Robin Hood


2010年12月11日(土)「ロビン・フッド」

ROBIN HOOD・2010・米/英・2時間20分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、with Panavision(IMDb ではArri))/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、英12A指定)

公式サイト
http://robinhood-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場案内もあり)

1199年、イングランドの獅子心王リチャード(ダニー・ヒューストン)は、フランスのフィリップ2世(ジョナサン・ザッカイ)と争い、シャールース城を攻撃中、敵の矢を受け戦死する。それを知った弓射手のロビン・フッド(ラッセル・クロウ)と仲間のウィル・スカーレット(スコット・グライムズ)、リトル・ジョン(ケヴィン・デュランド)、アラン・ア・デイル(アラン・ドイル)は、金がもらえなくなると判断し、すぐにイングランドへ戻ることにする。ところが帰路の途中、リチャード王の王冠を運ぶ部隊が、フィリップ王のスパイであるイングランド軍の重臣ゴドフリー(マーク・ストロング)の部隊に襲撃されて全滅したところに遭遇し、敵を追い払い王冠を取り返す。重傷を負った王冠輸送部隊の指揮官のロバート・ロクスリー卿(ダグラス・ホッジ)は、父から無断で持ち出した剣を返してくれとロビンに頼んで息絶える。ロビンとその仲間たちは騎士に扮してイングランドに戻り、王冠を届けると解散し、ロビンは1人、ロクスリーとの約束を果たすため、ノッティンガムへ向かう。

75点

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 面白かった。あまり理屈っぽくならず、単純に楽しめる冒険活劇。それも軽すぎないノリでなかなか楽しませてくれる。ただ、出演者が芸達者ぞろいで、絵も重厚なので、歴史劇を見ているような重さのようなものはある。たぶんそれがおちゃらけっぽくならないようにしているのだろう。イギリス(イングランド)的には国威発揚的な作品でもあるだろう。「イングランドのために、自由のために」こう叫んでフランスの侵略から国を守ったと。そしても無能な圧制者にくじけなかったと。

 「八犬伝」というか「水滸伝」的物語。勇者たちが集まり、さらに仲間を集め、力を合わせて巨悪に立ち向かう。この面白さ。一兵士がやがてノッティンガムの領主となり、美しい妻をめとり、人々を悪政から救う。これは痛快だ。

 たぶんいままでのリドリー・スコット作品なら、どんなに大軍が出てこようが、最後は1対1の対決で決着をつけるところ、本作ではちゃんと大軍同士の戦いで閉めて見せる。ここも好印象。あれだけの大軍を見せておいて決戦がなかったら、怒っちゃうもんなあ。

 ただ、どこか完全にのめり込めないというか、ノリ切れなかった部分があったのも確か。ハッキリ何かはわからないが、今ひとつも何か足りない感じ。1つには、物語が壮大すぎて、ディテールというか、小さなエピソードが描き切れなかったからかもしれない。リトル・ジョンが仲間に加わるくだりはあるが、他の2人は描かれていない。仲間に加わるタック修道士のエピソードはあるが、ノッティンガム代官(シェリフっていうらしい!)とロビン・フッドの関係もほとんど描かれていない。

 これは続編か、この後の物語を語るTV版が作られそうな、感じも。これから話が面白くなりそうという。そのフリ的な部分もあったので物足りなかったのかも。と言いつつ、冒頭の攻城戦も凄いスケールだし、フランス軍との闘いも壮大だが。この辺は正に大きなスクリーンで見るべきスペクタクル。雨のような矢、石落とし、煮え油、火矢、油袋、クロスボウ、破城槌……など。

 悪代官(シェリフと呼んでいた)の裏をかき、ノッティンガムの人々を助けるくだりは痛快。そしてマリアンと信頼関係を築いて行く感じも、笑いを入れながらなかなか説得力があり面白かった。そういえば、ショーン・コネリーがロビン・フッドを、レディ・マリアンをオードリー・ヘップバーンが演じた「ロビンとマリアン」(Robin and Marian・1976・米)もあったっけ。

 ロビン・ロングストライドことロビン・フッドを演じたのはニュージーランド生まれで、オーストラリア出身のラッセル・クロウ。西部劇の「クイック&デッド」(The Quick and the Dead・1995・米/日)でハリウッドへ進出し、「NO WAY BACK/逃走遊戯」(No Way Back・1995・米)では豊川悦司と共演している。だいたい出演作はどれも面白いが、「グラディエーター」(Gladiator・2000・米/英)で初めてリドリー・スコット監督と組んでいる。その後、世界的なヒット小説を映画化した「プロヴァンスの贈りもの」(A Good Year・2006・米/英)でも組み、実録犯罪者ストーリー「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)、リアルなスパイの世界を描いた「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米)と、ほぼ毎年一緒に仕事をしている。本作では初の劇映画プロデューサーも兼務。ボク的には「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)と「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)いうアクションものが良かったなあ。結構、日本とつながりがあるのに、売れてから日本に来たイメージが薄いような気も……。オスカー主演男優賞ノミネート2回、受賞1回。

 マリアン・ロクスリーを演じたのはオーストラリア出身のケイト・ブランシェット。「エリザベス」(Elizabeth・1998・英)でエリザベスI世を演じて世界的なスターになった人。好きな男のためにスパイになる「シャーロッド・グレイ」(Charlotte Gray・2001・英/豪/独)も衝撃的だった。最近では若返っていく男の一生を描いた「ベンジャミン・バトン数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)が良かった。オスカー主演女優賞ノミネート2回、助演女優賞ノミネート2回、助演女優賞受賞1回。

 リチャード1世が遠征中、摂政に任命されたウィリアム・マーシャル卿を演じたのはウィリアム・ハート。ショッキングSF「アルタード・ステーツ/未知への挑戦」(Altered States・1980・米)で映画デビュー。まあ、話題作に良く出ている。2000年前後はパッとしない感じになったが、最近また活躍している。ショッキングでは「蜘蛛女のキス」(Kiss of the Spider Woman・1985・ブラジル/米)もすごかった。日本映画のリメイク「イエロー・ハンカチーフ」(The Yellow Handkerchief・2008・米)は酷かったが、時間逆転ドラマ「バンテージ・ポイント」(Vantage Point・2008・米)は狙撃される大統領役で、それほど重要ではなかったが作品は面白かった。ボク的にはSFファンタジー「A.I.」(A.I.・2001・米)が感動的だった。オスカー主演男優賞ノミネート2回、受賞1回、助演男優賞ノミネート1回。

 ノッティンガムの領主、ロクスリー卿を演じたのはマックス・フォン・シドー。スウェーデン出身で、1929年生まれと言うことだが、ボクが最初に見た時からおじいちゃんぽかった。それは大ホラー映画「エクソシスト」(The Exocist・1973・米)だが、ほかにスパイ映画「コンドル」(Three Days os the Condor・1975・米)の殺し屋も良かったし、第二次大戦秘話「ブラス・ターゲット」(Brass Target・1978・米)も興味深かった。最近は「シャッターアイランド」(Shutter Island・2009・米)に出ていた。オスカー主演男優賞ノミネート1回。

 フランスのスパイ、ゴドフリーはマーク・ストロング。悪役が多い人で、ガイ・リッチー監督作品によく出ている。「リボルバー」(Revolver・2005・仏/英)、「ロックンローラ」(Rocknrolla・2008・英)、「シャーロック・ホームズ」(Sherlock Holmes・2009・米/独)など。

 リトル・ジョンはケヴィン・デュランド。「3時10分、決断のとき」で町の小悪党を演じ、ラッセル・クロウと共演。「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」(Smokin' Aces・2006・英/仏/米)の三兄弟や「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(XMen Origins: Wolverine・2009・米)にもブロブ役で出ていて、最近作は「レギオン」(Legion・2010・米)の天使ガブリエル。だいたい悪役が多い。本作のような役は珍しい。

 原案はブライアン・ヘルゲラント、イーサン・リーフ、サイラス・ヴォリスの3人。ブライアン・ヘルゲラントは脚本も手掛けており、イーサン・リーフとサイラス・ヴォリスはコンビでチョウ・ユンファのちょっと残念な「バレット・モンク」(Bulletproof Monk・2003・米)を書いていた人。

 脚本はブライアン・ヘルゲラント。古くはレニー・ハーリン監督が飛躍するきっかけとなったホラー「エルム街の悪夢4/ザ・ドリームマスター最後の反撃」(A Nightmare on Elm Street Part 4: The Dream Master・1988・米)の脚本、シルヴェスター・スタローンとアントニオ・バンデラスが共演した「暗殺者」(Assassins・1995・)、アカデミー脚本賞に輝いた「L.A.コンフィデンシャル」(L.A. Confi・1997・米)、メル・ギブソンとジュリア・ロバーツが共演した「陰謀のセオリー」(Conspiracy Theory・1997・米)とか、このころ書ききれないほど多くの話題作が並ぶ。さらに監督もやっていて、傑作騎士物語、ヒース・レジャーの「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Story・2001・米)は良かった。クリント・イーストウッド監督の衝撃作「ミスティック・リバー」(Mystic River・2003・米/豪)や、思わず原作を買って読んでしまった「マイ・ボディガード」(Man on Fire・2004・米/英)もこの人の脚本。ただし「ダレン・シャン」(Cirque du Freak: The Vampire's Assistant・2009・米)や「サブウェイ123激突」(The Taking of Pelham 123・2009・米/英)のような残念な作品もあるが。

 監督は名匠リドリー・スコット。劇場映画デビュー作の「デュエリスト/決闘者」(The Duellists・1977・英)から1対1の決闘にこだわっていた監督。でも本作ではそれをしなかったことに驚いた。「エイリアン」(Alien・1979・米/英)、「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)といったもはやSFクラシックとなった名作、日本を舞台にし高倉健や松田優作が出た「ブラック・レイン」(B;ack Rain・1989・米)も監督している。そしてしばらく間をおいて、「グラディエーター」で再び注目を浴びると「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)も大ヒット。最近で良かったのは、レオナルド・ディカプリオとラッセル・クロウの「ワールド・オブ・ライズ」だろうか。とにかく絵作りがうまいという印象。それにしても、やっぱりリドリー・スコットが撮ると言えば、これだけのスターが揃うんだ。すごいなあ。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて30分前くらいに到着。15分前くらいに開場となり場内へ。ほとんど中年男性で、やや若い男性も。女性は1/4〜1/3くらい。高齢者が多い印象。やっぱりロビン・フッドを知っているのは、ということか。最終的には157席に9割りくらいの入り。

 ほぼ暗くなって始まった予告編で気になったのは……上下マスクの「グリーン・ホーネット」は新予告に。だんだん内容がわかってきた。ちょっと楽しみ。

 上下マスク「ソーシャル・ネットワーク」も新予告に。今の話題だし、最先端なのに、どうもドロドロした人間ドラマっぽい感じ。

 スクリーンの上下が狭まってシネスコ・サイズになってから、ジェームズ・キャメロン(プロデュースらしい)の実話の映画化で3Dだという「サンクタム」は絵なし。5月公開とか。


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