Scott Pilgrim vs. the World


2010年4月30日(土)「スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団」

SCOTT PILGRIM VS. THE WORLD・2010・米/英/加・1時間52分

日本語字幕:丸ゴシック体下、栗原とみ子/ビスタ・サイズ(with Panavision、HDTV、Super 35、VistaVision、IMDbでは一部2.35と)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://scottpilgrimthemovie.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

カナダのトロントに住む22歳で無職のスコット・ピルグリム(マイケル・セラ)は、ゲーム・オタクでアマチュア・バンド「セックス・ボブオム」のベーシスト。中国系の女子高生ナイブス・チャウ(エレン・ウォン)とつき合い始めたばかり。実家のすぐ向かいにある隠れ家と称する家に、ゲイのルーム・メイトのウォレス・ウェルズ(キーラン・カルキン)と一緒に住んでいる。ある日、パーティーで髪をピンクに染めたアメリカ人の美女、ラモーナ・フラワーズ(メアリー・エリザベス・ウインステッド)に出会い、一目ぼれして二又のままアタック開始。しかし謎のメールが届き、彼女と付き合うならタダではおかないと脅される。ラモーナは7人の元カレを倒さないと付き合えないと打ち明ける。そして最初の元カレが襲ってくる。

75点

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 まさにオタクのファンタジー。めちゃくちゃな話だが面白い。ちゃんと笑わせてくれる。これは近ごろないことだ。苦笑ではなく、ちゃんとした笑い。TVゲームが好きでたまらないヤツの想像の世界はこんな感じなのだろう。すべての出来事がゲーム風に語られ、困難の克服もゲーム感覚で、ストリート・ファイターのように戦い、相手を倒すとコインが手に入るという具合。そして最後には大物のボス・キャラが待っている。

 音楽もすべてがゲーム音楽風で、最初、登場人物にはすべてタグがついて、名前や年齢や特徴が表示される。電話が鳴ればリンリンと文字が電話機から出てくるし(しかもリアルに溶け込んでいて違和感がない)、ドアのノックも、バンドの騒音までもが3D-CGの文字で表示される。ゲームの世界が現実になったら、まさにこんな感じになるのだろう。

 全体としては青春恋愛ストーリーで、一目ぼれがあって、二又があって、恋敵がいて、バンドで一旗揚げようという夢があって、葛藤と挫折があって……と実に普通というか、王道、定石通り。見せ方も特に新しいわけではない。傑作ゾンビ青春ロード・ムービーの「ゾンビランド」(Zombieland・2009・米)と通じるものがある。手法は良くにいている。ちらちらと有名俳優も出てくるし。そして、おふざけ調なのを真剣に高いクォリティで作っている。どうせコメディだからという手抜き感がない。SFXもお金がかかっているし、それ相当の効果も出ている。お金を払って見るのに値するクォリティだ。

 スコット・ピルグリムを演じたのはマイケル・セラ。見た目がとてもオタクっぽい雰囲気で役にぴったり。見ていないがアカデミー脚本賞を受賞した10代の妊娠を描いた「JUNO/ジュノ」(Juno・2007・米)で主人公のエレン・ペイジの相手役を演じた人らしい。今後どうなのかはわからないが、独特の味を持っているのは確か。

 気分で髪の色を変える一目ぼれの美人ラモーナ・フラワーズは、メアリー・エリザベス・ウインステッド。ヒット作「ダイ・ハード4.0」(Live Free or Die Hard・2007・米/英)でジョン・マクレーンの娘を演じていた人。ちょっと太めになっていないか。

 ゲイのルーム・メイトのウォレス・ウェルズを演じたのはキーラン・カルキン。あの絵に書いたような凋落の人生を送った「ホーム・アローン」(Home Alone・1990・米)の天才子役マコーレー・カルキンの弟。「花嫁のパパ」(Father of Bride・1991・米)や「サイダーハウス・ルール」(The Cider House Rules・1999・米)などで確実にキャリアを積み、「17歳の処方箋」(Igby Goes Down・2002・米)や「イノセント・ボーイズ」(Innocent Boys・2002・米)などのドラマに出ている。それが、まさかゲイをコミカルに演じるとは。弟の方は兄のような道はたどらないですみそうだ。

 スコット・ピルグリムの美人の妹ステイシーを演じたのはアナ・ケンドリック。尻すぼみのヴァンパイア映画「トワイライト 初恋」(Twilight・2008・米)で主人公のクリスチャン・スチュワートの同級生を演じていた人。ジョージ・クルーニーの「マイレージ、マイライフ」(Up in the Air・2009・米)で大きな役を演じている。

 バンド・メンバーの元カノ、眼鏡の堅物風ジュリーを演じたのは、なかなかの美女オーブリー・プラザ。TVの人らしく、「スーパーナチュラル」などにも出ていたらしい。本作のおかげか本年以降の作品は続々とある模様。

 元カレ軍団には有名俳優がチョイ出演している。アクション・スターのルーカスには「セルラー」(Cellular・2004・米/独)や「ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]」(Fantastic Four・2005・米/独)のクリス・エヴァンス。劇中劇で使っている銃はM92シルバー。菜食主義者のサイキッカー、トッドには「スーパーマン リターンズ」(Superman Returns・2006・米)のスーパーマン役以降パッとしないブランドン・ラウス。二枚目なのに惜しい。

 ちなみに、カタヤナギ・ツインズは斉藤慶太と翔太が演じている。セリフはほとんどないが。

 原作はカナダ生まれのコミック作家、ブライアン・オマリーの同名コミック。全6巻あるのだとか。

 脚本は監督のエドガー・ライトと、マイケル・バコール。マイケル・バコールはもともと役者で、TVで活躍していたようだが、映画では「フリー・ウィリー」(Free Willy・1993・仏/米)に出ていて、最近では「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)に出ていたらしい。脚本では本作が3本目ということのようだが、日本公開はない。でも本作の成功で新作が増えていく模様。

 脚本・監督はエドガー・ライト。イギリス生まれで、TVから映画へ。傑作アクション・コメディ「ホット・ファズ俺たちスーパーポリスメン!」(Hot Fuzz・2007・英/仏/米)の脚本・監督を務めた人。面白いわけだ。この2本の成功で、新作が2本控えている。

 字幕でアメイジングを「ヤバいっす」はないだろう。読みにくいし、話す言葉なら良いとしても、読み言葉として違和感がある。監修があだになったか。
 公開2日目の初回、渋谷の劇場は全席指定なので前日に確保しておいて30分前くらいに着いたら誰も並んでいなかった。若い人たちに話題の作品かと思ったら、違ったようだ。25分前くらいに開場。居心地の悪い劇場で、変な照明のためまぶしいのに、本などきわめて読みにくい。この劇場はすわゆるデザイナーズ物件らしい。地下の劇場の方が良かったのに、地下の方が無くなってしまった。残念。新宿のピカデリーでやってくれればなあ。

 最終的に2F席は12〜13人。比較的若い男性が多く、女性は2人ほど。この程度の入りでは早めに打ち切りか。スクリーンはビスタで最初から開いていた。

 アナウンスがあって、ブザーの後始まった予告編で気になったのは……またまたタイトルが最後の一瞬だけというのが多くて、覚えられない。早く出せ!

 上下マスク、実話に基づいた「ジュリエットからの手紙」は、「マンマ・ミーア!」のアマンダ・セイフライド主演。ロミオとジュリエットのお話に基づく観光スポットに手紙を出すと、ジュリエットからの返事が来るというサービスがあって、1通の古い手紙が出てきて、おばあさんの昔の恋が語られるというストーリーらしい。

 両親がゲイで、どちらも女性。精子の提供を受けて生まれた子どもたちという複雑な家族関係を描くのは「ギッズ・オールライト」日本的にはとても考えられないストーリー。どうなんだろう。

 「イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ」は、型破りなアーティストの本人によるドキュメントなんだとか。なんだそれ。

 「奇跡」は是枝監督の九州新幹線の話で、1番列車がすれ違うとき奇跡が起こるという噂話らしい。それを「まえだまえだ」の2人が演じるらしい。


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