The Green Hornet


2010年1月22日(土)「グリーン・ホーネット」

THE GREEN HORNET・2010・米・1時間59分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(in Panavision/IMDbではIMAX 3D=1.44、その他=2.35、デジタル、Red One)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)(字幕版、吹替版/2D版、3D版、IMAX 3D版もあり)

公式サイト
http://www.greenhornet.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

LAのデイリー・センチネル紙の社主、ジェームズ・リード(トム・ウィルキンソン)の息子、ブリット・リード(セス・ローゲン)は幼い頃から無闇に厳しく育てられ、すっかりひねくれた大人に成長し、ほとんど毎日どんちゃん騒ぎのパーティーに明け暮れていた。しかしある日、父が蜂に刺されて死んだことから、会社を引き継ぐことになり、新聞の仕事は父の右腕だったマイク(エドワード・ジェームズ・オネモス)にすべてを任せる。そして父の車の整備士だったケイトー(ジェイ・チョウ)を一旦はクビにするが、ラテを入れる名人だった事を知り呼び戻す。そして、ケイトーの口から父の実像はイヤなヤツだったという話を聞き出し意気投合。二人で正義の味方をやろうと盛り上がり、グリーン・ホーネットと名乗り悪をかたって悪に近づき悪をやっつけるという作戦を立てる。そのころ、LAは敵対するボスを殺すという過激な方法で頂点に立ったチュドノフスキー(クリストフ・ヴァルツ)が裏の世界を牛耳っていた。そしてブリット・リードの幼なじみ、スカンロン(デヴィッド・ハーバー)は最近検事になり、悪との徹底抗戦を宣言していた。

71点

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 うーん、コメディ・ベースの冒険活劇だが、コメディを意識するあまり肝心のストーリーが希薄となり、キャラクターも魅力に欠け、楽しめない作品になってしまった感じ。せいぜいクスリか、苦笑くらいしかできない。これは国民性の違いもあるのかもしれないが。まじめなヤツがドジやバカをやるのではなく、どうしようもないイヤなヤツがバカをやるので、笑えない。むしろ哀れになる。製作者は「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)の爪の垢でも煎じて飲むべきでは。なぜ3Dで作ったのかも良くわからなかった。リアルなCGのほかに見どころがないからか。

 「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Busterds・2009・米/独)の冷血のドイツ軍将校、ユダヤ・ハンターことハンス・ランダ大佐を演じたクリスト・ヴァルツまで敵役に招いて、しかもかなり怖くなるであろうシーンも用意しておきながら、ちっとも怖くない。かといってお笑いキャラでもなく、ちっともらしさが出ていないというていたらく。

 せっかくキャメロン・ディアスを紅一点に置きながら、まったく誰でも良いような役柄で、見どころもなし。結局、主演のセス・ローゲンだけが、おバカ役なのに目立っているという構成。アメリカ人はこういうおバカキャラで笑えるのだろうか。これだけお金を掛けて、こういうものを作るとは。一番面白かったのは(また一番3Dの効果があったのは)、中国語風のラップのような歌に乗せて流れるエンディング・クレジットのアニメーション。折れ曲がったクレジットも良かった。

 セス・ローゲンは主演、脚本、製作総指揮を担当。この映画の重要なパートをほとんど自分でやっている。ということは、この映画のできはかなりの部分彼の責任だろう。ちょっと前、ジェイク・ギレンホールの奇妙なSF「ドニー・ダーコ」(Donnie Darko・2001・米)に小さな役で出ていたようだが、以降はコメディがメインのようで、「40歳の童貞男」(The 40 Years Old Virgin・2005・米)や「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」(Knocked Up・2007・米)に出演。製作総指揮もやるが、アニメの声の出演も多い。どれもパッとしない感じだがアメリカでのウケは良いようで、IMDbでも7点以上の高評価。それで本作につながったのか。ただ、脚本も手掛けた作品はすべて日本劇場未公開の模様。その意味では本作が初公開。うーむ。

 相棒のケイトー(カトー)はジェイ・チョウ。コミック原作の「頭文字[イニシャル]DTHE MOVIE」(Initial D・2005・香/日)で藤原拓海を演じた人。血みどろの愛憎劇「王家の紋章」(満城尽帯黄金甲・2007・香/中)で王家の次男を演じていた。最近は脚本や監督もやるらしい。映画の中では上海出身の日本人だったが、知っていてのギャグなのか。使っていた銃はUSPコンパクト。

 敵役はクリスト・ヴァルツ。「イングロリアス・バスターズ」の怖いドイツ軍将校役で注目を浴びた人。まったく本作では怖さが出ていなかった。この人を使っていながら。銃はスライドが2本あるような同時に2発撃てる銃。よくみると2本のスライドのダミーの間に本物のスライドがあった。どうも中身はデザート・イーグルのよう。

 新聞社のマイクはエドワード・ジェームズ・オネモス。名作SF「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)で折り紙を折るガフを演じていた人。TVの刑事アクション「特捜刑事マイアミ・バイス」(Miami Vice・1984〜1989・米)では主任のマーティン・キャステロを演じていた。最近はダークなSF「バトルスター・ギャラクティカ」(Battlestar Galactica・2003〜2009・米)で艦長のウィリアム・アダマを演じている。

 カメオ出演ほどではないが、ちょいと出演で……冒頭のチュドノフスキーにやられるギャングのボス役で「スパイダーマン」(Spider-Man・2002・米)シリーズでピーター・パーカーの友人を演じたジェームズ・フランコ。そして麻薬を製造しているパンクというかジャンキーに、私生活の地で行くような「ターミネーター2」(Terminator 2: Judgement Day・1991・米/仏)のエドワード・ファーロング。

 セス・ローゲンのほかの脚本家は、エヴァン・ゴールドバーグ。「無ケーカクの命中男/ノックトアップ」以外は日本公開作品はないよう。こういう脚本は当然かも。

 監督はフランス生まれのミッシェル・ゴンドリー。サル系の奇妙なラブ・コメディ「ヒューマンネイチュア」(Human Nature・2001・仏/米)、うんざり系の暗いラブ・ストーリー「エターナル・サンシャイン」(Eternal Sunshine of the Spotless Mind・2004・米)、路上ライブのドキュメンタリー「ブロック・パーティー」(Block Party・2006・米)、レンタル・ビデオ店コメディ「僕らの未来へ逆回転」(Be Kind Rewind・2008・英/米)の監督。本作のような作品が向いているとは思えないのだが……。

 ほかに登場する銃器は、LAPDの警官がグロック、SWATがM4A1。テストではミニガンが使われていたようだが、ブラック・ビューティに搭載されていたのはブローニングM1919。ギャングたちはAKMS、イングラム、そしてたぶんスクリーン初登場のヴェクターSMG(撃っていなかったようだが)などを使用。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて30分前くらいに到着。テーブルにPCを広げている人が多くいて、座るのに苦労した。あれは取材者たちではないのか。お金を払っている客が座れないというのはどうなんだろう。取材者たちの方が優先?

 15分前くらいに開場になって、場内へ。客層は若い人から中高年まで広くいて、男女比は8対2くらいで男性の方が多かった。最終的には301席に4割りくらいの入り。関係者らしいグループは4〜5人。

 予告が始まってから入って来ても、まず座ると携帯を取り出してメールのチェック。入る前に済ませてこい。近くでやられるとまぶしい。入場前に全員に電源を切らせてはどうだろう。終わると同時に、まだエンドクレジットが流れているのに席でメール・チェックするヤツもいるし。

 気になった予告編は……松本人志がまた映画を撮るそうで、時代劇「さや侍」がそれ。刀を持たない武士の話らしい。なぜこの人は本職でもないのにこんなに映画を次々と撮れるのだろう。

 スクリーンが左右に広がってから、UFOを強調した「世界侵略:ロサンゼルス決戦」の予告。スクリーンが大きいと戦闘シーンはすごい迫力。

 3Dめがねを掛けてからの予告は「パイレーツ・オブ・カリビアン―生命の泉―」。これは3Dが適している感じ。すでに見たパターンの予告だったが、新鮮に思えた。


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