Sucker Punch


2010年4月17日(日)「エンジェル ウォーズ」

SUCKER PUNCH・2011・米/加・1時間50分

日本語字幕:手書き書体下、林 完治/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、SDDS(IMDbではdtsも)

(米PG-13指定、日PG12指定)(日本語吹替版もあり。一部デジタル字幕・吹替、 IMAX版もあり)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/suckerpunch/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

母が死に、遺言により全財産を受け継いだ姉妹。しかしその財産を狙っていた継父(ジェラルド・プランケット)は、姉(エミリー・ブラウニング)を閉じこめ、妹に乱暴を働こうとしたことから、姉は相続品の中にあったガバメントを手にし、継父を撃つ。しかし弾丸は逸れ、妹に命中してしまう。継父はすぐに警察に連絡すると、姉が母を失ったショックで乱心したと訴え、強制的に精神病院に入院させてしまう。しかも、口封じのため、看護士の主任のブルー(オスカー・アイザック)と取引をし、書類を偽造してロボトミー手術を行わせることにするが…… 。

83点

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 これは評価が分かれるかもしれない。ファンタジー、作り話、ホラ話として楽しめるかどうか。IMDbでは6.6点。ボクはとても楽しめた。面白かった。決してハッピー・エンドではないが、後味の悪くないアクション劇画。そう、まさに劇画。それを実写で作った感覚。

 とにかく絵がキレイ。二重焦点なども使い、シネスコ・サイズの画面は生かされ、現実世界がモノトーンで、空想世界がカラフル。しかも、物語には回想があり、あたかも「インセプション」(Inception・2010・米/英)のように、夢の中で夢をみているような感じ。1つは現実のモノトーンの世界。そして現実と連動しつつ、逃避の世界であるカラフルな作られた世界。そして、その作られた世界の中で、精神病院が売春宿となり、プライベート・ダンスはベイビー・ドールが目をつぶると戦場となる。テーマが自らを守るために戦えというものだから、すべては戦いなのだ。しかも敵は死者を再生したものだから気兼ねすることはないと。

 惜しいのは結末というかオチががわかってしまうことだろう。それでもがっかりさせられるわけではないし、どんでん返しがメインになっているわけでもない。これはそんなに大きな点ではない。この手法は昔フランス映画にも、男が橋から身を投げて川面に落ちるまでの間に人生を振り返ると言うものがあったそうだし、マーティン・スコセッシ監督の「シャッター・アイランド」(Shutter Island・2009・米)とも似た部分がある。また「“アイデンティティー”」(Identity・2003・米)とも通じる。

 日本のアニメの巨匠が「少女が銃を撃って笑うような映画を作っちゃいかん」と怒ったそうだが、もしそれが本当だとしたら、多いにがっかりだ。まわりからあがめられすぎて、裸の王様になってしまったのか。何様? 何が良いか悪いかを、この人が決めるというのか。独裁者かと。部下やスタッフは大変だろうなあ。もちろん本当だとしたら、の話だが。

 ベイビードールを演じたのはエミリー・ブラウニング。最初はTVで活躍していたようだが、2001年から劇場作品にも出始め、ホラーの「ゴーストシップ」(Ghost Ship・2002・米/豪)で霊の少女を、「レモニー・スニケットの世にも不幸せな物語」(Lemony Snicket's A Series of Unfortunate Events・2004・米/独)の三姉妹の長女を演じていた人。それぞれ印象が全く違うから同じ人には見えないが。本作が一番魅力的な感じ。オーストラリア出身で、本作では女子高生のような役柄だが、1988年生まれだから23歳か。今後にも期待したい。使っていた銃は現実世界ではたぶんミリタリー・タイプのガバメント。想像の世界ではめっきタイプのガバメントで、ランヤード・リングにはたくさんの携帯ストラップ付き。長物はオープン・タイブのドット・サイトを付けたH&KのMP7。敵のルイス・マシンガンを奪って手持ちで撃つシーンも。サウスポー?

 一番年上っぽいスイートピーはアビー・コーニッシュ。やはりオーストラリア出身で、29歳、TVで活躍していた人。「ポエトリー、セックス」(The Monkey's Mask・2000・豪ほか)、「ブロヴァンスの贈りもの」(A Good Year・2006・米/英)、ヒース・レジャーの「キャンディ」(Candy・2006・豪)、「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏/独)などに出演。最近は3D-CGアニメ、ザック・スナイダー監督の「ガフールの伝説」(Legend of the Guardiens: The Owel of Ga'hool・2010・米/豪)の声をやっている。使っていた銃はドット・サイトとサイレンサー、ライトなどを装着したM4A1カービンと、カスタム化したポンプ・ショットガン。

 その妹ロケットはジェナ・マローン。アメリカ出身の27歳。12歳からTVで活躍を始め、SFの「コンタクト」(Contact・1997・米)ではジョディ・フォスターの少女時代を演じ、「グッドナイト・ムーン」(Stepmom・1998・米)でスーザン・サランドンの娘役、家族再生ドラマ「海辺の家」(Life as a House・2001・米)、見ていないがジョディ・フォスターの「イノセント・ボーイズ」(Innocent Boys・2002・米)や「16歳の合衆国」(The United States of Leland・2002・米)など、ドラマ系での大きな役が多い。大作にも出ているが、それらは役が小さい。ここまでアクションがやれるなら、今後にも期待できそう。使っていた銃は、ドット・サイトを付けたH&KのUMP .45 SMG。ほかになぜかフリント・ロック・ピストルも。きゃしゃな美人が銃をプロ並みに鮮やかに扱うと、ことのほかカッコいい。しかもハイヒールだし。

 黒髪なのにブロンディはバネッサ・ハジェンズ。残念だったマニア念願の映画化「サンダーバード」(Thunderbirds・2004・米/仏)のミンミン役や、見ていないが話題となったTV版と劇場版の「ハイスクール・ミュージカル」(High School Musical 3・2008・米)のヒロイン役など。アクションとは全く無縁のようだが、なかなかどうして。使っていた銃はH&KのMP5K。M2ブローニングやM1919マシンガンもぶっ放している。

 主にパイロット担当のアンバーはアジア系のジェイミー・チャン。TV出身で、日本公開映画は少ないが、残念な話題作「DRAGONBALL EVOLUTION」(Dragonball Evolution・2009・米/香/英)にチチ役で出ていた。もともとアクション系は得意だったようだ。銃は特に使っていなかったようだが、バルカン砲付きのロボットや、ヘリのイロコイ、B25などを操縦。

 導師のようだったり、将校だったり、女の子たちを導く謎の男を演じたのは、スコット・グレン。アメリカの宇宙開発史を描いた「ライトスタッフ」(The Right Stuff・1983・米)が有名だが、ボク的には吸血鬼アクション「ザ・キープ」(The Keep・1983・英)や西部劇「シルバラード」(Silverado・1985・米)などの方が印象に残っている。最近では重鎮的役が多く、IMDbの評価は逆のようだが先細りのアクション・シリーズ「ボーン・アルティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米/独)にも出ていた。ラストはバスの運転手で、おいしいところをすべて持っていってしまう。

 精神病院内をしきっている男ブルーを演じたのはオスカー・アイザック。レオナルド・ディカプリオのアクション「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米)や同じリドリー・スコット監督の「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)に出ている。イヤらしい感じが抜群だった。ラスト、エンド・クレジットのワイプでカーラ・グギーノと歌う雰囲気も良かった。公開待機作がたくさんあり、ひっぱりだこらしい。

 ポーランド式セラピーで治療を担当する女医、ベラ・ゴルスキー博士役はカーラ・グギーノ。TV出身、まあ、いろんな役をやっている人。古くはニコラス・ケイジの「スネーク・アイズ」(Snake Eyes・1998・米)や、子供向けアクション「スパイキッズ」(Spy Kids・2001・米)、ジェット・リーのアクション「ザ・ワン」(The One・2001・米)に出ている。またフランク・ミラー監督の「シン・シティ」(Sin City・2005・米)、そしてコメディの「ナイトミュージアム」(Night at Museum・2006・米/英)に出たかと思えば、シリアスな「アメリカン・ギャングスター」(American Gangster・2007・米)にも出ている。ザック・スナイダー作品では「ウォッチメン」(Watchmen・2009・米)に出演。

 大富豪ハイローラーと、ロボトミー手術を行う医師を2役で演じているのはジョン・ハム。もとはTVの人で、「MADMEN」で注目されたらしい。映画では残念なリメイクSF「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米/加)や、つい最近ハード・アクション「ザ・タウン」(The Town・2010・米)にFBI役で出ていた。

 原案・脚本・監督はCM出身のザック・スナイダー。ゾンビが全力疾走する「ドーン・ロオブ・ザ・デッド」(Dawn of the Dead・2004・米ほか)で注目され、圧倒的な映像の力で観客を虜にした「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)、ちょっと残念だった「ウォッチメン」と続き、これまた絵の強さが際立った3D-CGアニメ「ガフールの伝説」(Legend of the Guardians: The Owls of Ga'Hoole・2010・米/豪)を撮っている。素晴らしい才能だと思う。特に絵の感覚は神懸かり的。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜日に確保しておいて、45分前くらいに着いたら9時前でまだ劇場が開いていなかった。9時くらいに入口が開き、10分前くらいに開場。やはり中高年男性がメインながら、それでも若い男性は1/3〜1/4ほど。若い女性が数人。予告が始まってもゾロゾロと入って来ていたので、最終的には607席に2割りくらいの入りは余りに少なすぎ。同じ劇場で吹替版も上映しているからだろうか。もっともっと入っても良い映画だと思うが。

 気になった予告編は……もう飽きるほど見た日本映画の予告が数本続いた後に……アニメの「鬼神伝」は3Dで作画されているらしい自由なカメラワークが見事で、絵も良い感じ。平安時代と現代がつながるような話か。ただマニアの人たちがたくさん見に押しかけるだろうなあ……。

 なかなかタイトルを出さない予告が多く、イライラするが、リーアム・ニーソンのアクション、上下マスクの「アンノウン」は「96時間」みたいな話だろうか。「ボーン・アイデンティティー」みたいでもあったけど、とにかく予告編では面白そう。

 スクリーンが左右に広がって、大迫力での予告はまたタイトルが出ない。が、どうもこれはおとぎ話の「赤ずきんちゃん」のよう。しかしもう少し大人の話で、本気っぽい。ちょっと怖そうな……最後に出たタイトルはそのものスバリ「赤ずきん」だった。タイトルを最後に出すって、予告編を作ってるヤツの自己満足じゃなかろうか。


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