Red


2010年1月30日(日)「RED/レッド」

RED・2010・米・1時間51分

日本語字幕:手書き書体下、菊地浩司/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arricam)/ドルビー・デジタル、dts

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.movies.co.jp/red/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

フランク・モーゼス(ブルース・ウィリス)は引退した元CIAの極秘任務専門エージェント。毎日トレーニングは欠かさないが、今は年金で暮らしており、年金の小切手が届いていないと言ってはコールセンターに電話をかけ、担当のサラ(メアリー=ルイーズ・パーカー)と話をするのが唯一の楽しみだった。そして今度カンザスへ旅行するから会おうという約束を取り付ける。ところが、突然、特殊部隊の男達が突入してきて、家が蜂の巣にされる。その男達をあっさりと片づけると、フランクはカンザスに向かい、サラをつれて逃げようとすが、こちらにもすぐに追手がかかる。実は、CIAの作戦本部長シンシンア(レベッカ・ピジョン)から、腕利きのエージェント、クーパー(カール・アーバン)に抹殺指令が出されていたのだ。フランクは引退したかつての仲間の許を訪ね、力を貸して欲しいと頼むが……。

75点

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 おもしろい。笑った。派手なアクションと適度なギャグのバランスが絶妙。つまり漫画的な設定なのだが、それを名だたる名優達が演じることで、素晴らしい説得力が生まれ、重厚感さえ感じさせる。ラストは、泣かせる映画ではないのに、感動的。しかもスッキリ、さっぱり、爽快、痛快。中年男と若い女のラブ・ロマンスまで盛り込まれていて、デート・ムービーには最適ではないだろうか。きっとこれを見た後は、カフェでも会話がはずむことだろう。

 命をかけた真剣なアクションの中に巧妙に仕込まれたギャグは、怖い時に笑ってしまう現象と似て、より笑いを引き立てる。苦笑ではなく、ちゃんと笑えるからすごい。客席からも、爆笑ではないが、何回も笑い声が起こっていた。

 原作はアメリカのDCコミックで、REDとはリタイアード(引退した)、エクストリームリー(超)、デンジャラス(危険人物)の略らしい。だから対決の構造は、老人(ベテラン)vs若者(若造)というわかりやすいもの。当然、なめてかかる若造がやられて、老人が勝つ。ここが痛快。もちろん良い方にも犠牲者は出るわけで、そこがまたリアリティとなっている。

 主役のフランク・モーゼスを演じたのはブルース・ウィリス。もう引退したベテランを演じる歳になってしまった。といっても1955年生まれだからまだ56歳。まあ工作員のような現場仕事はできないと。だからこそ若い女性とのロマンスも成立するわけで、さすがに65歳とかを過ぎていたらこれはむずかしいだろう。TVの「こちらブルームーン探偵社」(1985〜1989)で注目され、「ダイ・ハード」(Die Hard・1988・米)でブレイク。以来ずっとトップを走り続けている。元から髪は短かったが、今はすっかりスキン・ヘッドが定着した。使っていた銃は1911オートのカスタム。マガジン・チェンジもやって見せる。

 恋人のサラ役はメアリー=ルイーズ・パーカー。若いといっても1964年生まれだからブルース・ウィリスと9歳しか違わない。若く見えるということか。古くは名作「フライド・グリーン・トマト」(Fried Green Tomatoes・1991・米)で、50年前の店を経営する相棒を演じていた。TVにも半分くらい出ながら、最近では史実に基づいたダークな西部劇「ジェシー・ジェイムズの暗殺」(The Assassination of Jesse James by the Coward Robert Ford・2007・米/加)でジェシー・ジェイムズの妻を演じていた。「スパイダー・ウィックの謎」(The Spiderwick Chronicles・2008・)ではフレディ・ハイモアのお母さん役。今回はまったくイメージが違う。独身のそこそこ若い女性、ちょいと行き遅れたくらいに見えるもんなあ。もちろん美女。

 フランクが最初に助けを求める元上司、老人ホームに入っているジョーは名優モーガン・フリーマン。ホントこの人はうまい。本作でも雰囲気満点。そんなに出ていないのにしっかりと印象に残る。日本で注目されたのは南北戦争映画「グローリー」(Glory・1989・米)あたりだろうか。「ドライビングMissデイジー」(Driving Miss Daisy・1989・米)で一気にメジャーに。たまにハズレもあるが、この人が出た作品はだいたい面白い。この前に出ていたのは、自身が製作総指揮を務めた「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)。

 武器の専門家で、洗脳テストでちょっとおかしくなったというマーヴィンはジョン・マルコヴィッチ。いろんな役を演じるが、ちょっと悪役が多い感じ。古くはショッキングな戦争映画「キリング・フィールド」(The Killing Fields・1984・英)でアメリカ人カメラマンを演じていた。最近公開された「バーン・アフター・リーディング」(Burn After Reading・2008・米/英/仏)でもちょっとヘンな役を演じていた。使っていた武器はクロスボウ、S&W M460の5インチ、MP9。持つだけだが、カール・グスタフSMGを誉めまくっていた。

 女性の殺し屋、ヴィクトリアはヘレン・ミレン。66歳とは思えない若さ。エリザベス女王を演じた「クィーン」(The Qeen・2006・英/仏/伊)でアカデミー主演女優賞を受賞。コメディやホラー、アクションなどいろいろ演じている。「サイレンサー」(Shadowboxer・2005・米)では末期ガンの女殺し屋を好演。「鬼教師ミセス・ティングル」(Teaching Mrs. Tingle・1999・米)の鬼教師はなかなか怖かった。使っていた銃はMP5、M16A4スナイパー・カスタム、ブローニングM2重機関銃など。

 CIAの現役工作員のウィリアム・クーパーはカール・アーバン。面白かったSF「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)でドクター・マッコイを演じていた人。人気アクション・シリーズ2作目「ボーン・スプレマシー」(The Bourne Supremacy・2004・米/独)ではボーンの敵を演じた。ホラーの「ゴーストシップ」(Ghost Ship・2002・米/豪)にも出ている。やや悪役が多い感じ。使っていた銃はP220スポーツ。

 その女性の上司シンシア・ウィルクスはレベッカ・ピジョン。この人も美人で、ジーン・ハックマンの犯罪ドラマ「ザ・プロフェッショナル」(Heist・2001・加/米)に出ていた。その前だと、同じ監督のサスペンス「スパニッシュ・プリズナー」(The Spanish Prisoner・1997・米)に出ている。最近はTVが多かったようだが、それも同じデヴィッド・マメットが監督か製作総指揮をやったものばかり……何かあるのかと思ったら奥さんではないか。使っていた銃はP228。

 ソ連時代のスパイ、イヴァン・シモノフはブライアン・コックス。「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)と「ボーン・スプレマシー」でCIAの作戦立案者を演じていた。悪役が多く、「ロング・キス・グッドナイト」(The Long Kiss Goodnight・1996・米)でも同じ様な役だった。ジャパニーズ・ホラー「ザ・リング」(The Ring・2002・米/日)でもそんな秘密を知る男の役。本作では良いところを持っていく。

 武器商人アレクサンダーはリチャード・ドレイファス。最近あまり見なかった気がするが、名作「JAWS/ジョーズ」(Jaws・1975・米)や傑作「未知との遭遇」(Close Encounter of the Third Kind・1977・米)で人気を得た人。最近はTVが増えていて、映画はリメイクの「ポセイドン」(Poseidon・2006・米)が最後か。

 CIAの記録保管室にいる番人のヘンリーは、往年の名優、アーネスト・ボーグナイン。悪役の多い人だったが、歳を取ってからは良いおじいちゃん的な役が多くなってきた感じ。多くの名作に出演しているが、アクション映画ファンとしては戦争映画の「特攻大作戦」(The Dirty Dozen・1967・英/米)、サム・ペキンパーの悪党映画「ワイルドバンチ」(The Wild Bunch・1969・米)、「ポセイドン・アドベンチャー」(The Poseidon Adventure・1972・米)あたりだろか。

 脚本はエリック・ホーバーとジョン・ホーバーの兄弟。この前に2本手掛けているが、日本公開されたのは前売りのなかったケイト・ベッキンセイルの南極ミステリー「ホワイトアウト」(Whiteout・2009・米/加/仏)のみ。新作が2本控えている。それらに期待。

 監督はロベルト・シュヴェンケ。ドイツ出身で、ヒステリック・アクションの「フライトプラン」(Flightplan・2005・米)からハリウッドへ。爽やかに切ないタイム・トラベルラブ・ストーリー「きみがぼくを見つけた日」(The Time Traveler's Wife・2009・米)へ経て本作へ。いらんなジャンルが描ける人のようだ。現在新作の準備に入っているらしい。期待したい。

 武器はほかに冒頭のフランク・モーゼス宅急襲の時、ちらりとベレッタ90twoが出てくるが撃ってはいなかった模様。また急襲部隊はグロックを取り付けたコーナートショットを使用。これもモニターは点いていたが、撃ってはいなかった。特殊部隊はMP5とM4A1。ほかにSG552、AKMS、FN MAG、RPG、M203グレネードランチャーなども登場。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に席を確保しておいて30分前くらいに着いてコーヒーを飲みながら待つと、15分前くらいに開場。客層は20代くらいから中高年まで幅広く、男女比は半々くらい。最終的には157席がほぼ埋まった。ちょっと箱が狭すぎるのではないだろうか。話題作だし、スターが大勢出てるのに。

 気になった予告編は……ディズニー・アニメ「塔の上のラプンツェル」はクォリティ が高く、期待が持てそう。キャラクターもなじみやすい感じでグッド。ただ、また3Dとは。必要あるのだろうか。日本語吹替での予告。

 予告の時から、スクリーンの上側がややピンの甘いまま本編に突入。どうなるのかとヒヤヒヤしていたら、冒頭の小切手をゴミ箱に捨てるあたりでピンが来た。良かったぁ〜。


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