Der rote Baron


2010年5月21日(土)「レッド・バロン」

DER ROTE BARON・2008・独/英・2時間09分(IMDbでは106分)

日本語字幕:丸ゴシック体下/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル

(独12指定、英12A指定)(2週間限定公開)

公式サイト
http://www.redbaron.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

第一次世界大戦中の1916年、ドイツ軍のリヒトホーフェン少尉(マティアス・シュヴァイクホーファー)はイギリス軍のパイロットの葬儀に上空から花束を投げ敬意を表する。そして基地に戻ると、イギリス軍の飛行機が墜落したというので現場へ駆けつけ、パイロットのロイ・ブラウン大尉(ジョセフ・ファィンズ)を救出し、看護婦のケイト(レナ・ヘディ)に託す。そしてイギリス軍のエース・パイロット、ラノー・ホーカー少佐(リチャード・クラコ)を撃墜し、英雄として表彰され、飛行部隊の指揮官に任命され、その活躍はプロパガンダとして利用されるようになっていく。

75点

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 IMDbでは6.0点とそこそこの評価だが、なかなか面白かった。史実に基づき、レッド・バロンがいかにして英雄になり、いかにして恋をし、いかにして戦死したかを1つ1つ積み上げるように描いている。そして第一次世界大戦時の、中世の騎士同士の戦いのような空中戦が迫力の映像で描かれている。しかも、戦争の悲惨さもちゃんと描いているところが素晴らしい。単なるアクションものではない。戦争を描くとなれば、それは避けて通れない。避けたものは実に薄っぺらなものとなる。本作はしっかりとした重みがある。

 雰囲気は押井守監督のアニメ「スカイ・クロラThe Shy Crawlers」(2008・日)によく似ている。というか「スカイ・クロラ」が第一次世界大戦の航空戦ものに似ているのか。ただ本作は歴史的事実に基づいており、起きたことと時間は実際のものに連動している。

 空中戦は実に見事で、たぶん3D-CGも駆使していると思うが、一緒に空を飛んでいるように気持ちになる。公式サイトによると、何と実機の実物大模型を23機も作ったという。合成用のグリーン・スクリーンはヨーロッパ最大規模だったのだとか。2年以上の準備を経て、16日間かかって撮影されたらしい。機体は最初、複葉機のアルバトロスDr.IIで、後に全体を真っ赤に塗った三葉機のフォッカーDr.Iに乗り換える。銃の描写もリアルだった。ちゃんと毎回シュパンダウMG08/15のボルト・ハンドルを引いている。フォッカーの工場見学まであるところがマニアックだった。

 レッド・バロンは赤い男爵だが、今風にいえば「赤い彗星」だったかも。貴族、そしてスカーフ。3D上映だったらもっと迫力があっただろう。ただ、多くの人が酔ったかも知れないが。

 若干の違和感があったのは、ドイツ軍もイギリス軍もフランス軍もすべて英語を話していること。英語圏の国に売りたいということなのだろう。

 リヒトホーフェンを演じたのはマティアス・シュヴァイクホーファー。ドイツ生まれで、トム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)に出ていたらしい。日本にはまだあまりなじみがない。

 その恋人の看護婦ケイトを演じたのはレナ・ヘディ。この前の「ブロークン」(The Broken・2008・仏/英)やTVドラマの「ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ」(2008〜2009・米)は残念だったが、「300〈スリーハンドレッド〉」(300・2007・米)は良かった。本作も、ちょっと冷たい感じがなかなか良い。

 戦友のヴェルナー・フォスを演じたのはティル・シャュヴァイガー。ドイツ生まれだが、ハリウッド作品に良く出ている。古くはチョウ・ユンファの「リプレイスメント・キラー」(The Replacement Killers・1998・米)や、シルヴェスター・スタローンの「ドリヴン」(Driven・2001・米/独/豪)、アンジェリーナ・ジョリーの「トゥームレイダー2」(Lara Croft Tomb Raider: The Cradle of Life・2003・米/独ほか)、最近ではクエンティン・タランティーノの「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)に出ている。

 イギリス軍のパイロット、ロイ・ブラウン大尉を演じたのはジョセフ・ファィンズ。ハリウッド作品に良く出ているがイギリス生まれで、「恋に落ちたシェイクスピア」(Shakespeare in Love・1998・米/英)でブレイクし、ケイト・ブランシェットの「エリザベス」(Elizabeth・1998・英)、ジユード・ロウの「スターリングラード」(Enemy at the Gates・2000・米/独ほか)、アル・パチーノ「ヴェニスの商人」(The Merchant of Venice・2004・米/伊ほか)でシリアスな役を好演。最近はTVドラマの「フラッシュフォワード」(2009〜2010・米)で活躍中。

 脚本・監督・制作はニコライ・ミューラーショーン。ドイツ生まれだが活動拠点はアメリカなんだとか。アメリカとドイツのTVで活躍していたらしい。日本公開作は始めて。本作の脚本には4年かけたらしい。

 公開初日の初回、銀座の劇場は初回のみ全席自由で、50分前くらいに着いたらすでに22人ほどの列。高齢者寄りの中高年ばかりで、しかも男性のみ。案内も整列もないまま列が伸びて行き、40分前くらいに50人ほどになって隣のビルのガードマンが来て列を折り曲げるように指示。30分前には100人以上になり、ようやく窓口が開いた。初回のみ全席自由だが、前売り券を持っていても当日券との引き換えが必要。戦争映画だからか、若い人は数人で、女性も2〜3人。母親に連れられた6〜7歳の男の子や、父親に連れられた5〜6歳の男の子もいた。

 最終的には496席に8割くらいの入り。2週間の限定公開ということもあったのかも知れないが、なかなか良い入り具合。

 気になった予告編は……上下マスクの「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」は面白そうな感じ。「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)でブラッド・ピットを小柄な老人にしたのと同じ技術を使ってクリス・エヴァンスを小柄できゃしゃな男にし、科学実験の失敗か何かでマッチョな大男にする。これだけでも凄そう。トミー・リー・ジョーンズも出ているし。

 テレンス・マリック監督の「ツリー オブ ライフ」厳格な軍人の父に育てられた息子が宇宙に行く話のようだが、絵がキレイで見て見たくなる。ただ前作「ニュー・ワールド」(The New World・2005・米/英)があれだからなあ。とにかくタイトルは早く出して欲しい。


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