X-Men: First Class


2010年6月12日(日)「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」

X-MEN: FIRST CLASS・2011・米・2時間12分

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル・サウンド(IMDbではドルビーとドルビー・デジタル)

(米PG-13指定)(デジタル上映もあり)

公式サイト
http://movies2.foxjapan.com/xmen-fg/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

第二次世界大戦時のポーランド、1944年、ユダヤ人収容所。母と引き離された少年エリック・レーンシャー(マイケル・ファスベンダー)は、強い悲しみと怒りから能力が発現し、金属の扉を曲げてしまう。それを見ていたドイツ人科学者のセバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)は、その力を利用するため母を釈放すると偽りコインを動かすようにいうが、エリックはうまく動かせない。業を煮やしたセバスチャンはできなければ母を殺すと脅し、本当に射殺してしまう。それによりエリックはとてつもなく大きな力を発揮する。
同じころ、アメリカ・ニューヨーク州ロチェスターの豪邸でチャールズ・エグゼビア少年(ジームズ・マカヴォイ)は深夜に物音で目を覚まし、空腹で侵入した少女レイブン・ダークホルム(ジェニファー・ローレンス)と出会い、変身能力を持つミュータントであることを知り、ボクだけじゃないと喜んで迎え入れる。
1962年、成人したエリックは復讐のため、ナチスの金塊を手がかりに、国外逃亡したセバスチャンを追っていた。一方、チャールズはミュータントに関する論文で大学教授に認定される。そしてセバスチャンはアメリカ軍のヘンリー大佐(グレン・モーシャワー)を取り込み、ソ連に対抗するミサイルを配備させようとしていた。しかしそれをCIAのモイラ・マクタガート(ローズ・バーン)が追っていた。

85点

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 面白い。痛快。気持ち良い。あまり期待しないようにしていたのが良かったのか(キャパの小さなスクリーンでの公開でもあった)、やられたという感じ。息つくヒマを与えないほど速い展開で、次々と目を見張るばかりのミュータントの超能力とその戦いを見せてくれ、ラストまで一気に突っ走る。まったく途中ダレせず、132分を長く感じさせない。

 配役も超有名人は出ていないものの、ちょい役にも有名俳優が出ていて豪華。ちゃんと泣かせたり笑わせたりのドラマがあるのにアクション満載で、ドラマがアクションで語られている。すばらしい。しかもちゃんと最初の話につながるように作られている。サプライズ・ゲストも出てくるし。「惑星戦争」のスペース・オペラのプリクエル3部作とはレベルが違う。お金を払う価値のある作品。これであえて3D上映にせず、じっくり手堅く作ったのが良かったのではないだろうか。演技も皆すばらしい。

 あえて一言でいうなら、これはハリウッド版「水滸伝」だろう。規模は違うが「七人の侍」(1954・日)というか「荒野の七人」(The Magnificent Seven・1960・米)的でもある。それぞれ優れた能力を持つ豪傑を梁山泊=X-MENアカデミーに集め、力を結集して悪を絶ち、世の中を救う、と。

 しかも「ユダヤ人収容所」「逃亡したナチス戦犯」「キューバ危機」などの歴史的事実をうまく取り込み、これまでに積み上げられた「X-MEN」の設定を崩さず、鮮やかにすべてをつなげて見せる。見事としか言い様がない。

 銃器はほかにキューバ危機という時代を反映して、M16A1や、M16ショーティ、AK47、マドセンSMGなど。また敵が使うMP40に似た別のSMGが気になったが、imfdbによると、フランスのホチキス・タイプ・ユニバーサルというものらしい。またM72LAWも出てきた。

 劇中、ソビエトの世界地図には日本がないのも気になった。きっと田路は相手に模されていなかったということなのだろう。

 チャールズ・エグゼビアを演じたのはジームズ・マカヴォイ。TVを経て「ナルニア国物語/第1章:ライオンと魔女」(The Chron icles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe・2005・米/英)でタムナスさんを演じ注目された人。ほかに衝撃的な実話「ラストキング・オブ・スコットランド」(Last King of Scotland・2006・英)の英国医師や、ファンタジーの「ペネロピ」(Penelope・2006・英/米)の恋人役、超絶アクションの「ウォンテッド」(Wanted・2008・米/独)で巻き込まれる青年などを演じている。なかなかいい雰囲気。使っていたのはガバメント。

 親友でライバルとなるエリック・レーンシャーは、皮肉にもドイツ生まれのマイケル・ファスベンダー。出演作には、傑作「300〈スリー・ハンドレッド〉」(300・2007・米)、「イングロリアス・バスターズ」(Inglourios Basterds・2009・米/独)のドイツ軍将校に化けるイギリス軍将校役、などがある。まじめそうな感じが実に良くハマっていた。

 ドイツ人科学者の悪役セバスチャン・ショウを演じたのはケヴィン・ベーコン。さすがにベテラン上手い。悪役が多い人だが、青春映画「フットルース」(Footloose・1984・米)でブレイクした人。次も青春映画で自転車便の「クイックシルバー」(Quicksilver・1985・米)。モンスター・アクション「トレマーズ」(Tremors・1989・米)ではちょっとコミカルな役になり、「激流」(The River Wild・1994・米)やSFホラーの「インビジブル」(Hollow Man・2000・米/独)の悪役は強烈だった。そういえば、だれでも有名人をたどって行くと6人でケヴィン・ベーコンに達するというケヴィン・ベーコン数が話題になったりしたっけ。使っていたのはルガーP08。

 本作では良い役のミスティークは、レベッカ・ローミン=ステイモスが演じていたが、本作ではTVのジェニファー・ローレンスを抜擢。なかなか色っぽいが、ちょいポチャでちょっと雰囲気が変わってしまった。

 セバスチャンの片腕フロストはジャニュアリー・ジョーンズ。つい最近「アンノウン」(Unknown・2011・米/独ほか)でリーアム・ニーソンの妻を演じていた人。美人はもちろんだが、本作ではなかなか色っぽい。

 CIAのモイラ・マクタガートはローズ・バーン。最近、後半が残念なSFホラー「ノウイング」(Knowing・2009・米/英)に母役で出ていた人。真田広之が出たSFスリラーの「サンシャイン2057」(Sunshine・2007・英/米)や、ゾンビ映画「28週後...」(28 Week Later・2007・英/西)で事件の発端となるアホガキを演じていた。使っていたのはワルサーPPK。

 特殊メイクで誰だか良くわからなかったが、良い方のアザゼルはジェイソン・フレミング。SFホラーの「グリード」(Deep Rising・1998・米)でモンスターに食われちゃった人。復讐ホラー「URAMI〜怨み〜」(Bruiser・2000・仏/加/米)の主役は強烈だった。最近は残念なリメイク「タイタンの戦い」(Clash of the Titans・2010・米)に出ていた。

 CIAのミュータント推進派はオリヴァー・プラット。ぽっちゃり系の人で、SFホラー「フラットライナーズ」(Flatliners・1990・米)でケヴィン・ベーコンと競演している。大作もB級もよく出ている。最近はSFパニック「2012」(2012・2009・米)や「フロスト×ニクソン」(Frost/Nixon・2008・米/英/仏)に出ていた。

 ほかにもちょい役で有名俳優が出ている。国務大臣はTV「ツイン・ピークス」(1991・米)の怖いお父さんを演じたレイ・ワイズ。アメリカ海軍の艦長はショッキング映画「スキャナーズ」(Scanners・1981・加)のマイケル・アイアンサイド。そしてサプライズ出演、ヒュー・ジャックマン……という具合。

 よくできた脚本はジェーン・ゴールドマン、ザック・ステンツ、アシュリー・ミラー、マシュー・ヴォーンの4人。ジェーン・ゴールドマンはファンタジー・アドベンチャー「スターダスト」(Stardust・2007・英/米/アイスランド)、傑作アクション・コメディ「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)の脚本をマシュー・ヴォーンとともに手掛けている女性。

 ザック・ステンツとアシュリー・ミラーは少年スパイ・アクション「エージェント・コーディ」(Agent Cody Banks・2003・米/加)の脚本や、これから公開される「マイティ・ソー」(Thor・2011・米)も書いている。TVの残念だった「ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ」や不可思議事件「フリンジ」も書いている。

 マシュー・ヴォーンは本作の監督でもあり、最初はプロデューサーだったが、ダニエル・クレイグの怖いギャング映画「レイヤー・ケーキ」(Layer Cake・2004・)から監督もするようになった。その後ファンタジー・アドベンチャー「スターダスト」(Stardust・2007・英/米/アイスランド)、傑作アクション・コメディ「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)を経て本作へ。今後が楽しみだ。

 プロデューサーの1人がブライアン・シンガー。傑作ミステリー「ユージュアル・サスペクツ」(The Usual Suspects・1995・米/独)の監督で、最初の「X-メン」(X-Men・2000・米)と「2」も監督している。最近監督したのはトム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜日に確保しておいて30分前くらいに付いたらまだ劇場が開いていなかった。5〜10分ほどで開いてロビーへ。10分前くらいにようやく開場。若い人から中高年まで幅広い。下は親に連れられた小学生から。男女比はほぼ半々。始まってからもゾロゾロと(しかも中央付近の席だったり、携帯をライト代わりに入って来たりと、大迷惑!)入って来ていたが、127席はほぼすべて埋まった模様。でも話題作なのに、なぜこんな小さな劇場?

 気になった予告編は……上下マスクの「トランスフォーマー ダークサイド・ムーン」は、マイケル・ベイだから内容に期待はできないと思うが、絵は驚異的。素晴らしい迫力と実在感。また3Dか。絵が命のこのジャンルは向いているのかも。大スクリーンでないと。

 驚いたのは上下マスクの「猿の惑星/猿の惑星/ライズ・オブ・ザ・プラネット・オブ・ジ・エイプス」。またリメイクされるらしい。ただ日本の公式サイトはない模様。猿が人間に取って代わる顛末を描くらしい。ジェームズ・フランコが主演。おもしろそう。

 スクリーンが左右に広がって、暗くなり、本編の上映。


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