品。その前には日本劇場未公開の「アンディ・ガルシア 沈黙の行方」(The Unsaid・2001・加/米)のストーリーを手掛けている。

 監督はハラルド・ズワルド。面白かったアクション・コメディ「ジュエルに気をつけろ」(One Night at McCool's・2001・米)のあと、がっかりシリーズの第2弾「ピンクパンサー2」(The Pink Panther 2・2009・米)をなど撮っている。だいたいコメディ系の人だが、なぜこの人に任せたのか。本作はコミカルな要素もあるものの、ほとんどは少年の成長スポ根なのに。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、木曜日に確保して、30分前くらいに到着。コーヒーを飲みながら待っていると、15分前くらいに開場。下は小学生くらいの女の子から、白髪の老人まで幅広い。外国人の親子連れもいた。さすがジャッキー映画。男女比は4.5対5.5くらいで女性の方がやや多かった。

 まあ、とにかく遅れてくる人が多い。予告が始まるととても迷惑。それで座ってからメールチェックするので、液晶画面の明かりが邪魔になるし。なんで劇場内に入る前にやらないのか。しかも、エンド・クレジットになるとすぐにケータイを取り出して画面を点灯させメール・チェックするし……外に出てからやれ。

 気になった予告編は……ジョン・レノンがビートルズになるまでを描くらしい「ノーウェア・ボーイ」は、面白そうでもあるが、重そうでもある。劇場次第か。といって大きな劇場ではやらないだろうけど。

 上下マスク、トム・クルーズとキャメロン・ディアスのアクション・コメディ「ナイト&デイ」は新予告。面白そう。ナイトは夜じゃなく、騎士のKがつくナイトだったのね。

 上下マスク「バイオハザードIVアフターライフ」も、渋谷から始まり忍者のようなアリスが出てくる新予告。3Dを意識しているようで、画面に向かって手裏剣が飛んで来たりする。ジュリア・ロバーツの「食べて、祈って、恋をして」は、まあいいか。


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