Daybreakers


2010年11月27日(土)「デイブレイカー」

DAYBREAKERS・2009・豪/米・1時間38分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(デジタル、Panavision Genesis)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(豪MA指定、米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://www.daybreakers-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

2019年、1羽のコウモリから始まった感染は地球全体におよび、ほとんどはバンパイアとなり、いまや人類はわずかに5%たらず。そのため人間の血液が不足し、食糧危機が叫ばれていた。そしてバンパイアがお互いの血を飲むとおぞましい化物になることが知られていた。血液を採取する人間飼育場“ブラッド・バンク”を運営するブロムリー・マークス製薬の人工血液研究者エドワード(イーサン・ホーク)は、社長のブロムリー(サム・ニール)からも人工血液の完成を急ぐよう言われていた。ある日、エドワードは人間のオードリー(クローディア・カーヴァン)らが運転する車と交通事故を起こし、駆けつけた警察からかくまってやる。すると、しばらくしてオードリーから連絡があり、人工血液以外に他の方法があると、郊外に呼び出される。そこに行くと、コーマック(ウィレム・デフォー)という男が現れ、かつて自分はバンパイアだったという。

73点

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 面白かった。バンパイアものは「トワイライト・サーガ」、「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)などたくさんあるが、それぞれ切口を変えて工夫しているが、本作ほどひねったのも珍しい。もちろんB級で、“トンでも”な部分はあるが、それをいかにもありそうに作るのが映画の良いところで、本作は成功しているのではないかと。

 バンパイアものはゾンビものと一緒で、受けるネタ、定番らしい。それだけに切り口は色々あり、伝染病的扱いにしたのは別段新しくない。その後、人間は「マトリックス」(The Matrix・1999・米/豪)の人間発電所のような集積所で血を抜き取られていたり、人間の方が少数民族(?)だったり、未来世界なので特殊なサンシェードのついた車で昼間に車で移動したり、バンパイア同志がお互いの血を吸うとモンスター化したり、そしてラストには……、となかなか工夫を凝らしている。

 それでいて、ニンニクは出てこないが、車のサイド・ミラーなんかには姿が映らなかったり、心臓に杭を打ち込まれたり、銃弾がヒットすると、ボワッと爆発するように燃え尽きたり(この辺は「ブレイド」(Blade・1998・米)か)、太陽光で燃え尽きたり(これは「ヴァンパイア/最後の聖戦」(Vampires・1998・米/日)か)、などはちゃんと押さえている。

 そして血まみれ。スプラッター感もたっぷり。生きたまま大勢に食い散らかされ、首がちぎれる。この辺はバンパイアというよりゾンビに近い。ゾンビのようにアホな動きをしないだけ。それにバンパイアは死んだことになっているし。ただ驚くべきは有名俳優が何人も出ていること。それだけでもただのバンパイアものでないことがわかる。

 人間のメインの武器はクロスボウ(ボウガン)やアーチェリーで、エルビスことコーマックは水平二連ショットガンの上にクロスボウを取り付けている。バンパイアの軍はMP5、Vz61スコーピオンなど。軍用車両はアメリカ軍のハンヴィっぽいものが3両ほど出ていた。アーマラーはアラン・ホウブレイとか言う人。読めなかった。

 オープニングの文字が微妙な動きを見せるタイトルをデザインしたのは、ナオミ・アンダリーニ。映画自体は残念なできだった「カタコンベ」(Catacombs・2007・米)や「ソウ2」(Saw II・2005・米/加)のタイトルを手掛けている。ホラー系が強いのかも。

 エドワードを演じたのはイーサン・ホーク。少年SFアドベンチャー「エクスプローラーズ」(Explorers・1985・米)で成功して以来、作品を良く選んで出演している気がするが、本作のようなB級トンデモロムービーを選んだところが凄い。つい最近シリアスでダークな「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)に出ていたばかり。タバコ吸いまくりはなぜ? 血が吸いたくなるのを紛らすため?

 コーマック役はウィレム・デフォー。この人は名優なのに、どちらかというと変な作品の変な役で良く出ている。ベトナム戦争映画「プラトーン」(Platoon・1986・英/米)は衝撃的だったが、それにも増して「処刑人」(The Boondock Saints・1999・加/米)の女装捜査官は驚愕でさえあった。「シャドウ・オブ・ヴァンパイア」(Shadow of the Vampire・2000・英/米/ルクセンブルグ)のバンパイアもイっちゃってるような感じが抜群だった。

 社長のブロムリーは、ほとんど悪役ばかりのサム・ニール。「オーメン/最後の闘争」(The Final Conflict・1981・英/米)は作品が酷くて損をしていたが、「ジュラシック・パーク」(Jurasic Park・1993・米)とか「アンドリューNDR114」(Bicentennial Man・1999・米/独)はイギリス人らしい紳士風の味が出た普通の役でいい味を出していたが、ホラーの「マウス・オブ・マッドネス」(In the Mouth of Madness・1995・米)やSFホラー「イベント・ホライゾン」(Event Horizon・1997・英/米)は真逆の超ヤバい役。まあ芸達者な人だ。

 人間のオードリーはクローディア・カーヴァン。どこかで見たなあと思ったら「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐」(Star Wars: Episode III - Revenge of the Sith・2005・米)に出ていた。

 エドワードの弟の軍人フランキーはマイケル・ドーマン。ニュージーランド出身で、オーストラリア映画に出ていたようだが、これまでに日本公開作はない模様。ただ新作が3本ほど控えいて、今後期待の新人かもしれない。

 監督・脚本はマイケル・スピエリッグとピーター・スピエリッグの双子の兄弟。ドイツ生まれで、車まで売って製作資金を調達した「アンデッド」(Undead・2003・豪)が高く評価されて(IMDbでは5.6点だが)本作でハリウッド・デビューすることになったらしい。なるほどゾンビはバンパイアと似ている。この後に作品にも期待したい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて30分前くらいに着。コーヒーを飲みながら待っていると、15分前くらいに入場開始。ほとんど中高年で、若い女性が2〜3人。客席にぶしつけな視線を投げ掛けてくる関係者は6人ほど。最終的には228席に3.5割りくらいの入り。B級ホラーだとこんなものか。

 半暗になって始まった予告編で気になったのは……DCコミックの映画化、上下マスクの「RED」は、引退した、超、危険人物の略だそうで、腕利きの殺し屋たちが再びチームを組んで戦うという話らしい。とにかく出演者が豪華で、面白そう。

 上下マスクの「トロン:レガシー」は新予告。何回見ても絵がカッコいい。そして何やら新しいメカも登場。すごいなあ。どうやったのかわからないが、ジェフ・ブリッジスが若いのにビックリ。


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