Inshitemiru


2010年10月16日(土)「インシテミル 7日間のデス・ゲーム」

2010・ワーナー・ブラザース映画/ホリプロ/日本テレビ放送網/読売テレビ/ツインズジャパン・1時間47分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/incitemill/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

フリーターの結城(藤原竜也)は、ある日コンビニであるバイト情報誌を読んでいると、謎の美女、須和名(綾瀬はるか)が寄って来て「こんなアルバイト、怪しいですよね」とケータイの画面を見せる。そこには時給11万2千円とある。金額につられて応募すると、須和名も応募しており、自分も含め訳ありの10人がいた。彼らは郊外の奇妙な施設「暗鬼館」に閉じこめられ、7日間、心理実験に参加することになる。そして何か起きた場合、すべて多数決で決定しろといわれる。ルールは夜10時には部屋に入って外へ出ないこと。破るとガード・ロボットにより強制排除されるという。食料はちゃんと用意されていたが、鍵のかからない部屋に入ると箱があり、中にはそれぞれ意味深なカードとともに武器が収められていた。

71点

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 うーむ、謎解きミステリーというわけでは無いようだが、どうにもツッコミどころが多すぎる気がする。どんでん返し付きであるならば、水も漏らさぬほどの緻密な脚本、画面、演出でなければならないのに……。つまり結末というかどんでん返しが納得できない。結末だけでなく、途中からどうにもおかしい気はするのだが。

 設定は「そして誰もいなくなった」(And Then There were None・1945・米)で始まって、謎解きになるのかと思ったら、「レベル・サーティーン」(13・2006・タイ)になってサバイバルの様相を呈し、ラストはあまり盛り上がらず、地味に終了。陰のボストか真犯人との対決もない。これは映画としてどうなのか。尻すぼみではなあ……。

 原作は2010年版「このミス」で作家別第1位に輝いた、米澤穂信の「インシテミル」(文春文庫)。読んでいないのでわからないが、原作に忠実なのだろうか。ようするに小説として読んで面白いものと、リアルな映像としてみて面白いもの、説得力のあるものは違うということだろう。映像では心情や考えを描くのは難しいから、良いわけが聞かないというかフォローが利かない。

 施設が完全な密室になっていないのが致命的。監視している第三者が明らかにおり、何をやるかわからない監視ロボットまでがいる。ということは、1つ1つの殺人に犯人がいなくても、この第三者がかかわっていたという解釈の方が先に立つはず。しかも各個室に鍵がかからない。閉じこめられた10人のほかに第三者が隠し扉とかから入って来てもちっとも不思議じゃない状況なのに。

 銃弾で殺されたらしい死体を見て、一瞬で拳銃だと見抜くが、なぜライフルではないのか。薬莢を見て言うなら許せるけど。しかも銃創は貫通しているようなのに、壁に弾痕がない。拳銃弾だって貫通しているはずなのに。監視ロボットのデザインもいまひとつの感じだし、あの細い腕に銃を組み込めるかなあ。謎が隠されていそうな武器とカード(しかもミステリー小説のタイトルまで記入されている)があるのに、ほとんど関係ない。医師の卵の男の彼女、ギャル系の橘はどうして死んだかわからないし。クギ撃ち銃は頭を貫通するとしても、都合よく倒れた死体の額のあたりに貫通したクギが落ちるだろうか。みな武器を手にしてもすぐに使わず、とにかく台詞をしゃべる。だから反撃される。敵を前に銃を手に入れたら、何も言わずにすぐ撃てばいいのに。舞台ならまだしも、映画なのだから……説得力がどうにも……。

 実験に参加する10人は、フリーターの「バトル・ロワイヤル」(2000・日)藤原竜也、謎のOLの「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)綾瀬はるか、アル中の元社長の「八甲田山」(1977・日)北大路欣也、幼児虐待の園長の「恐怖」(2010・日)片平なぎさ、自殺常習のWEBデザイナーの石原さとみ、お坊ちゃまの研修医の「花より男子F」(2008・日)阿部力、その彼女のちゃらいネイリストの「ウォーターボーイズ」(2001・日)平山あや、おしゃべりなタクシー・ドライバーの「THE有頂天ホテル」(2006・日)石井正則、青山の通り魔の「今日からヒットマン」(2009・日)武田真治、最年少のオタクの映画初出演、大野拓朗。そして片平なぎさ似のインディアン人形の声は、バナナマンの日村勇紀。

 脚本は鈴木智。おもしろかった会社再生ドラマ「金融腐食列島[呪縛]」(1999・日)やSFアクション「ローレライ」(2005・日)、見ていないが事件報道を描いた「誰も守ってくれない」(2008・日)を手掛けた人だ。社会派的なものもエンタテインメントもありよくわからないが、単独脚本は「ローレライ」なので、本作とつながる気はする。

 監督は、尻切れトンボの印象だが恐かった「女優霊」(1996・日)の中田秀夫。ほかに原作とはちょっと違うが「リング」(1998・日)やホラーというより愛憎劇の「怪談」(2007・日)など、ホラー系とされるものが多い印象。「ザ・リング2」(The Ring Two・2005・米)でハリウッド・デビューしているが、どうなんだろう。

 使われていた銃はベレッタM92。

 冒頭、暗鬼館へ着くまで画面が緑カブリ気味の色調だったのはどうしたことだろう。暗鬼館に着いてからはスタジオ撮りらしく、安定しており問題なかった。しかも天井まで写しているので照明には工夫が凝らされていたのだろう。つまりロケ部分が残念だったということか。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で前日に確保しておいて、30分前くらいに到着。コーヒーを飲みながら待っていると、15分前くらいに開場。印象的には若い女性が多いようで、老若比は2対8くらいで若い人が多かった。男女比は3.5対6.5くらいで女性が多かった。最終的には287席に6割ほどの入りは、話題作の初日の初回としては少々まずいのではないだろうか。今後も口コミで増えていくとは思えない。

 気になった予告編は……上下マスク「ハリー・ポッターと死の秘宝」は新予告。吹き替え版だったが、画面が大きいと口の動きと声が合わないのが目立つ気がした。TVならそんなに気にならないのだが。それに「もうオレさまのものだ」って、いまどき「オレさま」なんて言うか? おとぎ話やお芝居の世界じゃないんだから。いや、これはおとぎ話か……3D作業が間に合わないとかで、前編は2D上映だそうだが、予告はまだ3Dということでやっていた。

 ハリウッド映画のリメイク「ゴースト」はついに本編の映像付き予告に。なんか抵抗を感じるのはボクだけか。

 「北の国から」の杉田成道監督、池宮彰一郎原作「最後の忠臣蔵」は、使命を帯びて生き残った赤穂浪士の物語。生き残る方がどれだけ辛いか……予告だけで感動的。役所広司は「十三人の刺客」に続いての時代劇出演。


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