The Rite


2010年4月9日(土)「ザ・ライト[エクソシストの真実]」

THE RITE・2011・米・2時間00分(IMDbでは米版114分)

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、IMDbではレンズ)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)(一部デジタル上映もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/therite/index.html
(重い。音に注意、全国の劇場リストもあり)

代々続く葬儀社の1人息子として生まれたマイケル・コヴァック(コリン・オドノヒュー)は、自分の妻の死にもクールな父イシュトヴァン(ルトガー・ハウアー)の許から離れたくて、学費の心配がないヴァチカンの神学校へ進学することを選ぶ。神学以外、優秀な成績で卒業を間近に控えたマイケルは、彼の優秀さを認めるマシュー神父(トビー・ジョーンズ)から司祭に推薦されるが、自分には宗教心がないからと断る。すると、ザビエル神父(キアラン・ハインズ)のエクソシストの講義を受けるように進められる。それでも、悪魔憑きは精神病だと主張するマイケルに、ザビエル神父は市井で悪魔払いをしている優秀なルーカス神父(アンソニー・ホプキンス)を訪ねるように勧める。言われるまま貧しい暮しを送るルーカス神父の許を訪れたマイケルは、妊娠中の16歳の少女ロザリア(マルタ・ガスティーニ)の悪魔払いの儀式に立ち会うことになる。

73点

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 じわーっと怖い映画。ローマ在住のジャーナリスト、マット・バグリオによる悪魔払い学校の実話に基づくそうで、おそらくキリスト教信者の人は、もっとずっと恐ろしいに違いにない。日本人的には、どうしても映画の中でも触れられているように、世紀の傑作ホラー映画「エクソシスト」(The Exorcist・1973・米)のイメージが強く、首が180度回るとか、緑色のゲロを吐くとか、空中に浮くといった現象を期待してしまいがち。それよりずっと地味。だから、じわーっと怖い。エンターテインメントの部分より宗教色の方が強い。信仰と信念というところか。科学か超常現象かという点では、ドイツでの実話に基づく「エミリー・ローズ」(The Exprcism of Emily Rose・2005・米)に似ている部分も。

 ただ、どうにも悪魔という存在は、幽霊よりもいまひとつピンと来ない。それでも、実際にヴァチカンには全世界から50万件も悪魔払いの要請が寄せられるそうで、本物か精神病かなどを判定してエクソシストを派遣しているが、とても神父が足りないという。

 日本人的に上手いと思うのは、主人公が神よりは科学を信じるタイプで、悪魔の存在も神の存在も疑っているということ。その彼が悪魔払いの最前線に放り込まれるわけで、次第にその世界へと引き込まれて行く点。観客はだんだんと悪魔を信じざるを得なくなってくる。逆に信じている人にまどろっこしいかもしれない。それもあってIMDbでの評価が低い(6.1点)のだろうか。

 1つ不思議なのは、映画の中では明確に語られていないものの、どうに悪魔の名前を聞き出し、その名前で神の名において命令を下せば、悪魔払いができるらしいこと。これは「エクソシスト」でもそうだったと思うが、ずる賢く、何カ国語も話し、そこにいることを知られないようにいない振りをする悪魔が、なぜ神父の命令で名を名乗れといわれると、初めは無視していてもついには正直に名を言ってしまうのか。そこまで素直なら名を聞き出すより出て行けと命ずればいいのに。まったく納得できない。嘘の名でも良いし、答えなくても良いのに。映画では描き切れない微妙な問題なのかも知れないが。

 主役のマイケル・コヴァック役はコリン・オドノヒュー。アイルランド生まれで、TVで活躍してきた人。どれも日本ではほとんど知られていないものばかり。映画ではほぼ新人に近い。でもいい感じだったので、今後活躍するかも。

 その父親役はルトガー・ハウアー。カメオ出演に近い顔見世出演。「ブレードランナー」(Blade Runner・1982・米/香)は強烈だったが、さすがに最近は出演作が無くなっていた感じ。変わらない怖さがあるのはさすがというべきか。

 ルーカス神父はアンソニー・ホプキンス。名優として広く認められながら、硬、軟、さまざまな作品に出続けている。ボク的にはスパイ・アクションの「八点鐘が鳴るとき」(When Eight Bells Toll・1971・英)の印象が強いが、豪華な戦争映画「遠すぎた橋」(A Bridge Too Far・1977・米/英)があり、「エレファント・マン」(The Elephant Man・1980・米)もありつつ、FBI vs 異常犯罪者の「羊たちの沈黙」(The Silence of the Lambs・1991・米)は強烈だった。最近出ていたのは「ウルフマン」(The Wolfman・2010・米)で、ちょっと今ひとつだったが。

 悪魔憑きの少女ロザリアを演じた美女はマルタ・ガスティーニ。2009年、TVからスタートしたとは思えないほど良かった。取り憑いた感じは抜群。しかもドレスをまくり上げる多など際どいシーンも堂々としていた。これから期待できそう。

 ザビエル神父を演じたのはキアラン・ハインズ。北アイルランド生まれで、どちらかというい悪役が多い人。独特の雰囲気を持っている。スピルバーグの「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)の殺し屋のメンバーは印象に残った。最近見たのはなかなか楽しめたリメイクSF「ウィッチマウンテン/地図から消された山」(Race to Witch Mountain・2009・米)の系譜の組織の男。

 エクソシストの授業を受けている女性ジャーナリスト、アンジェリーナはブラジル出身のアリシー・ブラガ。リメイクSFの「アイ・アム・レジェンド」(IAm Legend・2007・米)、暗いSF「ブラインドネス」(Blindness・2008・加/ブラジル/日)、メキシコ人不法難民を演じた「正義のゆくえI.C.E.特別捜査官」(Crossing Over・2009・米)、残酷SF「レポゼッション・メン」(Repo Men・2010・米/加)、人気アクションSFの続編の「プレデターズ」(Predators・2010・米)など全体にSFが多いだろうか。とにかく話題作に恵まれていて、しかもそれぞれ印象に残る役。

 脚本はマイケル・ペトローニ。ジョディ・フォスタがプロデュースした「イノセント・ボーイズ」(The Dangerous Lives of Altar Boys・2002・米)や、アリーヤの遺作となった「クイーン・オブ・ザ・ヴァンパイア」(Queen of the Damned・2002・米/豪)、最近では「ナルニア国物語 第3章アスラン王と魔法の島」(The Chronicle of Narnia: The Voyge of The Dawn Treader・2010・米)を書いている人。

 監督はスウェーデン生まれのミカエル・ハフストローム。映画評論家からTV界に入り映画、そしてハリウッド・デビューという輝かしい経歴の持ち主で、怖くないホラー「1408号室」(1408・2007・米)を監督した人。本作はそれよりは怖くなった。

 原題のライトとは儀式のことなんだとか。なるほど。Tが微妙に十字架になっているクレジットのデザインはプロローグSFX。メンバーの1人にカイル・クーパーの名前が。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、45分前くらいに着いたらまだ下の窓口が開いていなかった。中高年が2人、若い男性が2人、中年女性と若い女性が1人ずつの6人が行列。40分前くらいに案内があり、35分前くらいに窓口が開く。前売り券を持っていても当日券との引き換えが必要。

 最終的に下は12〜13歳くらいの女の子からいたが、メインはやっぱり中高年。女性は1/4ほど。469席の4割りくらいが埋まった。まあ、こんなものか。

 気になった予告編は……上下マスクの「孫文の義士団」はなかなか面白そうなアクション。ドニー・イェンだし。でも劇場がなあ……。

 上下マスクの「抱きたいカンケイ」は見るからにお気軽ムービー風。セックス・フレンドねえ……。

 上下マスク、マーヴェル・コミックが原作の「マイティ・ソー」もなかなか面白そう。アンソニー・ホプキンスも出ているとは。

 2週間限定上映という上下マスクの「レッド・バロン」は、あのリヒトホーヘェンの物語。飛行機ファンやアクション映画ファン、歴史物、戦史物好きにもたまらないのではないだろうか。これは見たい。劇場も良いし。


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