Space Battleship Yamato


2010年12月4日(土)「SPACE BATTLESHIPヤマト」

SPACE BATTLESHIP YAMATO・2010・TBSテレビ/セディックインターナショナル/東宝/ROBOT/ジェイ・ドリーム/博報堂DYメディアパートナーズ/小学館/毎日放送/中部日本放送/白組/阿部秀司事務所/TBSラジオ&コミュニケーションズ/TCエンタテインメント/TOKYO FM/東北新社/RKB毎日放送/北海道放送/JNN全28局・2時間18分(IMDbでは131分)

シネスコ・サイズ(マスク、Super 35)/ドルビー・デジタル

(1部字幕上映もあり)

公式サイト
http://yamato-movie.net/
(全国の劇場案内もあり)

2199年、火星域付近でのガミラス艦隊と地球艦隊の戦闘で人類は大敗を喫し、古代守艦長(堤真一)の「ゆきかぜ」が盾となり沖田十三艦長(山崎努)旗艦はかろうじて地球に帰還する。5年前から始まったガミラスの遊星爆弾攻撃で地球は放射能で汚染され、人類は地下へと逃れ暮らしていた。地表にあるレアメタルの採取で生計を立てている古代守の弟、古代進(木村拓哉)は、ある日、レアメタル採取中に墜落した宇宙線から落下したカプセルを発見する。それは放射線を除去する能力を持ち、内部に波動エンジンの設計図と惑星イスカンダルの位置を示す座標が収められていた。滅亡を目前にした人類は、最後の希望として残された宇宙戦艦ヤマトで、放射線除去装置を手に入れるためイスカンダルに向かうため、乗組員を公募する。かつて地球防衛軍でエースとして鳴らした古代進も志願すると、戦闘班の班長として採用される。そして、人類はもって数カ月というところで、ヤマトは出発する。

73点

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 日本映画としては驚くほどレベルの高いSFX。そしてデザイン性の高さ。カッコ良いし、リアル。日本もやればここまでできるんだ。ほとんど印象としては「スター・ウォーズ」シリーズのよう。音も立体的で良く回る。プロデューサーは3D映画にしたかったのではないだろうか。そうならなかったことを個人的には感謝したいが。

 基本的には、皆が良く知っている話を、実に巧妙に実写映画として不自然さがでないように、ちゃんとひねって、驚きも入れてしっかりと良くまとめられている。これは凄いことだと思う。ただビジュアルや音響の良さに対して、ストーリーは良くできているのだが、どうにも説明不足の部分があるように感じられた。というか、もともとあったのに、上映時間が長くなってしまったので、無理に切ってしまったような感じ。

 まず、地球規模の話なのに日本人しか出てこず、日本中心に話が展開する。冒頭ではもう宇宙艦隊はないようなことをいっているのに、いきなりヤマトがジャーンと登場するし……。また、古代進は艦に乗った理由を「ゆきかぜを見捨てた艦長の正体を見極めるめ」とか言っているのに、後半では全くそれに触れないまま終る。長い話だし、やっぱり138分あっても足りなかったということなんだろうか。

 だからだろう、キャラクターの人間関係がどれも希薄な印象。リアルにしているわりには、女性に変えた艦医の佐度先生が一升瓶をいつも抱えているというのは、どうにも説得力がない。古代進と森雪の関係も突然深くなる感じがするし、親友らしい島大介と古代進の関係も伝わってこない。沖田艦長のヒゲも不自然……

 まあ、オール・スターのようなキャスティング。堤真一なんか冒頭にちょっとカメオ的に出るだけ。話は木村拓哉演じる古代進、黒木メイサ演じる森雪、山崎努演じる沖田十三の3人を中心に展開する。ラストで柳葉敏郎演じる技師長の真田志郎と、池内博之演じる空間騎兵隊隊長の斉藤始がちょっと活躍するくらい。不思議な存在感があったのは航海班の相原を演じたマイコ。CMによく出ている人で、映画にも何本か出ているが、コンパクトな作品が多い感じ。

 1番の違和感は一升瓶を持った高島礼子演じる佐度先生だろう。猫は良いのだが、どうにも一升瓶に違和感があった。原作漫画の味を出したかったのだろうが、ウイスキーをスキットルに入れているとかなら似合っていたかも。漫画は良くても実写になると合わない。不自然。

 デスラーの声はオリジナルのTV版アニメ(1974〜1975年)でもデスラーの声を当てた伊武雅刀に似ていた気がするが、どうだったのだろう。ナレーションはTV版の有名な「無限に広がる大宇宙……」がちゃんと使われていて、声もオリジナル版の木村幌とそれほど違和感が無かった。スターシャ(平井道子)の声は誰がやっていたのか、これも自然だった。

 全26話を138分にまとめた脚本は、佐藤嗣麻子。ロンドン国際フィルム・スクールを卒業し、日本離れした感じが面白かった吸血鬼映画「ヴァージニア」(Tale of Vampire・1992・英)で監督・脚本デビュー。帰国してから撮った「エコエコアザラクWizard of Darkness」(Wizard of Darkness・日・1995)も良かったし、最近撮った「K-20怪人二十面相・伝」(2008・日)も面白かった。「BALLAD名もなき恋の歌」(2009・日)で脚本の協力をしているなあと思ったら、山崎貴監督の奥さんだったとは。「ゴーストもういちど抱きしめたい」(2010・日)の脚本も担当。

 監督は山崎貴。もともとはスペシャル・エフェクトを手掛けていて、「エコエコアザラクWizard of Darkness」でスペシャル・エフェクトを担当。残心で面白かったSFアクション「ジュブナイル」(2000・日)で監督デビュー。SFアクション「Returnerリターナー」(2002・日)、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005・日)とヒットを飛ばす。BALLAD名もなき恋の歌」はどうかと思うが……。

 主題歌は、何とスティーヴン・タイラーの書き下ろしの「LOVE LIVES」。これはビックリ。流用ではなくオリジナルとは。作品の世界観に感銘を受けたらしい。いい曲だ。iTunesストアーで売ってるかな。

 公開4日目の2回目、そのスクリーンでは最初の回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて30分前くらいにコーヒーを買って到着。待っていると15分前くらいに開場。下は幼稚園生くらいから、うえは中高年まで幅広い。メインは中高年。アニメを見ていた世代だろうか。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性が多い感じ。女性が多いのはキムタク人気か。最終的に287席の8.5割りくらいが埋まった。さすが話題作。

 CMに続いて場内が半暗になって始まった予告編で気になったのは……実写版「あしたのジョー」は新予告に。やっと内容寄りのものになった。おもしろそうだが、香川照之の丹下段平のメイクは漫画っぽくしすぎのような気も。

 暗くなって本編が始まっても携帯を点けているヤツが。あんなに明るく光っていることを本人は気付いていないのだろう。迷惑。ロビーで電源を切らせた方が良いのでは。やるヤツは少ないだろうけど。思い切って場内は電波が一切入らないようにするか。でも時計が割りや懐中電灯代わりに使っているヤツもいるからなあ。


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