Machete


2010年11月7日(日)「マチェーテ」

MACHETE・2010・米・1時間45分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(デジタル、Panavision Genesis)/ドルビー・デジタル、dts(IMDbではSDDSも)

(米R指定、日R18+指定)

公式サイト
http://www.machete.jp/
(入ると画面極大化。音にも注意。効果音は止められない。全国の劇場案内もあり)

刃物を使うことから“マチェーテ”とあだ名されるメキシコの制服警官(ダニー・トレホ)は、女性を助けるためトーレス(スティーヴン・セガール)の麻薬組織のアジトに突入するが、それは罠で重傷を負って捕まり、妻と娘を惨殺されてしまう。3年後、テキサスで不法移民として働いていたマチェーテは、ブースと名乗る男(ジェフ・フェイヒー)に高額で雇われ、法移民問題で強行策を取るマクラフリン上院議員(ロバート・デ・ニーロ)を暗殺するように依頼され、スナイパー仕様のM16A2を渡される。マクラフリン上院議員はメキシコとの国境付近で自警団を組織するヴォン(ドン・ジョンソン)と組み、不法移民狩りをしていた。一方、不法移民を密かに手助けしていたのは、移動タコス屋を営む女性ルース(ミッシェル・ロドリゲス)で、実はコード・ネームを“SHE”と呼ばれる女戦士だった。それを監視していたのはアメリカ移民局I.C.E.の捜査官サルタナ(ジェシカ・アルバ)だった。そして監視中、マチェーテが現れ、元捜査官であることを知る。

73点

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 エロ、グロ、暴力、偏見、差別、汚い言葉、満載のB級テイスト・ムービー。とにかく憎たらしい悪役を、暴力で叩きつぶす痛快活劇。銃もたくさん出るが、タイトルの「マチェーテ」(ナタのような大型の刃物。映画ではマシェティと聞こえた)どおり、刃物の殺戮もたっぷり描かれている。手首が落ち、首が飛び、血糊が飛び散る。それは気持ちが悪くなるほど。

 良いヤツは皆メキシコ人で、悪ヤツはみなアメリカ人という徹底したわかりやすさ。監督・脚本・編集などもメキシコ系の人ばかり。これでアメリカで受けたのだろうか。しかも主役クラスの豪華なアメリカ人俳優がみな悪役。ほとんどオール・スター映画に近いが、みな悪者。よく出てくれたなと。これがプロデューサーでもあるロバート・ロドリゲスやクエンティン・タランティーノの力ということか。

 話としては、片足にM16を埋め込んだ女の「プラネット・テラーinグラインドハウス」(Planet Terror・2007・米)の時に、架空の映画の予告編として上映されたアクション映画「マチェーテ」が評判が良かったことから、本当に映画として作ったということらしい。確かに、あれを見た時は面白そうだと思った。そして、期待にたがわない痛快活劇を作った。

 雰囲気は、かつてよく作られていた強引な展開のB級アクションそのもの。画質もあえてコントラストを強く、ややザラ付いた感じや。傷まで入れてちょっと古い感じを出しているが、撮影はデジタルなのでものすごくキレイでビビッドなはず。そして出演者はB級を超える豪華さで、有名人ばかり。役者好みの賞を狙うような文芸作品でもないのに、ジェシカ・アルバとリンジー・ローハンは全裸になってがんばっている。まあ、二人ともこのところパッとしないことはパッとしないが……。ロバート・デ・ニーロは超一流だ。悪役でぶざまに殺されたかったのかも。確かに「ボーダー」(Righteouse Kill・2008・米)でもそんな役をやっていた。「15ミニッツ」(15 Minutes・2001・米/独)もスゴイ死に様だった。

 主演のダニー・トレホは、監督のロバート・ロドリゲスの従兄弟だそうで、年少期に刑務所に入った経験を持つらしい。こわもてだが、実際には出所後、麻薬中毒者やアルコール中毒者を支援するプログラムに携わるようになったのだとか。つい最近「プレデターズ」(Predators・2010・米)にメキシカン・マフィア役で出ていた。使っていた武器はほとんどナイフだが、狙撃でM16A2、バイクに取り付けたM134ミニガンも使っていた。

 メキシコ側の麻薬組織のボス、トーレスは、いまやB級アクションの帝王、スティーヴン・セガール。映画の内容と関係のない日本で勝手に付けた「沈黙」シリーズは、まだ続いている。久々のメジャー作品だ(それでも小劇場系だが)。つかっていたのは日本刀のようなカタナ。部下たちはAKなど。

 メキシコとの国境付近で不法入国者狩りを行うテキサスのビジランテ(自警団)のボス、ヴォンはドン・ジョンソン。TVの「刑事ナッシュ・ブリッジス」(1996〜2001)以降もアメリカでは出ているが、日本公開されたTVも映画もない模様。表情ひとつ変えずにアイボリー・グリップのガバメントで妊婦を撃つところが恐い。部下はM4A1カービンなど。

 ヴォンと組んでいる上院議員のマクラフリンはロバート・デ・ニーロ。人間狩りではスコープ付きのボルト・アクション・ライフルを使い、拳銃は彫刻入りの見事なシルバーのガバメントを使っていた。最近見たのはDVDだが「ボーダー」(Righteous Kill・2008・米)。最近はちょっとマイナーな作品が多い感じ。

 その右腕ブースはジェフ・フェイヒー。TVドラマの「LOST」でヘリコプターのパイロットを演じていた人。ロバート・ロドリゲスの「プラネット・テラーinグラインドハウス」にも出ている。サイレンサーとライトがついたオートマチックはグロックだったろうか。

 その娘エイプリルはリンジー・ローハン。いろいろ問題を起こしているから映画には呼んでもらえないだろうと思っていたら、こういう作品に出ていたか。でも、さすがに全裸になってのガンバリ。それくらいやらないとね。双子の少女を演じた「ファミリー・ゲーム/双子の天使」(The Parent Trap・1998・米)や、母親と入れ替わってしまう娘を演じた「フォーチュン・クッキー」(Freaky Friday・2003・米)のときは良かったのに。使っていた銃はS&WのM500の8インチ。さすがにでかくて重く、手がぷるぷるしていた。ほかにイングラムもぶっ放していた。

 ブースが雇う殺し屋オシリスは、特殊メイクのトム・サヴィーニ。意外と役者としての出演も多い。「プラネット・テラーinグラインドハウス」や吸血鬼アクション「フロム・ダスト・ティル・ドーン」(From Dusk Till Dawn・1996・米)などロバート・ロドリゲス作品にも出ている。使っていた銃はM16のようにオートマチック・ショットガンのUSAS12。

 タコス屋のルースはミッシェル・ロドリゲス。「LOST」にも出ていたが中途半端な役。映画では超話題作「アバター」(Avatar・2009・米/英)に出ていた。アクションはお任せという感じ。使っていた銃はSIGのP230の2挺拳銃に、マッドマックス・ショットガン、そしてなぜか被せ物をしたイオテック搭載M4A1カービン、マイクロ・ウージー。

 I.C.E.の捜査官サルタナはジェシカ・アルバ。出産後、初の作品か。最近はちょっと作品に恵まれなかった感じもあり、全裸のシャワー・シーンを披露。使っていた銃はグロック。

 怪しげな神父、パードレはチーチ・マリン。コメディアンでミュージシャンでもある。ロバート・ロドリゲスの作品に良く出ているが、一番有名なのは「刑事ナッシュ・ブリッジス」でのドン・ジョンソンの相棒ジョー・ドミンゲス役かもしれない。使っていたのはポンプ・ショットガンで、2挺両手撃ち。

 ほかに銃器は、大きなスコープをつけた高級スナイパー・ライフル、デザートイーグル、S&WM500の4インチ、KG9、ウージーなども出ていた。

 で、悪党のトーレスはパナソニックのタフ・ブックで、捜査官のサルタナはマック・ブック。ヴォンはiPhone。

 脚本はアルヴァ・ロドリゲスとロバート・ロドリゲスの2人。アルヴァ・ロドリゲスは「フロム・ダスク・ティル・ドーン3」(From Dusk Till Dawn 3: The Hangman's Daughter・2000・米)の脚本と原案も手掛けている。間が10年もあいてるが……。

 監督も2人で、ロバート・ロドリゲスとイーサン・マニキス。ロバート・ロドリゲスはほとんど1人で作った「エル・マリアッチ」(El mariachi・1992・メキシコ/米)が高く評価され、以来、ずっとアクション系作品を撮り続けている。メジャーな作品にはこだわらない人だが、メジャーな作品ではSFホラーの「パラサイト」(The Faculty・1998・米)や「シン・シティ」(Sin City・2005・米)を手掛けている。つい最近公開された「プレデターズ」(Predators・2010・米)では製作と視覚効果監修のみ担当している。製作会社のトラブルメーカー・スタジオはロバート・ロドリゲス監督の会社。

 イーサン・マニキスは多くのロバート・ロドリゲス作品で編集を担当していた人で、実力が認められて本作で監督デビューしたらしい。

 マカロニ・ウエスタン風のタイトル・デザインはカート・ヴォルク。「プレデターズ」や「プラネット・テラーinグラインドハウス」も手掛けている。

 銃器担当はスタンフォード・ギルバート。古くから小道具担当をしている人で、お金はかかっていた超大作「パール・ハーバー」(Pearl Harbor・2001・米)も手掛けている。最近は「エクスペンダブルズ」(The Expendables・2010・米)で小道具助手を務めている。

 何ヶ所かでコピー防止のドットのようなものが見えたが、気のせいか。傷のようにも見えたが、いずれにしてもじゃま。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は前席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。ロビーでコーヒーを飲みながら待っていると、15分前くらいに開場のアナウンス。ここでアナウンスして、携帯の電源を切らせればいいのに。まあそれで切るヤツは少ないだろうから、各劇場には携帯が使えないようにジャミングを掛けた方がいいかもしれない。それでも懐中電灯代わりに使うヤツはいるだろうけど。

 20代くらいから中高年まで、割りと平均的にいた。男女比は、女性が1/4くらい。意外と若い女性が目立っていた。バイオレンス系の作品なのに、なぜだろう。最終的には253席に8〜8.5割りの入り。これはなかなかだ。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは…… アンジェリーナ・ジョリーとジョニー・デップが共演する上下マスク「ツーリスト」は、まだ内容が良くわからないが、ヒッチコック的な巻き込まれ物のアクションらしい。面白そう。

 タイの「チョコレート・ファイター」みたいな印象の日本の少女空手アクション「KG」はどうなんだろう。またノーCG、ノー・ワイヤーとか言ってるけど、わざわざ言う方がうさん臭い感じ。「チョコ……」を超えることなんて出来るのだろうか。うーむ……。

 フェイスブックを作った大学生を描いた上下マスクの「ソーシャル・ネットワーク」は、人間関係が壊れていくさまを描いているようで、ちょっと居心地悪い感じ。

 上下マスクの「ロビン・フッド」は新予告に。非常に面白そうで、絵もカッコいいが、リドリー・スコット監督なので、大軍が出てきても最後はきっと1対1の決闘になるんだろうなあ。違うか?

 上下マスクのSFバンパイア映画「デイブレイカー」はいかにもB級なテーマだが、イーサン・ホーク、ウィレム・デフォー、サム・ニールなどが出演していて、絵もカッコいい。とんでも映画か、拾い物か、微妙なところかも。


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