Andalucia


2010年6月25日(土)「アンダルシア 女神の報復」

2010・フジテレビジョン/東宝/電通/ポニーキャニオン/日本映画衛星放送/アイ・エム・ピー/FNS 27社・2時間05分

日本語字幕:手書き風書体、下/シネスコ・サイズ(マスク、Super 35、Arri)/ドルビー・デジタル

(一部字幕上映もあり)

公式サイト
http://www.andalucia-movie.jp/
(全国の劇場リストもあり)

フランスでサミットが開催されることになり、村上財務大臣の(夏八木勲)のため邦人テロ対策室の黒田康作(織田裕二)は、アメリカの財務長官と好物のガレットでパワー・ランチをセッティングする。そのころ、スペインとフランスの間にあるアンドラ公国で日本人投資家・川島(谷原章介)の遺体が発見され、黒谷は捜査を命じられる。現場に着くと、事件の捜査を担当するインターポールの捜査官、神足誠(伊藤英明)が、第一発見者、ビクトリア銀行行員で通訳を担当していたの新藤結花(黒木メイサ)の事情聴取をしていた。神足はその話からルカスという人物との多額の取引に失敗したための自殺ということで処理しようとしていたが、黒田は現場写真から違和感を感じ、独自に捜査を進めることにする。

74点

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 前作「アマルフィ 女神の報酬」(2009・日)の雰囲気をさらにグレード・アップした感じ。TV版の沈んだ感じとは違って良かった。ちょっと「ツーリスト」(The Tourist・2010・米/仏)のようでもあり、楽しめる。しかもアクションは実銃を使っているせいか迫力があり、緊張感もみなぎっていて素晴らしい。日本映画じゃないような印象さえ感じさせる。ほとんどは海外ロケのようで風景も美しいが、室内シーンなどは日本のようで、ちょっと質感というか空気感に違いがあって残念な気はしたが、これはしようがないのだろう。

 主演の織田裕二は「踊る大捜査線」(1997〜)シリーズとは違って全体に落ち着いた感じで、一匹狼。協調性ゼロという設定で、それがまたいい味となっている。しかも舞台は海外で、英語を織り交ぜつつ、前作はイタリア語、今回はフランス語とスペイン語が飛び交う。前作でいい味を出していた若手女性外交官見習いの戸田恵梨香演じる安達香苗も出てくる。サービスとしては前作でほんのちょっとしか出なかったジャーナリスト役の福山雅治がもう少し多めに出てくることだろうか。

 展開は何となく読めてしまうが、ほとんどすべてが最後にピタリとハマって快刀乱麻のごとく解けてしまうのは見事。快感だ。パズルが解けたようなスッキリ感。上手い人がルービック・キューブを完成させた時といおうか。できることはわかっていても、気持ちが良いもの。これは第3作があっても良いかなあ。次はデュバイ(ドバイ)に行くとかいってたけど。

 織田裕二はやっぱりTVの「東京ラブストーリー」(1991)が良かったなあ。そして劇場作品、金子修介監督のコメディの「卒業旅行 ニホンから来ました」(1993・日)なんかに出て、TVの大ヒット作「踊る大捜査線」(1997〜)の主演へ。真保裕一作品は「ホワイトアウト」(2000・日)から。「椿三十郎」(2007・日)はどうかと思うが、「県庁の星」(2006・日)はなかなか良かったし、TV版は別として、劇場版の黒田康作シリーズも良いと思う。

 インターポールの捜査官、神足誠を演じた伊藤英明は、TVスペシャル版の「踊る大捜査線 歳末特別警戒スペシャル」(1997)に、すみれさんをスキーに誘いに来る青年役で織田裕二と共演。ちょっとマニアックな「ブリスター!BLISTER」(2000・日)や「修羅雪姫」(2001・日)で頭角を現し、「海猿ウミザル」(2004・日)で人気を確かなものにした。異色な所では「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)も良かったが、「カムイ外伝」(2009・日)はかなり残念だった。やっぱり「海猿」シリーズか……。使っていた銃はグロック。サイレンサーも使用。

 新藤結花役の黒木メイサは特にないが、話題の人というか旬な人というところか。話題作では「クローズZERO」(2007・日)で雰囲気が良く合っていた感じがして、意外なところでは押井守監督の「アサルトガールズ」(2009・日)があり、SFつながりで「SPACE BATTLESHOPヤマト」(2010・日)もある。

 戸田恵梨香は前作から引き続き同じ外交官役で出演。映画では「DEATH NOTEデスノート」(2006・日)の弥海砂役が抜群に良かった。その後TVによく出ている。残念な映画「GOEMON」(2008・日)や、名作小説の映画化「沈まぬ太陽」(2009・日)、TVドラマの映画版「ライアーゲーム ザ・ファィナル・ステージ」(2009・日)などにも出演。でも本作のようなとぼけた感じのコミカルなテイストの方あっている気がする。眉間にしわを寄せるような役はあまり感心しない。たぶん上手いからだと思うが。

 フランス人刑事役で、テレビ朝日のニュース番組の「新見聞録」のフランス人リポーター、アランが出ていた。

 銃器は日本国内撮影はビッグショット。たぶんハイパワーを使った川島(谷原章介)のシーンがそうではないだろうか。ヨーロッパでのアーマラー(武器係)にはヒューゴ・フェルナンデスの名があった。襲撃者はベレッタM92、スペイン国家警察の特殊作戦チームGEOはG36CやワルサーP99を装備。刑事たちはUSP 2000のようなハンドガンとMP5など。

 原作は真保裕一の「アンダルシア」。脚本は前作で監督補を務めた池上純哉。エロティック・ビデオの監督から「メゾン・ド・ヒミコ」(2005・日)の助監督や「容疑者Xの献身」(2008・日)の監督補を経て、TV版の「外交官 黒田康作」(2011)シリーズや「遺留捜査」(2011)の脚本を担当している。

 脚本協力というのは何をやる仕事なのか良くわからないが、脚本を書くのに慣れていない池上純哉をバックアップしたのかも。TVシリーズやTVムービーの脚本を手掛けており、本作は久々の劇場映画の脚本。最近は「絶対零度」(2010〜)シリーズを手掛けている。

 監督は前作から引き続き西谷弘。TVの演出から「県庁の星」で劇場映画監督デビュー。これがおもしろかった。そして「容疑者Xの献身」でも高い評価を得て、前作・本作へと至る。ドラマだけかと思ったら、本作では黒田康作と新藤結花が乗った車が襲撃されるシーンなどの演出も緊張感があって見事。今後も期待したい。

 公開初日の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保。混むことが予想されるので、間を開けずに席を取るように言われたが、実際には半分も行かない混み方で、腰砕け。30分くらい前に着いてコーヒーを飲みながら待つと、15分くらい前に開場。だいたい中高年で、織田裕二ファンかオバサンが多い印象。男女比は4対6でやや女性が多かった。最終的には607席に4割ほどの入り。話題作の割りには少ないのでは。

 気になった予告編は……まだ、明るいまま、ビデオで上下マスク「ロスト・アイズ」の予告。まあちゃんとした公式サイトもなしだからなあ。

 アニメ「鋼の錬金術師嘆きの丘の聖なる星」の脚本は真保裕一なんだとか。ちょっと意外。

 かつて前売り券発売で女性の大行列ができていた「神様のカルテ」は原作が本屋大賞を受賞した作品らしい。アニメ「コクリコ坂から」は新予告。3D-CGを使っているようで、東京オリンピックの年を描くものらしい。


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