The Tourist


2010年3月6日(日)「ツーリスト」

THE TOURIST・2010・米/仏・1時間43分

日本語字幕:丸ゴシック体下、戸田奈津子/シネスコ・サイズ(デジタル、Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG指定)

公式サイト
http://www.tourist-movie.jp/
(入ったら音に注意。全国の劇場リストもあり)

ロシアン・マフィアから大金を奪い姿を消した男アレクサンダー・ピアースは、整形手術をしている可能性もあり、誰も顔を見たことがなく、正体がわからない。そしてイギリスに滞納の税金が75,000ポンドもあることから、ロンドン警視庁(スコットランド・ヤード)が捜査をしていた。しかし行方が知れないため、交際相手の女性エリーズ・クリフトン・ワード(アンジェリーナ・ジョリー)を監視していた。そんな中、エリーズに怪しい手紙が届き、彼女は外出する。その手紙はアレクサンダー・ピアースからで、「ベニス行きの列車に乗り、ボクの体つきに似た男を選べ」と書かれていた。手紙は焼却されたが、警察はそれを復元、彼女の後を追う。エリーズは列車の中で数学の教師をしているという地味なアメリカ人ツーリスト、フランク・トゥーペロ(ジョニー・デップ)を選ぶ。ロシアン・マフィアの追手も、警察もフランクをアレクサンダー・ピアースだと思い込むが……。

73点

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 ちょっと昔のスタイルの巻き込まれミステリーのスタイル。ヒッチコック・スタイルっぽく「泥棒成金」(To Catch a Thief・1954・米)とか、スタンリー・ドーネンの「シャレード」(Charade・1963・米)のようでもある。「アメリカ人め」という往年のギャグとか、なかなかいい雰囲気。映画を見た、という気になる。フランスのパリからイタリアのベニス、ローマと美しい場所をめぐり、高級ホテル、上流階級の舞踏会など、デート・ムービーとしてはピッタリかも。ヒロインのアンジェリーナ・ジョリーも場面が変わるごとにゴージャスな衣装で登場するし。

 ただ、ボーっと見ていても後半に入ったくらいでボクでも結末が見えてくる。これは謎の人物がマクガフィンか、あるいはこの人なんだろうなと。それでも、役者が素晴らしい人たちがそろっているのと、中盤から後半のテンポがよく、雰囲気も良いので、あまりそれを気にせず最後まで見ることができる。見終わっても爽やかな印象。よく考えれば都合の良い展開で、内容もあまりないというか、何も残らないのだが、楽しめるのは間違いない。

 フランク・トゥーペロを演じたジョニー・デップは、スターのオーラを隠して風采の上がらない雰囲気を醸し出している。オーラがないとこんな感じになるんだ。イメージとしてはリアル・タイム・サスペンスの「ニック・オブ・タイム」(Nick of Time・1995・米)っぽいかも。ボク的には西部劇の「デッドマン」(Dead Man・1995・米/独/日)が良かった。何といってもはまり役は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」(Pirates of the Caribbean: The Curse of the Black Peal・2003・米)だろう。結構つまらない作品にも良く出ている。

 謎の女、エリーズ・クリフトン・ワードを演じたのはアンジェリーナ・ジョリー。まあゴージャスで、スターのオーラがギンギン。スタイルも抜群。登場するたびにいろんな衣装を身に着け、タイプは全く違うがまるで往年のオードリー・ヘップバーンのよう。それにしても3人も子供を産んだお母さんには見えない。やはりデンゼル・ワシントンと共演した「ボーン・コレクター」(The Bone Collector・1999・米)の警官役が良かった。そして人気ゲームの映画化「トゥームレイダー」(Lara Croft: Tomb Raider・2001・米/英/日/独)でアクションも行けることを証明。社会派戦争物「すべては愛のために」(Beyond Borders・2003・米/独)やイーストウッド監督の「チェンジリング」(Changeling・2008・米)も良かった。最新作はやっぱりアクションの「ソルト」(Salt・2010・米)。

 アレクサンダー・ピアースを追うロンドン警視庁のジョン・アチソン警部を演じたのはイギリス生まれのポール・ベタニー。天才数学者を描いた傑作「ビューティフル・マインド」(A Beautiful Mind・2001・米)で共演したジェニファー・コネリーと結婚した。それも良かったが、何といっても良かったのはナイト物語「ROCK YOU![ロック・ユー!]」(A Knight's Tale・2001・米)。ハリソン・フォードの「ファイヤーウォール」(Firewall・2006・米/豪)では憎たらしい悪役。最近ではB級アクション「レギオン」(Legion・2010・米)の人類を救う天使役。なかなか良かった。

 その上司ジョーンズ主任警部はティモシー・ダルトン。もと007だ。「007/リビング・デイライツ」(The Living Daylights・1987・英)は良かったのに、酷い内容の「007/消されたライセンス」(Licence to Kill・1989・英/米)の不評の責任を取らされて007を降板させられてからはしばらく見かけなくなった。久々に見たのはコメディの「ホット・ファズ 俺たちスーパー・ポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/)。で、本作で見たらとても老けた感じがして、ボンドを演じた頃の精悍さはなくなっていた。まあ67歳だからしようがないが……。

 ロシアン・マフィアのボス、レジナルドはイギリス生まれのスティーヴン・バーコフ。傑作アクション「ビバリーヒルズ・コップ」(Beverly Hills Cop・1984・米)で悪のボスを演じていた人。「ランボー/怒りの脱出」(Rambo: First Blood Part II・1985・米)のロシア人将校も良かったし、スティーヴン・ドーフのアクション「スティール」(Riders・2002・仏/英/加)での処理屋が怖かった。最近見かけなかったが、ここにいたか。イメージは「ビバリーヒルズ・コップ」のまま。

 後を追っている謎の男はルーファス・シーウェル。「ROCK YOU![ロック・ユー!]」でいけ好かない貴族を見事に演じていた人。悪魔崇拝の「ブレス・ザ・チャイルド」(Bless the Child・2000・米/独)でも怖い役で、怖いラブ・ストーリー「幻影師アイゼンハイム」(The Illusionist・2006・チェコ/米)の王子は憎たらしく、悪役が実にうまい人。ちょっと見かけなかったが、いて良かった。きっと悪役だと思ったら……。

 ロシアのギャングたちが使っていた銃はベレッタM93R。サイレンサーも使っている。ホテルで使われるスナイパー・ライフルは一瞬だったのでわからなかったが、imfdbによるとシュタイアー・スカウトらしい。ラスト、警察のスナイパーが使っていたのは、たぶんアキュラシー・インターナショナルのスナイパー・ライフル、L118Aあたり。

 脚本は、監督でもあるドイツ出身のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクと、アメリカ出身のクリストファー・マッカリー、エジプト出身のジュリアン・フェローズの3人。クリストファー・マッカリーは、傑作ミステリー「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)の脚本でアカデミー賞脚本賞を受賞し、痛快アクションの「誘拐犯」(The Way of the Gun・2000・)の監督・脚本、トム・クルーズの戦争映画「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)の脚本と製作などを手掛けた人。ジュリアン・フェローズは役者でもあり、アカデミー賞脚本賞を受賞した「ゴスフォード・パーク」(Gosford Park・2001・英/米/伊)の脚本を手掛けた人。最近では、見ていないが、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria・2009・英/米)を書いている。

 監督でもあるフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクは、短編を何本か手掛けた後、「善き人のためのソナタ」(Das Leben der Anderen・2006・独)が高く評価され、ハリウッド・デビューするにいたったらしい。本作の出来は悪くないので、次の作品がどう評価されるかが重要になってくるだろう。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜に確保しておいて、30分前くらいに到着。なんと、今日もガンダム混雑の名残が。驚いた。まだ行列があちこちにできている。座れなかったので立ってコーヒーを飲みながら待っていると、15分前くらいに開場。観客層は20代くらいから中高年まで割りと幅広かったが、メインは中年層。男女比は半々くらい。

 最終的に607席に6.5割りくらいの入り。これはまあまあではないだろうか。まあ、それにしてもケータイを暗くなっても付けるヤツや、エンド・クレジットになるとすぐ着けるヤツがいてあきれる。外で出るまで待っても1〜2分しか違わないだろう。なぜ場内で点けたがるのか。やっぱり2Fのロビーで電源を切らせるべき。そして場内は電波が入ってこないようにすべきだと思う。

 気になった予告編は……「SP革命篇」は公開間近なのに前の予告のまま。銃のスライドの引き方や構え方が気になった。スクリーンが左右に広がっての「世界侵略:ロサンゼルス決戦」はさすがに凄い迫力。内容はわからないが、宇宙人との戦争のようで、面白そう。

 アニメの「鬼神伝」は絵のクォリティも高く面白そう。現代人の少年がタイムスリップして、鬼が溢れる平安時代に迷い込むらしい。


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