A Better Tomorrow


2010年2月20日(日)「男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW」

MUJEOGJA・2010・韓/日/香/タイ・2時間05分(IMDbでは124分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、大家毅彦/シネスコ・サイズ(マスク、Arriflex)/ドルビー・デジタル


公式サイト
http://banka2011.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

脱北者のヒョク(チュ・ジンモ)は、脱北したとき生き別れになった弟チョル(キム・ガンウ)がおり、ずっと探していた。そして今は同じ北朝鮮出身の元特殊部隊員のヨンチュン(ソン・スンホン)と共に、釜山の武器密売組織の幹部として暗躍していた。ところが、タイでの取引の時、部下のテミン(チョ・ハンソン)の裏切りで銃撃戦となり、重傷を負って逮捕される。それを知ったヨンチュンは単身タイ・マフィアの幹部を襲撃、重傷を負い、足を引きずる体となってしまう。3年後、ロシアとの取引で利益をもたらしたテミンが組織を牛耳っており、体の不自由なヨンチュンは場末の駐車場係にされていた。一方チョルは刑事になっていた。そこにヒョクが釈放され、タイからもどってくる。

71点

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 なぜ今さらリメイクしたんだろう。確かに面白い作品だが、オリジナルの香港版を超えるのはむずかしいと思われるのに。製作総指揮はオリジナル版のジョン・ウーで、韓国・日本・香港・タイの製作サイドはリメイクしたいと思っていたということだろう。

 物語の構造はオリジナル版と同じだが、無理をして朝鮮半島の状況に合わせ、南北の分裂問題を設定に入れ、ディテールを変更したため、ちょっと納得しにくい流れとなってしまっている。たしかオリジナル版では弟は最初から警官だったのではないだろうか。紙幣偽造の組織は武器密売組織に変えられたものの、多くの武器が出てくるわけではなく、武器に凝っているわけでもない。なぜ変える必要があったのか。韓国では紙幣偽造にリアリティがないからか。

 それに、オバチャンが経営する港の屋台というのもいかにも韓国という感じすぎて……どうもこの設定でこのオバチャンという組み合せを見たことがある気がする。似た別人だったか。それほど港の屋台は多いのかもしれないが。

 オリジナルによく似たシーンもちゃんとあって、復讐のため単身殴り込みに行くチョウ・ユンファがカッコ良かったシーンは、ソン・スンホンがM92の二挺拳銃でがんばっている。ただ、予備の銃をあちこちに隠すようなことはせず、背中にスペアを2挺はさんでおくのみ。考えてみれば銃を取り換えるのはいかにも不自然。マガジン・チェンジをした方が簡単で早い。たぶんオリジナル版では、日本のヤクザ映画などで血糊で切れなくなった刀を取り換えるというのをやりたかったのだろう。本作も悪くはないが、オリジナル版を越えていない。ラストの銃撃戦もオリジナル版が良い。

 ひょっとしたら韓国のイケメン俳優がカッコ良く見える男の映画を作りたかっただけかもしれないが、結局、狙っていなかったとしてもオリジナル版を越えることはできなかった。それなりに感動的ではあるが、残念。

 オリジナル版でティ・ロンが演じた主役はチュ・ジンモが演じている。チャン・ツィイーが出た「MUSA-武士-」(Musa・2001・韓/中)に将軍役で出ていた人。見ていないが日本の漫画が原作の「カンナさん大成功です!」(200 Pounds Beauty・2006・韓)にも出ているのだとか。モデル出身だとかで、やや優男過ぎるかも。使っていた銃はベレッタM92。

 オリジナル版でチョウ・ユンファが演じた相棒役はソン・スンホンが演じている。この人もモデル出身でスリムというかスレンダーで、特殊部隊のタフな男にはちょっと向いていない感じ。ちょっと前だがスー・チーのアクション「クローサー」(So Close・2002・香)に出ていて、最近ではまさかのハリウッド映画のリメイク「ゴーストもういちど抱きしめたい」(2010・日)に松嶋菜々子の相手役として出ていた人。オリジナルどおりベレッタM92の2挺拳銃を披露。ほかにM16A1のM203付き

 オリジナル版でレスリー・チャンが演じた弟役はキム・ガンウ。ちょっとジャルジャルの後藤に似ている気がするが、あまり日本公開作品はない人。「シルミド/SILMIDO」(Silmido・2003・韓)に出ていたらしいが……。使っていた銃はS&Wの357マグナムM19の2.5インチに見えたが……。

 オリジナル版でレイ・チーホンが演じた成り上がりの裏切り者役はチョ・ハンソン。やはりモデル出身で、メジャーな作品には出ていないようだが、韓流ファンにはなじみ深いのかもしれない。使っていた銃はグロック。

 オリジナル版ではレスリー・チャンが演じた警官の弟には恋人がいて、それを美人のエミリー・チュウが演じていたのが、本作では役自体存在しない。ということは、女性ファン向けに作っているということだろうか。男臭く色恋を排したと。

 ほかに使われていた銃器は、AK、ポンプ・ショットガン、1911オート、ハイパワーなど。

 エンディングにいきなり日本語の歌は違和感があった。

 脚本の多くは本作が初の劇場作品のようだが、キム・ヘゴンはイ・ビョンホンのハード・アクション「甘い人生」(A Bitter Sweet Life・2005・韓)を書いた人。なるほど納得。

 監督はソン・ヘソン。見ていないが「力道山」(Rikidozan・2004・韓/日)の脚本と監督をやった人。「私たちの幸せな時間」(Our Happy Time・2006・韓)が評価されて本作へ抜擢されたらしい。

 公開2日目の初回、銀座の劇場は全席指定で、金曜に確保。25分前くらいに到着したら階段に20人ほどの列ができていた。5分ほどして開場に。ほぼ中高年で、しかも8割りくらいがオバサン。つまり韓流ファン。オリジナル版は見ていない人たちだろう。劇場へあまり来ないから、変なところに勝手に並んで(たまって?)いるから、入場にもたつく。しかも入口付近でプログラムなどを販売しているので、なお混乱。

 最終的に350席に60人くらいの入りはしようがないだろう。オリジナル版の凄さを知っている人が多いだろうから、韓流スターでリメイクしたものを見たいと思うのは韓流ファンのオバサンくらいしかいないだろう。とてもオリジナル版を越えられるとは思えないし、実際そういう結果になっているし。

 入場プレゼントがあったが、袋に入った何かのカードのよう。開ける気にもならなかった。座席番号を確認させるためだろう、客席は明るいまま予告編へ。気になったのは……アニメで手塚治虫原作の「ブッダ-赤い砂漠よ!美しく-」が公開されるらしい。ただ宗教色が濃い感じで、絵に手塚治虫っぽさがないのが気になった。

 過激派の学生運動とその報道を描くらしい「マイ・バック・ページ」は、予告だけで充分に暗く、元気な時でないと見れない感じ。妻夫木聡と松山ケンイチの顔合わせだが、若い人は見るだろうか?

 アシュトン・カッチャーとナタリー・ポートマンのお気軽風ラブ・ストーリー、上下マスクの「抱きたいカンケイ」は、いかにもという感じで、アシュトン・カッチャーはこんなのにばかり出ていて大丈夫だろうかと思ってしまう。


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