Unknown


2010年5月8日(日)「アンノウン」

UNKNOWN・2011・英/独/仏/加/日/米・1時間53分

日本語字幕:手書き風書体下、太田泰子/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Super 16、クレジットでは8mmも)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(英12A指定、米PG-13指定)

公式サイト
http://wwws.warnerbros.co.jp/unknown/
(音に注意、画面は止まらない。全国の劇場リストもあり)

アメリカの植物学者マーティン・ハリス博士(リーアム・ニーソン)は、妻のエリザベス(ジャニュアリー・ジョーンズ)を伴い学会に出席するためベルリンへとやって来る。しかし、ホテルに着いたときパスポートを入れたアタッシュ・ケースを空港に忘れたことに気付き、マーティンは1人タクシーで空港に戻るが、途中で交通事故に巻き込まれ、意識を失って病院に収容される。気付くと断片的な記憶しかなく、妻を心配して強引に病院を抜け出してホテルに向かうが、妻は知らない人だとはねつけ、自分こそマーティン・ハリス博士だと主張する男性(エイダン・クイン)が現れる。

73点

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 なかなかスリリングで、最後までグイグイと引っ張られてしまう。アクションとドラマの比率もちょうど良く、楽しめる。

 ただ、一言でいうとこれは「ボーン・アイデンティティ」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)とほとんど同じ物語構造。だからラストのどんでん返しも、ボクでもわかってしまう。それにタイトルでUnknownのUnだけ遅れて出てくるから、実はknownなんではないかと予想もつく。タイトルやクレジットの文字も1文字だけ遅れて出てくるような見せ方で、ミステリアスで実にいい雰囲気なんだけど……。まあ、どんでん返しはそれほど重要な部分ではなく、謎を解きつついかに事件の発生を抑えるかにあるのだろうから、それはマイナスとはならないのだが。

 マーティン・ハリス博士を演じたのはリーアム・ニーソン。イメージは文学作品的だが、実際には結構B級作品にも出ている。サム・ライミ監督のホラー・アクション「ダークマン」(Darkman・1990・米)に出たかと思えば、スティーヴン・スピルバーグ監督の「シンドラーのリスト」(Schindler's List・1993・米)や「マイケル・コリンズ」(Michael Collins・1996・英/アイルランドほか)、「レ・ミゼラブル」(Les miserables・1998・英/独/米)に出て、最近では残念な「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)でゼウスをやっていたりする。

 妻のエリザベスを演じたのはジャニュアリー・ジョーンズ。雰囲気が役にぴったり。トミー・リー・ジョーンズが監督した「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」(The Three Burials of Melquiades Estrada・2006・米/仏)に出ていて、その後TVの「MAD MENマッドメン」(2007〜2009)で注目されたらしい。

 巻き込まれてマーティン・ハリス博士を助けることになる女タクシー運転手ジーナはダイアン・クルーガー。ドイツ生まれの美女で、ブラッド・ピットの「トロイ」(Troy・2004・米/マルタ/英)で絶世の美女ヘレンを演じて注目され、「ナショナル・トレジャー」(National Treasure・2004・米)でコメディもいけることを証明した。最近出ていたのはタランティーノの「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)で、着実にキャリアを重ねている感じ。

 自分こそ マーティン・ハリス博士だと主張するもう1人の男を演じたのはエイダン・クイン。古くはリチャード・ドレイファスのアクション・コメディ「張り込み」(Stakeout・1987・米)や、見えないものが見えるサスペンス「瞳が忘れない/ブリンク」(Blink・1994・米)などに出演。二枚目役からイヤらしい悪役まで演じられる人。「マイケル・コリンズ」(Michael Collins・1996・英/アイルランド/米)ではリーアム・ニーソンと共演している。最近は日本公開作が少なくどうしたのかと思っていたら、ちゃんと出ていた。

 元秘密警察の探偵というちょっと難しい役はブルーノ・ガンツ。ボクは退屈だったが話題になった「ベルリン・天使の歌」(Der Himmel uber Berlin・1987・独/仏)で主役の天使を演じ、傑作「ヒトラー 〜最後の12日間〜」(Der Untergang・2004・独/伊/墺)でヒトラーを熱演した。本作ではもっと活躍しそうだったが、ちょっと残念。しかし存在感ばっちり。さすがにうまい。

 最後に現れる謎の男はフランク・ランジェラ。実に謎めいた雰囲気を持っている人。古くは「ドラキュラ」(Dracula・1979・米/英)や、ケヴィン・クラインが大統領を演じた「デーブ」(Dave・1993・米)に出ている。優しげな副官、参謀というイメージもある。最近ではニクソンを演じた「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)、怪しい紳士を演じた「運命のボタン」(The Box・2009・米)など。

 リーアム・ニーソンの最近のアクション作品「96時間」(Taken・2008・仏/米/英)に引っ掛けて作ったような印象もあるが、原作はちゃんとあって、作者はフランス生まれのディディエ・コーヴラール。数々の賞を受賞しており、「片道切符」と「妖精の教育」が映画化されているそうで、ほかに2本が映画化に向けて準備中だという。本作の原作は“Out of My Head”。TVや映画の脚本も手掛け、監督作も1本ある。

 脚本はオリバー・ブッチャーとスティーブン・コーンウェルの2人。オリバー・ブッチャーはこの前に劇場映画だとショーン・ヤング主演のコメディ「ジキル博士はミス・ハイド」(Dr. Jekyll and Ms. Hyde・1995・英/米)を書いている。ほかにTVムービーが2本。スティーブン・コーンウェルは監督でもあり、劇場作品ではマイケル・ペレの「キリングストリート」(The Killing Streets・1991・イスラエル/米)と、話題作の続編「フィラデルフィア・エクスペリメント2」(Philadelphia Experiment II・1993・米)を手掛けているが、どちらもIMDbでは5点以下の低評価。

 監督はジャウム・コレット=セラ。スペイン生まれの人で、あの「24」のジャックの娘役の人が出たホラーの再リメイク「蝋人形の館」(House of Wax・2005・豪/米)や、後味の悪さで話題となったホラー「エスター」(Orphan・2009・米/加ほか)を監督している。スペイン・ホラーの語り部の1人らしい。なるほどそうか。

 プロデューサーの1人がハリウッドのヒット・メーカー、ジョエル・シルバー。ホラーも結構多く手掛けていて、「蝋人形の館」と「エスター」もプロデュースしている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前に到着したら、劇場自体がまだ開いていなかった。25分前くらいに開いて建物の中へ。15分前くらいに開場。若い人から中高年までいたが、メインは中高年。男女比はほぼ半々くらい。最終的には157席ほぼすべてが埋まった。

 気になった予告編は……上下マスクの「ハリー・ポッターと死の秘宝PART 2」はようやく3D上映になるらしいが、3Dっていってもなあ。あまり価値はない。プラス200〜300円なら良いけど……。

 スクリーンが左右に広がってシネスコになって「赤ずきん」の予告。狼が村を襲うだけでなく、昼間は人間の姿で村人に紛れることでサスペンスを増し、少女との恋も盛り込んで大人のおとぎ話になっているらしい。面白そう。


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