True Grit


2010年3月20日(日)「トゥルー・グリット」

TRUE GRIT・2010・米・1時間50分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35、OTTO)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.truegrit.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

父が雇い人のトム・チェイニー(ジョシュ・ブローリン)に射殺され、金貨2枚と馬を奪われた。長女のマティ・ロス(ヘイリー・スタインフェルド)は死体を引き取りにフォート・スミスの駅に降り立つ。そして馬を預かっていた厩舎の経営者から示談金をせしめると、それを元手に、インディアン居留地に逃げ込んだチェイニーを捕らえて裁判にかけるため、シェリフから一番の腕利きと聞いた連邦保安官のルースター・コグバーン(ジェフ・ブリッジス)を雇う。ところがチェイニーはテキサスで議員も殺しており、テキサス・レンジャーのラブーフ(マット・デイモン)が追ってきていた。3人は協力してチェイニーの後を追うことになるが……。

80点

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 ジョン・ウェインの傑作西部劇「勇気ある追跡」(True Grit・1969・米)のリメイク。いや、コーエン兄弟節たっぷりのリアル版リビルドといった方が良いか。再構築して見せたと。

 面白い。西部劇を堪能した。銃などの設定がリアルだし、暴力表現もリアル。そして絵が美しく、郷愁を感じさせるピアノの曲もぴったりマッチして、時に笑いを混ぜながら、ロード・ムービー的冒険の数々。あえて注文をつけるなら、もうちょっと冒険を楽しみたかったのと、ラストの1対4の戦いがあっさり過ぎた気がすること。もっともカッコいい部分なのでもっとしつこく見せて欲しかったかも。ジョン・ウェインはウインチェスターをくるくる回していたわけだし。リアルという観点からなしにされたんだろうが、多くの人が期待していた場面だと思う。こんなにあっさりだとちょっと肩透かし感が。

 全体にはコーエン兄弟節満載。期待を裏切らない。「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)、「ファーゴ」(Fargo・1996・米/英)、「ビッグ・リボウスキ」(The Big Leobowski・1998・米/英)、「ノーカントリー」(No Country for Old Men・2007・米)などが全部詰まっていた。というか、逆にもともと彼らの作品には西部劇の、そして「勇気ある追跡」の要素・影響があったというべきか。

 主演とも言うべき新人のヘイリー・スタインフェルドは、長編劇場映画初出演。映画撮影時本当に14歳で、その雰囲気がオリジナル版の「勇気ある追跡」のマティ・ロスを演じたキム・ダービーに良く似ている。男まさりで、怖い物知らずで、生意気で、可憐で、可愛い。ヘイリー・スタインフェルドはそこに知性も加えて見せた。やり手の社長との取引は実に堂々としていて見事。「母は泣いてばかりで、弟はまだ幼い。私がやらなければ」というセリフが泣かせる。しかし、人を呪わば穴二つ。裁判を受けさせようようとしたのでも、大きな代償を負ってしまう。オリジナル版では裁判というより、敵討ちという感じだったと思うが。気になったのは、冒頭、父の遺品として初めてコルト・ドラグーンを手にするのだが、もともとドラグーンは軍用銃なのでかなり大きい。それが小さく見えいていた。本物だったのだろうか。オリジナル版ではかなり大きかった印象がある。

 マティ・ロスのナレーションで始まるので、彼女が死ぬことはないとわかってしまうが、コーエン兄弟なのでもしかしてという気もした。でももっとハラハラさせてくれても良かったかなあ。そして、ラストの25年後はいらなかったのでは。未婚のハイ・ミス、厳しい女性教師みたいな感じになった姿は必要だったんだろうか。女性に対して立とうとしない男に「すわってなさい、ゲスは」とピシャリと言うのには笑ったが。使っていた銃はシリンダーに彫刻が入ったコルト・ドラグーン。

 オリジナル版でキム・ダービーが演じたマティ・ロスはヘイリー・スタインフェルド。TVや短編映画の出演経験はあるらしいが、長編劇場映画は初めてという15歳。オーディションを勝ち抜いてこの役を得た。キム・ダービーのようにやせっぽちで、大人に負けないように突っ張っている感じと、ナイーヴな13歳くらいの感じが実に良く出ていた。ジェフ・ブリッジスやマット・デイモンといった大物俳優に負けていない。

 オリジナル版ではミスター西部劇、ジョン・ウェインが演じた連邦保安官のルースター・コグバーンをジェフ・ブリッジスが演じている。今ではジョン・ウェインの役をやれるのはこの人くらいしかいないだろう。ただ、だいぶ汚めの疲れた初老の大男という感じだが。そのおかげで、ラスト、マティ・ロスを抱えて走る姿はより感動的になっているが。つい最近「トロン:レガシー」(Tron: Legacy・2010・米)で若い頃の姿も、CGらしいが、披露していた。ボク的には「天国の門」(Heaven's Gate・1980・米)とか「キングコング」(King Kong・1976・米)がなつかしい。本作のように疲れた中高年を演じた(かなり汚かったが)「ビッグ・リボウスキー」(The Big Lebowski・1998・米/英)でコーエン兄弟と仕事をしている。アイパッチをジョン・ウェインとは逆の側にしていたのは敬意を表したということなのだろうか。使っていた銃は、コルト・ネービー、SAAのキャバルリー、ウィンチェスターM73のオクタゴン・バレル。クロス・ドロー・ホルスターをつけている。

 オリジナル版でグレン・キャンベルが演じたテキサス・レンジャーのラブーフはマット・デイモン。優男そうだが、撃たれてもなかなか死なないタフなタイプで、これがレンジャーだと言う。つい最近イーストウッド映画「ヒアアフター」(Hereafter・2010・米)に出ていた。「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)でアクションもいけることは証明済み。射撃の名人という設定で、使っていたのはシャープス・カービンとSAAの彫刻入りアイボリー・グリップ付き。当時としては長距離の300ヤード以上の狙撃を見せる。

 お尋ね者のトム・チェイニーはジョシュ・ブローリン。かなり貧しい設定で、薄汚れている。マティ・ロスの父から盗んだヘンリー・ライフルはロープをスリング代わりにして持っている。つい最近「ウォール・ストリート」(Wall Street: Money Never Sleeps・2010・米)で悪役を演じていたが、「ジョナ・ヘックス」(Jonah Hex・2010・米)ではミーガン・フャックスの西部劇にも出ている。本作では貧相な感じが見事だった。

 ギャング団のボス、ネッド・ペッパーはバリー・ペッパー。「プライベート・ライアン」(Saving Private Ryan・1998・米)でスプリングフィールドM1903ライフルを持った左利きのスナイパーを演じていた人。この作品でマット・デイモンと共演している。スティーブン・キングの感動作「グリーンマイル」(The Green Mile・1999・米)では看守を演じていた。ちょっと突っ張った感じが良い。使っていた銃はレミントンM1875。

 他に銃器はウインチェスターM1866イエロー・ボーイも出ていた。チョクトー・インディアンのテリトリーにあるボブの小屋での撃ち合いは、顔面を近距離から撃ち、火薬の燃えたのや燃えなかったのが顔に吹きつけ、撃たれたヤツは凄いことになる。このへんがまたコーエン兄弟らしい。えぐいまでの暴力表現。

 原作はチャールズ・ボーティスの小説。それを基にジョエル・コーエンとイーサン・コーエンの兄弟が脚本にし監督した。兄がジョエル、弟がイーサン。それほど面白くないものもあるが、面白いものは抜群に面白い。だいたいはどぎついものが多い気がする。

 公開2日目の初回、六本木の劇場は全席指定なのに当日受付のみで不便。何のためにパソコンを使っているのかよくわからない。どの席が埋まっているのかさえわからない。ちょっと気取った感じがどうにもなじめないが、都内ではここがベストの劇場だろう。40分前くらいに着いて座席を確保してスタバへ。15分前くらいの開場で、場内へ。若い人から中高年までいたが、やはり西部劇は中高年がメイン。ただアカデミー賞を取ったからだろう、女性も多く、男女比はほぼ半々くらい。

 座席全体に傾斜が付いているのにスクリーンが低いため、後方の席だと前席の人の頭が邪魔になって字幕が読みにくい。これは座ってみないとわからないので、腹が立つ。もうちょっと前にすれば良かった。

 ケータイがあちことで光っていたが、もっと酷かったのは関西弁で大声で話していた夫婦。うるさいって。ほぼ暗くなって予告が始まってもまだ話していた。最終的には369席に7〜7.5割りくらいの入り。遅れてくるヤツが多く、もっといたかもしれない。

 気になった予告編は……フィリップ・K・ディック原作、マット・デイモン主演の「アジャストメント」はなかなか面白そう。運命はすべて彼らによって操作されているとは?

 暗くなって、ドルビーとTHXのロボットのデモの後、本編へ。


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