GANTZ


2010年1月30日(日)「GANTZ」

2010・日本テレビ放送網/集英社/東宝/ジェイ・ストーム/ホリプロ/バップ/読売テレビ放送/読売新聞/日活・2時間08分

ビスタ・サイズ(1.66?、IMDbでは1.85、Arrifrex)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)

公式サイト
http://gantz-movie.com/
(全国の劇場リストもあり)

大学生の玄野(くろの:二宮和也)は、地下鉄の駅で酔っ払いが線路に落ちるのを目撃するが何もできない。その時、小学生時代の友人、加藤(松山ケンイチ)か飛び降り助けようとするが、だれも手を貸さない。電車が接近してきた時、玄野は加藤引き上げようとするが2人とも線路に落ち電車に引かれてしまう。ところが、2人が気付くとそこは病院ではなく、どこかの部屋の一室。さらに何なんかの人がいて、みな死んだ瞬間にここに連れて来られたらしい。その部屋は外へ出ることはできないようになっている。そして部屋にある「ガンツ」と呼ばれる真っ黒な球体から武器とスーツを与えられ、制限時間内に「ネギ星人」を殺すように命じられる。わけがわからないまま、そこにいた全員がある街角に転送され、そこに子供のようなネギ星人が現れる。1人だけ最初からスーツを着た男がいて、これはTVのリアリティ番組で、「○○星人」を倒せば1,000万円の賞金がもらえるのだと言う。玄野、加藤、恋人にふられて自殺したという女、岸本(夏菜)の3人はとりあえず傍観するが、賞金に舞い上がった何人かはネギ星人を追いつめて殺すが、そこに巨漢のネギ星人が現れる。

73点

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 登場人物たちと同様、観客も訳がわからないまま物語が進行し、登場人物たちと一緒に状況を理解していくところが面白い。設定が奇抜で、シューティング・ゲームのようでもあり、しかし星人の殺害はリアルで、生々しく、自分たちもやられれば血が流れるし死ぬ。そのバランスも良い。原作漫画を読んでいる人には展開がわかるだろうから、この辺の感じは楽しめないかもしれないが、ボクは読んでいないので、楽しめた。

 黒い球体のガンツ、ガンツスーツ、Xガン、Xショットガンも素晴らしいデザインで、妙なリアリティがあり、素晴らしかった。もちろんデジタルと特殊メイクを使った「○○星人」はよくできていて、悪い冗談のようなビジュアルは日本映画界の技術を見せつけてくれる。そして何より怖いのが良い。特に千手観音のようなおこりんぼう星人はすごかった。

 ただ、主人公と思われる玄野のキャラクターが、この前編では良くなく、物語をリードしていくのに感情移入しにくい。地下鉄で人が落ちても傍観してしまうのは理解できるとして、名前を呼ばれて手伝ってくれといわれても無視しようとするし、小学校の時いじめられていた加藤を自分が助けたのだと思い出すと、急に態度が大きくなり上目線になるし……。これは物語の途中で「気付き」があって、自分の態度を改めるのかなと思っていたら、前編の最後でどうにかそれらしくはなるのだが、あいまい。観客が助けたい、生き残って欲しいと思えるキャラでないと物語をリードしていくのにはふさわしくないのでは。

 一方、加藤のキャラは、弟を助けるために父親を殺してしまい、今は幼い弟と2人で暮らしており、命がけで人助けをしたり、女性にも思いやりを持って紳士的に接するなど、なかなかのナイスガイで感情移入しやすいのだが、いかせん、この前編ではサブ。

 すべての謎は後編で明かされるそうで、これは後編を見るしかないではないか。エンド・クレジットの後、後編の予告がある。4/23公開だそうで、今度は普通の銃も出てくるようで、さらに飛んでもないことになりそうだ。本作ではあまり存在感のない漫画家志望の女子大生、小島(吉高由里子)も何かありそうだし。

 あまり好きになれないキャラの玄野役は嵐の二宮和也。ちょっと前に「大奥」(2010・日)に出ていたが、なんといっても良かったのが「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)。演技が自然で説得力があった。

 良いキャラの加藤役は松山ケンイチ。つい最近「ノルウェイの森」(2010・日)に出ていた。その他に「デトロイト・メタル・シティ」(2008・日)のミュージシャンや「DEATH NOTE デスノート」(2006・日)のLなどが記憶に新しい。

 自殺したという女、岸本は夏菜。TVで活躍してきた女優さんで、「大魔神カノン」(2010)などにも出ていた。映画は「君に届け」(2010・日)からとか。本作では全裸でがんばっていた。

 玄野の大学で同じゼミを取っている漫画家志望らしい小島役は吉高由里子。前編の本作ではほとんど存在感なし。それでも吉高を使ったということは、後編で活躍するのだろう。映画では「重力ピエロ」(2009・日)、「蛇にピアス」(2008・日)、感動的なSFの「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)などに出演。気が強いイメージだが、本作では内気なかわいらしいタイプを演じている。いまひとつ似合っていないような。

 生意気な少年の西丈一郎役は本郷奏多(かなた)。生意気な感じが実にうまかった。ロボット・ファンタジー「HINOKIOヒノキオ」(2004・日)で引きこもりの少年を演じていた子。小学生だったのが、もうほとんど大人だ。大作「K-20(TWENTY)怪人二十面相・伝」(2008・日)では小林少年を爽やかに演じていた。

 原作は奥浩哉の「週刊ヤングジャンプ」(集英社)に連載中の漫画。30巻までの累計発行部数は1,500万部以上とか。3DソフトのShadeやPhotoshopを使ってリアルな背景を描いていることは有名らしい。読んでいないので興味が湧いたが、30巻もあるんじゃなあ……。

 脚本は渡辺雄介。TVが多い人で、映画では「20世紀少年」(2008・日)シリーズを手掛けている。これも漫画原作で、あまり感心できなかったが、TVでは面白かった「霊能者 小田霧響子の嘘」(2010)や「相棒(Season 7)」(2008〜2009)、TVムービー「東京大空襲」(2008)「ブラッディ・マンディ」(2008)なども手掛けている。

 特撮監督は傑作怪獣映画「ガメラ大怪獣空中決戦」(1995・日)も手掛けた神谷誠。大作では樋口真嗣監督の「日本沈没」(2006・日)もやっている。CGディレクターは土井淳。VFXスーパーバイザーは前川英章。印象的な音楽は川井憲次。TVアニメや多くの映画を手掛けるが、押井守監督との仕事は多い。韓国映画、香港映画でも多くの仕事をしている。

 監督は佐藤信介。傑作アクション「修羅雪姫」(2001・日)の監督・脚本を手掛けた人。ほかに「県庁の星」(2006・日)の脚本や、アニメの「ホッタラケの島 遥と魔法の鏡」(2009・日)も手掛けている。アクションもドラマもうまい人なので、後編も期待が持てそう。

 公開2日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保。12〜13分前に開場して、場内へ。人気漫画ということでだろう、下は小学生くらいからだいたい中年くらいまで。高齢者はわずかだった。メインは18〜25歳くらいというところだろう。男女比は最初ほぼ半々だったが、最終的には女子が増えて4:6くらいに。さすが話題作で人気俳優が出ているだけあって、607席がほぼ満席。

 気になった予告編は……「SP」後編の予告。アクションはカッコいいが、銃の構え方が、今どきカップ&ソーサーというのは残念。

 上下マスクの「太平洋の奇跡」は新予告に。九六式軽機関銃らしいものを井上真央が構えていた。唐沢寿明は実銃ベースのプロップ・ガンのトンプソンのよう。

 まあ、とにかくタイトルがなかなか出ない予告が多くイライラしたが、上下マスクの「岳-ガク-」も最後まで出ず。山岳救助隊の話のようで、漫画が原作、小栗旬と長澤まさみという顔合わせ。はたして。予告は面白そう。

 終了後、出てく時に「原作、読んでみようかな」という若い男性の声が聞こえてきた。


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