Princess Toyotomi


2011年5月28日(土)「プレンセス トヨトミ」

2011・フジテレビ/関西テレビ放送/東宝・1時間59分

ビスタ・サイズ/ドルビー・デジタル



公式サイト
http://www.princess-toyotomi.com/
(全国の劇場リストもあり。表示が遅い)

鬼の松平と恐れられる松平(堤 真一)率いる、ミラクル鳥居(綾瀬はるか)、新人のアサヒ・ゲーンズブール(岡田将生)の3人の会計検査院調査官チームは、7月8日金曜日、リストされている企業を調べるため大阪入りしていた。そしてOJOという補助金を5億円もらっている組織の検査を始める。帳簿などに問題はなかったが、松平がケータイをOJOに忘れたため取りに戻ると、建物はもぬけの殻。怪しいとにらんだ松平は徹底調査を開始。開かずのドアをも開けるように迫る。するとお好み焼き屋の店主、真田(中井貴一)が現れ、案内を買って出る。そして、飛んでもないことを語り出すのだった。

72点

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 なかなか楽しめるSFファンタジー。ギャグもちゃんと笑える。ただ、1つ1つの要素は良いのに、全体としての流れがどうにも納得できないというか、感情移入しづらくなっているように感じた。こんなこともあるんだなあ。細部が良いのに、全体が今ひとつ。原作を読んでいないが、原作通りの流れなのだろうか。もしそうだとしたら、2時間ほどにするため切り捨てられたものが多かったとか

 設定はとてもおもしろい。1615年、大阪、夏の陣から始まる物語。過去と現代、徳川と豊臣、大阪と東京、会計検査院と政府の補助金を受けている団体、役人と民間人、イジメっ子とイジメられっ子、男と女、父と息子……そんな対立構造があちこちに見られる。これがよりコメディの要素を面白くしている。

 ただ、疑問点もいくつか。たとえば団体名がOJO=王女では、子孫が女性しかいないことになる。タイトルに合わせたのか。そもそも冒頭の子孫が生き延びるシーンでは、男の子ではないか。基本的に跡取りは男の子だろう。そして、どうして女の子がちょっと帰ってこなかったくらいで、緊急臨戦態勢となってしまうのか。人質に取られたという確証もなく、ただ帰りが遅いだけだ。実際にはその女の子を守ろうと保護しただけにいすぎないのに。確認も何もしないでいきなり戦うために立ち上がるとは。後で感じる分には良いが、見ているうちに感じると、集中できなくなってくる。

 またイジメの件で組事務所から代紋を奪ってくるというミッションは、途中で終わってしまう。窓から落ちてどうなったんだよ。メインの流れに関係ないから描かなかったとか。

 そして女の子が王女に見えない。それらしい雰囲気がない。シロウトのような一本調子のセリフ回し、しかも滑舌が悪いと来た。残念!

 一部浅いシーンもあったが、全体に色は濃いめ。映像に力がある。CGも効果的に使われている。どこまでも続く廊下は抜群。ただ燃え上がる赤い大阪城はあまりクォリティが高く見えなかったが……。

 クライマックスで警察官が会計検査院調査官チームに向かって脅しで「大阪から出ていけ」と発砲するのはチーフの3インチか。

 配役的にはオール・スター・キャスト的で豪華。ちょい役でも有名俳優が出ている。ちょい役なのにキャラが立ちすぎていて、それが気になってスムーズなストーリーの流れを阻害していると思う。プロデューサーとしては何でも盛り込んでおきたいのだろうが、興行的には良いのだろうが、クォリティ的には逆効果ではないか。

 堤 真一はどの映画でも実に良い。演技しているという感じがなく、実に自然。それでいて説得力もあるし感情も伝わってくる。また「SPACE BATTLESHIPヤマト」(2010・日)はちょっと……。しかしTV版の「SP」(2007)、「クライマーズ・ハイ」(2008・日)、「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)、「姑獲鳥の夏」(2005・日)、古くは「MONDAYマンデイ」(1999・日)など良かった。

 綾瀬はるかもコメディエンヌとしていい味を出している。「ハッピー・フライト」(2008・日)でもそんな感じだった。女座頭市を演じた「ICHI」(2008・日)は残念な感じだったが、最も良かったのはサイボーグを演じた「僕の彼女はサイボーグ」(2008・日)ではないだろうか。

 岡田将生は最近映画が多いが、TVで活躍していた人。映画ではショッキングな映画「告白」(2010・日)の熱血教師役がなかなかハマっていて良かった。つい最近TVムービーの「ヤングブラック・ジャック」(2011)で主役の難しい役をリアルに演じていた。本作のちょっとキザな感じが良くハマっていた。

 大阪国総理大臣を演じた中井貴一もいい雰囲気。なんと言っても山田太一のTVドラマ「ふぞろいの林檎たち」(1983)が圧倒的に良かった。映画では市川崑作品「ビルマの竪琴」(1985・日)が印象に残ったが、崔洋一監督の「マークスの山」(1995・日)も良かった。「ヘブン・アンド・アース」(天地英雄・2003・中)では中国映画に出演し、「鳳凰 わが愛」(2007・日/中)ではプロデューサーもやっている。

 公認会計士の長曽我部は笹野高志。独特の存在感。TVも含め実にたくさんの作品に出ている。ということは多くの人と共演している。アカデミー賞作品「おくりびと」(2008・日)や、「釣りバカ日誌」(1988・日)は第1作目から出続けている。古くは和田誠監督作品「麻雀放浪記」(1984・日)や大林宣彦監督の傑作「異人たちとの夏」(1988・日)にも出ている。「男はつらいよ」シリーズなど山田洋次監督作品が多いようだ。

 女の子になると突如セーラー服を着て登校する真田大輔は森永悠希。国分太一の落語映画「しゃべれども しゃべれども」(2007・日)に出ていて、その後はTVで活躍しているらしい。妙な説得力があり、今後も期待できそうだ。

 原作は万城目学の小説「プリンセス・トヨトミ」。デビュー作「鴨川ホルモー」は映画化され、第2作「鹿男あをによし」はTVドラマ化、本作で直木賞候補となっている。凄い人だ。なので、こんなに疑問点の多いものではないと思うが……。

 脚本は相沢友子。TVの脚本家で、最近は映画も多い模様。TVの「鹿男あをによし」も手掛けている。映画としては、見ていないが、「大停電の夜に」(2005・日)や「重力ピエロ」(2009・日)「東京島」(2010・日)など。

 監督は鈴木雅之。もともとTVの人で、「世にも奇妙な物語」(1990〜2009)、「ショムニ」(1998〜2002)、「HERO」(2001)など。「鹿男あをによし」も手掛けている。映画では「GTO」(1992・日)、「HERO」(2007・日)など、本作で5作目。笑わせが上手い。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で金曜日に確保して、30分前に到着。15分くらい前に開場。観客層は若い人から中年くらいがメイン。漫画を良く読む年代ということか。高齢者はほとんどいなかった。男女比は3対7で女性。最終的には157席ほほすべてが埋まった。

 気になった予告編は……ジブリの新作アニメは「コクリコ坂から」。企画と脚本は宮崎駿で、監督はなぜか前回あれだけ宮崎駿が反対した息子の宮崎吾郎。どうなっているのだろう。よくわからない。

 スクリーンが左右に広がって「アマルフィ 女神の報酬」の続編「アンダルシア 女神の報復」。G36C、ワルサーP99、グロックなどが登場するかなりのアクションものらしい。


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