Hereafter


2010年2月19日(土)「ヒア アフター」

HEREAFTER・2010・米・2時間09分

日本語字幕:手書き書体下、アンゼたかし/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(一部デジタル上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/hereafter/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

東南アジアのビーチでTV局のプロデューサー、ディティエ(ティエリー・ヌーヴィック)とバカンスを楽しんでいたフランスの売り出し中人気アンカー、マリー・ルレ(セシル・ドゥ・フランス)は、街へ買い物に出た時津波に襲われ、九死に一生を得て奇跡の生還を果たす。しかし臨死体験をしたことで仕事に身が入らず、ディティエからはしばらく休みを取るようにいわれる。その頃、サンフランシスコでは霊能者のジョージ(マット・デイモン)は死者との交信(リーディング)に疲れ、ひっそりと暮らしていたが、兄のビリー(ジェイ・モーア)の頼みで得意先の社長のリーディングを行う。それにより噂が広まり、多くの人からリーディングを頼まれるようになる。ロンドンでは双子の兄弟(ジョージ&フランキー・マクラレン)が児童保護局によって麻薬中毒の母から引き離されようとしていた。そしてある日、交通事故で兄が死亡、母は入院させられ、弟は里親に預けられる。

72点

1つ前へ一覧へ次へ
 スペクタクルで、派手で、驚異的なシーンから始まって、きわめて地味な感じで終わるドラマ。霊能者や死者をテーマとしながら、結局は気持ちの持ちよう的な落とし方は、話としては非常にリアルで説得力があるが、盛り上がりに欠け、映画=エンターテインメントとしてはいかがなものか。

 おそらく描かれているのは、死と直面した人、死者に振り回される人の心の葛藤だろう。そしてパリ、ロンドン、サンフランシスコ、それぞれ3つの物語がやがて収斂していってラストに交錯する。「クロッシング」(Brooklyn's Finest・2009・米)の死者版。ただ、悲しみや喪失感があるだけではなく、希望で終わるのが良い。上質で落ち着いたまとまり具合。感動もある。

 冒頭の津波(英語でもTSUNAMIと言っている)シーンはシネスコの大画面が生きる大迫力。まさに映画というスペクタクル。どうやって撮影したのかわからないようなアングルで、カメラが登場人物と一緒に水で流され、水の中に潜る。CGと手持ちカメラだろうか。これは大スクリーンで見る価値がある。

 ただ、この流れだと普通、期待するのは死者とのコンタクトから超常現象が始まってエスカレートしていき、ラストは死者からのメッセージで助かるとか、事件を解決するというB級パターン。ところがイーストウッドはそうはならない。そうなるものだったらイーストウッドはやらないだろうし。

 霊能者のジョージを演じたのはマット・デイモン。ハーバード出の秀才で、アクションからドラマまで何でも演じることができて、様々な作品に出まくっている。イーストウッド監督とは「インビクタス/負けざる者たち」(Invictus・2009・米)についで2本目。これから公開される作品も何本もあり、あちこちに引っ張りだこ。すごいなあ。

 マリー・ルレを演じたのはセシル・ドゥ・フランス。見ていないが「スパニッシュ・アパートメント」(L'auberge espagnole・2002・仏/西)でセザール賞最優秀新人女優賞を受賞したあとは、残念なホラー「ハイテンション」(Huate Tension・2003・仏)、かなり残念なジャッキー映画「80デイズ」(Around the World in 80 Days・2004・米/独ほか)など、作品に恵まれていない。使っていたのはMacBook。

 ジョージがイタリア料理教室で出会う訳ありらしい女性メラニー役はブライス・ダラス・ハワード。映画監督のロン・ハワードの娘。M・ナイト・シャマランの残念な2作「ヴィレッジ」(The Village・2004・米)と「レディ・イン・ザ・ウォーター」(Lady in the Water・2006・米)に出ているが……まともな感じがしたのは「ターミネーター4」(Terminator Salvation・2009・米/独ほか)くらいで、本作もジョージがやめようというのに無理強いしてリーディングをやらせ、それによって気まずくなり消えるという酷い役。本当に良い作品、良い役に恵まれない。美人なのに……。

 脚本と製作総指揮はピーター・モーガン。イギリス生まれで、イギリス王室を描いたアカデミー賞作品「クィーン」(The Queen・2006・英/仏/伊)や、恐ろしい実話に基づくアカデミー賞作品「ラストキング・オブ・スコットランド」(Last King of Scotland・2006・英)、実際のインタビューを描いたアカデミー賞ノミネート作品「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)、歴史劇「ブーリン家の姉妹」(The Other Boleyn Girl・2008・英/米)などの脚本を書いた人。基本的に実話がベースの人で、どれも話題となっている。本作は実話ではなく、それがマイナス要素だったか。

 監督・製作・音楽はクリント・スイーストウッド。アカデミー賞はじめ多くの賞を受賞する俳優にして監督で、自ら音楽も手掛ける才人。本作のピアノ曲やギター曲など、穏やかで物悲しく心に残る曲がそうらしい。素晴らしい。監督作品は、最近でいうと「ミリオン・ダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)、「硫黄島からの手紙」(Letters from Iwo Jima・2006・米)、「グラン・トリノ」(Gran Torino・2008・米/独)あたりが良かったなあ。すでに次回作の撮影に入っているというから凄い。1930年生まれの81歳。

 製作総指揮にはほかに、このところ監督作が少ないスティーブン・スピルバーグ、フランク・マーシャル(ラジー賞候補の「エアベンダー」(The Last Airbender・2010・米)を手掛けている……)ら。製作にフランク・マーシャルの妻のキャスリーン・ケネディ。プロダクションはアンブリン、ケネディ/マーシャル・コンパニー、マルパソ・ブロダクションズ。

 原題のヒアアフターとは来世という意味らしい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて、25分前に到着。ロビーではしきりに飲食物の持ち込み禁止をアピールしていたが、それよりロビーで携帯の電源を切るように指導した方が良いと思う。それに、まずくはないが量の少ないコーヒーもどうにかした方が良いと思う。ラテなんか小さいカップの2/3入っているだろうか。安くて量が多ければ誰も持ち込みなんてしないはず。

 ちょっと早め、18分前くらいに開場。20代くらいから中高年までいたが、メインは中高年。男女比はほぼ半々くらい。最終的に287席に8.5割りくらいの入り。さすがイーストウッド作品。ただ、場内が少し暑かった。

 気になった予告編は……最初ピンあまで心配したが、2本ほど上映したあと合った。3D-CGアニメの「豆腐小僧」は子供向けだろうが、新予告で面白そう。深キョンの吹替もなかなかグッド。前売りを買うとストラップがもらえるらしいが……。

 スクリーンが左右に広がって「エンジェル・ウォーズ」の予告。さすがにシネスコだと迫力が違う。驚きのビジュアルの連続。これは大スクリーンで見ないと。かなり日本がフィーチャーされているようだ。

 またエクソシストをテーマにした映画が来るらしい。上下マスクの「ザ・ライト[エクソシストの真実]」、悪魔を信じない神父と悪魔払いを行う神父、そして悪魔払いを行う神父に悪魔が取り憑くらしい。かなり怖そうだが見たい。


1つ前へ一覧へ次へ