The Adjustment Bureau


2010年5月29日(日)「アジャストメント」

THE ADJUSTMENT BUREAU・2011・米・1時間46分(IMDbでは米版137分)

日本語字幕:手書き風書体下、栗原とみ子/ビスタ・サイズ(with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定)

公式サイト
http://adjustment-movie.jp/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

上院議員候補の、現下院議員デヴィッド・ノリス(マット・デイモン)は、選挙で優位に立っていたが、投票直前自らのスキャンダルで失速、落選してしまう。そんなとき偶然に出あった女性エリース・セラス(エミリー・プラント)に一目ぼれし、彼女のアドバイスに従ってざっくばらんな敗戦宣言をする。同じ頃、謎の男ハリー(アンソニー・マッキー)は上司に念を押され、朝7時05分にコーヒーをこぼすことを確認。ところがウトウトしてしまい、時間になってもデヴィッドのコーヒーはこぼれず、バスに乗ると偶然にもエリースと再会をはたす。そこでコーヒーをこぼし、それがきっかけで彼女の電話番号のメモをもらう。会社に出社すると、雰囲気がおかしく、奇妙な男達が何かをやっているのを目撃してしまう。薬で気を失わされたデヴィッドはどこかへ連れ去られ、リチャードと名乗る男(ジョン・スラッテリー)が現れ、にわかには信じられないような話を始めるのだった。

75点

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 SFアクション・ラブ・ストーリー。泣かせる寸前くらいまで行った。危ない、危ない。もっと「マイノリティ・リポート」(Minority Report・2002・米)のような話かと思っていたが、さすがに短編が原作ということもあってか、あまり予算のかからないコンパクトな作品だった。小粒だがぴりりと辛い。しかも思った以上のラブ・ストーリー。結構難しくてシリアスな問題を含んでいて考えさせられる。

 物語の構造としては通常のラブ・ストーリーと変わらない。偶然出会う男と女。2人は魅かれあって恋に落ちるが、それを邪魔する障害が現れる。普通の物語ならそれが親だったり、親友だったり、兄弟姉妹だったり、病気だったり、事故や、過去の事件だったりするわけだが、本作ではSFらしく、それが神を暗示させる「調整局」の議長で、議長が書いた運命の書に従って物事が動くように活動しているエージェント、エンジェルと呼ばれる黒服ソフト帽の男達になっている。ここが本作のミソ。特に新しいことはない。

 主人公の下院議員デヴィッド・ノリスは下半身露出事件などを起こすものの、実に好人物で観客も彼に魅了される。なにしろ大統領候補だ。道で見ず知らずの人から声をかけられても、イヤな顔をせず笑顔で答える。そんな彼が、魅力的な女性エリースと出会い、究極の選択を迫られる。エリースと結婚すれば、家庭に入って良い妻となるが、ダンサーとしては近所のダンスの先生で終わる。結婚しなければ、彼女はダンサーとして大成し、世界で大活躍する。そう言われ、デヴィッドは選ばなければならなくなる。しかも「議長」が書いた運命の書には結ばれないと書かれているのだ。そうでありながら、何年かの間を置きながら、2人は運命に逆らって出会ってしまっているという事実。あなたならどちらを選ぶ?

 好人物デヴィッド・ノリス下院議員を演じたのはマット・デイモン。好人物を演じさせるとピタッとハマる。アクション・ファンとしては「ボーン・アイデンティティー」(The Bourne Identity・2002・米/独/チェコ)が良かった。最近出たのはイーストウッド監督の「ヒア アフター」(Hereafyter・2010・米)や、リメイク西部劇「トゥルー・グリット」(True Grit・2010・米)。

 恋人となるエリース・セラスはエミリー・プラント。「プラダを着た悪魔」(The Devil Wears Prada・2006・米)でアン・ハサウェイの先輩を演じていた人。「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」(Charlie Wilson's War・2007・米/独)や、「サンシャイン・クリーニング」(Sunshine Cleaning・2008・米)、「ヴィクトリア女王 世紀の愛」(The Young Victoria・2009・英/米)、最近では「ウルフマン」(The Wolfman・2010・米)や残念だった「ガリバー旅行記」(Gulliver's Travels・2010・米)に出ている。

 デヴィッドを気にかける黒人エンジェルのハリーはアンソニー・マッキー。古くはエミネムの「8 Mile」(8 Mile・2002・米/独)に出ていたらしい。そしてイーストウッドの傑作「ミリオンダラー・ベイビー」(Million Dollar Baby・2004・米)、スピルバーグ製作の「イーグル・アイ」(Eagle Eye・2008・米/独)、爆発物処理班を描いた「ハート・ロッカー」(Thge Hurt Locker・2008・米)でサンボーン軍曹を演じていた人。

 もう1人の厳しいエンジェル、リチャードソンはジョン・スラッテリー。アンソニー・ホプキンスの「9デイズ」(Bad Company・2002・米/チェコ)やイーストウッドの「父親たちの星条旗」(Flags of Our Fathers・2006・米)、「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」、そして最近では「アイアンマン2」(Iron man 2・2010・米)に出ていた。

 もっと上のエンジェル、トンプソンを演じたのはテレンス・スタンプ。不気味な役や憎たらしい悪役が多い人。1960年代から活躍している人で、1990年代に見かけなくなって、「イギリスから来た男」(The Limey・1999・米)で久々に見たときに、やっぱり怖かった。この前にトム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)に出ている。

 デヴィッドの選挙参謀チャーリーを演じたのはマイレル・ケリー。悪役か刑事役なんかが多い人。本作の前に「完全なる報復」(Law Abiding Citizen・2009・米)に出ている。

 原作はSF作家のフィリップ・K・ディックの短編「調整班」。脚本は監督と製作も兼ねたジョージ・ノルフィ。SFの「タイムライン」(Timeline・2003・米)、ヒット・リメイクの続編「オーシャンズ12」(Ocean's Twelve・2004・米)、マイケル・ダグラスの陰謀もの「ザ・センチネル/陰謀の星条旗」(The Sentinel・2006・米)、スパイ・アクションの続編「ボーン・アルティメイタム」(The Bourne Ultimatum・2007・米/独)などを手掛けている。本作が監督デビュー作のようで、作りたかった作品なのだろう。今後に期待が持てそう。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて、30分前くらいに到着。15分前くらいに開場し場内へ。意外と若い人は少なく、メインは中高年。男女比もSFということでか、7対3くらいで男性が多かった。最終的に127席の9割くらいが埋まった。遅れてくるヤツが多く、ひょっとしたらほぼ満席だったかも知れない。

 気になった予告編は……上下マスクの「タンタン」はスピルバーグ印の3D-CGアニメ。フルCGのようで、なんだかロバート・ゼメキスの3D-CGアニメのようで、どこか不自然。不気味の谷にあるような雰囲気。どうなんだろう。リアルではなく、漫画をめざせばいいのに。

 それにしても、隣のオヤジが上映が始まったら靴を脱ぎ、臭くはなかったが気になって映画に集中できなかった。最近はオヤジだけでなく、若い女でも靴を脱ぐヤツがいる。マナー的にどうなんだろう。


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