Gaku


2010年5月7日(土)「岳 -ガク-」

2010・東宝/テレビ朝日/小学館/トライストーン・エンタテイメント/小学館集英社プロダクション/KDDI/博報堂DYメディア・パートナーズ/毎日新聞社/長野朝日放送/日本出版販売・2時間05分(allcinemaでは126分)

シネスコ・サイズ/ドルビー・デジタル

(一部、字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.gaku-movie.jp/
(音に注意、全国の劇場リストもあり)

長野県警北部警察署・山岳救助隊に赴任してきた椎名久美(長澤まさみ)は、到着早々遭難事件で現場に向かうことになり、山岳ボランティアで隊長の後輩にあたり絶大な信頼を寄せられている救助のベテラン島崎三歩(小栗 旬)と出会う。そして隊長、野田正人(佐々木蔵之介)の命令により、三歩から山での実地訓練を受けることに。久美は、同じく山岳救助隊で亡くなった父と同じものを三歩に感じ、反発するが……。

73点

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 良くできた映画。山の厳しさ、人間の甘さ、そして遭難者を救出しようとする人々の強い思いが伝わってくる。感動的。新人とベテラン、プロ(官)とボランティア(民)、人間と大自然、男と女、山をなめている者と知り尽くした者といった、対立・対称の関係がいくつも用意され、王道の構成で(悪く言えば良くある方法で)組み立てられている。出演者もそれぞれ魅力的で、イメージに良くあっている。またCGもたくさん使われているようだが、実際に山で撮っているらしいショットがあるのも良い。たぶん主要な出演者は特訓をしたのだろう。

 それでも、全体としてのバランスは良くなかった気がする。見終わったとき、さわやかではなく暗い気持ちになる。山へは危険だから行かない方が良いという気持ちになる。どれだけ多くの人たちに迷惑を掛けることになるのかと。

 2時間以上も掛けながら、山の、登山の良さがほとんど描かれていないからだ。ほとんど遭難事故ばかりで、山の恐ろしい面しか描かれていない。無謀な登山者が多く、それに対する関係者の怒りは大きいのだろうが、劇中で語られているように、本来は山は半分は楽しく、半分は恐ろしいものであるはずだ。ほとんど一方的に恐ろしい話なので、主人公が「また山に来た君に感動した」とか「また山においでよ」とか言っても、まったく伝わってこない。むしろ逆説的に言っているのではないかと勘ぐりたくなるほど。ここが最大の問題点。もし、山の素晴らしさが、怖さの半分でも描かれていたら、もっと良い映画になっていたのではないだろうか。

 そして、敢えてなのだろう、年ごろの美男と美女とライバルを用意しながら、恋愛感情が描かれていない。やはり山の厳しさ恐ろしさにフォーカスしたかったということなのか。安易な山ブームに警鐘を鳴らすと。

 原作はビッグコミックオリジナル(小学館)に連載の石塚真一原作の漫画。13巻で累計330万部のヒット作なんだとか。原作はこれほど山を怖がらせる話なんだろうか。映画のキャッチは「命は、命でしか救えない」だが、この内容だと山では誰かが必ず死ぬということになるが……。

 島崎三歩を演じたのは小栗 旬。この前に「シュアリー・サムデイ」(2010・日)を監督している。「踊る大捜査線THE MOVIE 3 やつらを開放せよ」(2010・日)ではインテリ警官、「TAJOMARU」(2009・日)では貴族の次男、「ロボコン」(2003・日)の真面目クンや「あずみ」(2003・日)にも出ている。「クローズZERO」(2007・日)はあまり好きではないが、1期にヤング・スターの仲間入りをした。

 椎名久美を演じた長澤まさみも「ロボコン」(2003・日)に出ていて、第5回の東宝シンデレラ・ガール。デビュー作は宮部みゆきのミステリー「クロスファイア」(2000・日)。メジャーな映画では「隠し砦の三悪人THE LAST PRINCESS」(2008・日)に出ていた。ひさびさのメジャー作という感じ。

 隊長の野田正人を演じたのは佐々木蔵之介。独特の味を持つ人で、「大奥」(2010・日)や「誰も守ってくれない」(2008・日)、「椿三十郎」(2007・日)、「憑神」(2007・日)と時代劇が多い。ほかに「間宮兄弟」(2006・日)や「県庁の星」(2006・日)などもある。

 あとは、ほとんどゲスト出演という感じ。豪華ではあるが……。

 脚本は吉田智子。広告代理店からフリー・ライターとなってNHKの創作ドラマ脚本賞で脚本家デビューした人。主にTVで活躍。映画は「クローズド・ノート」(2007・日)や「Life天国で君に逢えたら」(2007・米)など。

 監督は片山修。TVの人で、「木更津キャッツアイ」(2002)や「タイガー&ドラゴン」(2005)、小栗 旬も出た「花より男子」(2005)など。ベテランらしく手堅い演出。映画のデビュー作は「ヒートアイランド」(2007・日)だとか。こういう映画があったこともしらないので見ていない。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、15分前くらいに開場。観客層は若い人から中高年まで幅広く、男女比も半々くらい。高校生くらいもちらほらいたようだ。とにかく遅れてくるヤツが多く、ケータイを明かり代わりにするヤツまでいて、あきれる。ケータイ・ゲームをやってるヤツもいるし。最終的には287席に9割くらいの入り。さすが話題作。

 気になった予告編は……織田裕二の上下マスク「アンダルシア 女神の報復」は、タイトルからも、絵からも、明らかに「アマルフィ 女神の報酬」(2009・)の続編。どうなんだろう。グロックとハイパワーか。

 上下マスクの「もしドラ」は新予告になり、意外と面白そう。予告編ではマネジメントというより青春スポ根という感じだった。

 暗くなったら隣のオヤジが靴を脱いだ。まったく何とマナーの悪い。靴下まで脱がなくて良かったが、脱ぐヤツもいるからなあ。臭くないって自信があるのだろうか。仮に臭くなくても、周りの人は気分が悪いはず。自宅じゃないんだから……いい年して。


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