Amrlia


2010年11月28日(日)「アメリア 永遠の翼」

AMELIA・2009・米/加・1時間51分

日本語字幕:手書き風書体下、栗原とみ子/シネスコ・サイズ(レンズ、Panavision)/ドルビー・デジタル

(米PG指定)

公式サイト
http://amelia-movie.com/
(入ると画面極大化。音に注意。全国の劇場案内もあり)

1937年6月1日、愛する夫ジョージ・パットナム(リチャード・ギア)と抱擁をかわし、ナビゲーターのフレッド(クリストファー・エクルストン)と共にフロリダ州のマイアミを飛び立ち、初の女性パイロットによる世界一周飛行に出かけたアメリア・イヤハート(ヒラリー・スワンク)は、これが最後と決めた長い飛行中、初めてジョージと会ったときのことを思い出していた。

72点

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 実話だからか、ストーリー展開はちょっと弱いかもしれない。若干、盛り上がりに欠ける。当時、女性としては珍しかったパイロットになったのに、最初はお飾りで屈辱の太平洋横断を(あまり屈辱的に描かれていないが……)させられ、それから自分の力で単独大西洋横断飛行を実現し、いまなら普通なのかもしれないが不倫にも走り、しかし夫の元にもどり、世界一周飛行に挑む。盛り上がりは多分にあるはずが、どうにも、どのエピソードもいまひとつ淡泊な感じがする。どのくらい飛行が危険なものだったのか、そしてそれをどう克服して行ったのか、などはほぼ全く語られない。だから偉業のほどが理解しにくい。

 まだ関係者が存命で、アメリカの実在の歴史的ヒロインをおとしめるわけにはいかないという事情もあったのかもしれないが、ちょっと中途半端な人間ドラマになってしまったかも。それでも、アンハッピー・エンディングという結末はわかっているわけで、死で終わりながらそれを希望の物語にしてしまうあたりは、さすがハリウッドのプラス思考。最近暗いものが多い中、ほっとするというか、落ち込まずにすむ。

 サラウンドの音響効果、音質も素晴らしいし、絵がキレイ。夕陽や朝日、大自然、そして大恐慌時代とクラシック飛行機の数々。美しい。この辺は映画っぽい。

 単独横断飛行中、ほとんど「翼よ!あれば巴里の灯だ」(The Spirit of St. Louis・1957・米)と似たようなシチュエーションになるが、同作と似た印象になるのを避けたのか、あえてさらりと描いている。だから苦労が伝わってこない。もったいない。きっと女性としての人間像に焦点を絞りたいと思ったのだろうが、それはうまくいかなかったようだ。はたしてその選択は果たして正しかったのか。

 アメリア・イヤハートを演じたヒラリー・スワンクは自ら製作総指揮も担当。作りたかった映画だったのだろう。実話なのであまり演出を加えることはできないだろうが、もうちょっと作り方はあったような気はする。見ていないが「ボーイズ・ドント・クライ」(Boys Don't Cry・1999・米)でアカデミー主演女優賞を受賞し、イーストウッドの「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)でもアカデミー主演女優賞を受賞している。B級SFホラー「リーピング」(The Reaping・2007・米)にも出ているが、結構良かったりする。アカデミー賞をもらったからって偉そうにしていない感じが良い。

 夫ジョージ・パットナムを演じたリチャード・ギアは、別に演技がまずいわけではないものの、どの作品を見てもリチャード・ギアだ。それはそれで凄いことだ。つい最近出ていた「HACHI約束の犬」(Hachiko: A Dog's Story・2009・米/英)や「最後の初恋」(Nights in Rodanthe・2008・米/豪)も、本作もキャラクターは似た印象。暴力の群像劇「クロッシング」(Blooklyn's Finest・2009・米)もギアはギアだ。

 浮気相手となるジーン・ヴィダルはユアン・マクレガー。イギリス紳士っぽく、でしゃばらない感じがとても良かった。そんな感じがあるから浮気がドロドロしたものにならず、終わり方もすっきりしたのだろう。最近だと実話に基づくコメディ「ヤギと男と男と壁と」(The Men Who Stare at Goats・2009・米/英)も良かったが、犯罪ミステリー「彼が二度愛したS」(Deception・2008・米)も良かった。

 一般の日本人にはあまり知られていない、もう1人の女性飛行家、エリノア・スミスは説明が無く良くわからなかった。1911年生まれの女性飛行家で、最初の女性テスト・パイロットらしい。同時代の人だから、ライバルということで登場したのだろう。演じていたのはミア・ワシコウスカ。感じが全く違うが「アリス・イン・ワンダーランド」(Alice in Wonderland・2010・米)でアリスを演じていた人だ。戦争映画「ディファイアンス」(Defiance・2008・米)でも目立っていた。

 ルーズベルト大統領のファースト・レディを演じていたのはチェリー・ジョーンズ。TVドラマ「24」でアメリカ大統領を演じていた人。ここではファースト・レディか。

 アル中気味のナビゲーター、フレッドはクリストファー・エクルストン。悪役の多い人で、「G.I.ジョー」(G.I. Joe: The Rise of Cobra・2009・米/チェコ)や「光の六つの印」(The Seeker: The Dark is Rising・2007・米)で悪を演じていた。

 2冊の本を原作に使っているようで、1冊はスーザン・バトラーの"East To The Dawn: The Life of Amelia Earhart"。もう1冊はメアリー・S・ラヴェルの"The Sound of Wings: The Life of Amelia Earhart"。

 脚本はロン・バスとアンナ・ハミルトン・フェランの2人。ロン・バスは「レインマン」(Rain Man・1988・米)、「愛がこわれるとき」(Sleeping with the Enemy・1991・米)、「グッドナイト・ムーン」(Stepmom・1998・米)、「ヒマラヤ杉に降る雪」(Snow Falling on Cedars・1999・米)などを手掛けた大ベテラン。アンナ・ハミルトン・フェランは見ていなが「マスク」(Mask・1984・米)、ゴリラ映画「愛は霧のかなたに」(Gorillas in the Mist: The Story of Dian Fossey・1988・米)や「17歳のカルテ」(Girl, Interrupred・1999・独/米)など評価の高い作品を手掛けている。ただ、本作の前がちょっと開いているのが気になるところ。このスゴイ2人が組んだのに……。

 監督はインド生まれの女性監督、ミーラ・ナーイル。話題になった「サラーム・ボンベイ」(Salaam Bombay!・1988・英/印/仏)や、「カーマ・スートラ/愛の教科書」(Kama Sutra: A Tale of Love・1996・英/印ほか)などを撮った人。どれも見ていないので、なぜこの人を本作の監督に選んだのか良くわからない。

 本作ではタバコが気になったが、そういう時代だったのか。それと、コピー防止のドットらしいのが所々にあって気になった。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、50分ほど前に着いたら、5人ほどがエレベーター前に並んでいた。当日券と交換して並ぶ。25分前くらいにエレベーターが動き出し、場内へ。ほぼ中高年ばかりで、20人くらいのうち女性は5〜6人。10分前くらいから半暗になり案内が上映されたがババアがケータイを使ってまぶしいし気になるし。最終的に224席に4割りくらいの入り。女性は1/3ほど。まあ、こんなもんか。

 暗くなって始まった予告編で気になったのは……なかなかタイトルが出ずいらいらした「きみがくれた未来」は弟を失った青年と、ヨットで世界一周を目指す女性の感動物語らしい。主演はザック・エフロン。相手役の女優さんがキレイ。気になる。でも見たら泣きそう。

 上下マスクの「ノルウェーの森」は内容のあるバージョン。予想どおり暗い感じ。うーん。

 上下マスクの「GAMERゲーマー」はなかなか面白そう。シューティング・ゲームを生身の人間、死刑囚を使ってやるというものらしい。

 アネット・ベニング(歳をとったなあ)とナオミ・ワッツの上下マスク「愛する人」は37年間離れていた母と娘の物語らしい。「バベル」の監督だから、かなり重いだろう。

 ストンプのドルビー・デジタルのデモの後、本編の上映。


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