Super 8


2010年6月26日(日)「SUPER 8 スーパーエイト」

SUPER 8・2011・米・1時間52分

日本語字幕:丸ゴシック体下、岸田恵子/シネスコ・サイズ(レンズ、8mm、16mm、35mm、Arri、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル・サウンド、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル、dts、SDDS)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、デジタル上映もあり)

公式サイト
http://www.super8-movie.jp/
(操作がわかりにくく情報が少ない。音に注意。全国の劇場リストもあり)

1979年、アメリカ・オハイオ州の小さな田舎町リリアンのリリアン鉄鋼で事故が発生し、まだ14歳の少年ジョー・ラム(ジョエル・コートニー)の母親エリザベス(ケイトリオーナ・バルフェ)が死亡、保安官助手の父ジャクソン(カイル・チャンドラー)と2人っきりとなる。4カ月後、ジョーは学校の友達、監督役のチャールズ(ライリー・グリフィス)、火薬専門のケイリー(ライアン・リー)、主演のマーティン(ガブリエル・バッソ)、カメラ担当のプレストン(ザック・ミルズ)と、ゾンビ映画の撮影を始めた。そして主人公の刑事に奥さん役が必要になり、チャールズは学校でも美人と評判のアリス(エル・ファニング)に出演を交渉、OKを得る。そして深夜、リリアンの駅で8mmカメラで撮影をしていた時、空軍のチャーター列車が接近、反対から小型トラックが線路に進入してきて正面衝突する。列車は脱線、爆発物を積んでいたことから大爆発する。その模様は8mmカメラに収められていたが、小型トラックを運転していたウッドワード先生(グリン・ターマン)が「このことは誰にも言うな。殺される。逃げろ」という。そして、本当に軍隊がやって来て少年たちは一斉に逃げる。そして、翌日から町では奇妙な事件が起き始める。

80点

1つ前へ一覧へ次へ
 素晴らしいジュブナイル。時代がちょっとの前なので、大人も懐かしい感じで楽しむことができる。しかも作りは子供だましではなく、真剣で大人向き。ハリウッドの冒険ものの要素は押さえているので、だいたい流れは読める。しかしちょっとずつ予想より早く、ハラハラドキドキする。それでいてある種安定感というか安心して見られるところがある。ジェットコースターのようなコントロールされた危険という感じか。印象としては、同じSFジュブナイル「エクスプローラーズ」(Explorers・1985・米)に似ている雰囲気。

 特に導入が良い。実に上手い。最初の数分でほとんどすべての状況がわかるようになっている。巧妙。一部の謎をのぞいては。小さな町で起きた事件だが、ハリウッドらしく国の存在をも揺るがしかねない大事件に発展する。これは予算もかかるし、なかなか作れない。日本だったら、小さな町うで起こってそこで終わる話になるだろうなあ。スケール、予算の掛け方、そしてクォリティ。これがハリウッドで、お金を払って見る価値がある。

 家族を失った悲しみや、友達との関係、親と子、淡い恋心などうまく描かれている。どれも心温まる感じ。ただ、ちょっと映像の凄さや展開の方に力がシフトしているようで、もう少し感情の方に行ってくれても良かったかも。

 なかなかモノが出で来ない感じは、スピルバーグの「JAWS/ジョーズ」(Jaws・1975・米)のようというか、最初の「ゴジラ」(1954・日)のよう。一体そのものとは何なのか、その正体は……引っ張る引っ張る。でも「クローバー・フィールド/HAKAISHA」(Cloverfield・2008・米)や「パラノーマル・アクティビティ」(Paranormal Activity・2007・米)、古くは「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(The Blair Witch Project・1999・米)なんかと違ってちゃんと出現するのでフラストレーションはたまらない。

 主演のジョー・ラム役ジョエル・コートニーは本作が俳優デビューで、劇場映画デビュー。本作の成功でこのあと2本の出演が決まったらしい。1996年生まれの15歳。撮影時は本当に14歳だったようだ。子供らしさが実にいい。

 ヒロインのアリス役はエル・ファニング。とてもかわいく、どこかで見たようなと思ったら、「」(Thge Curious Case of Bemjamin Button・2008・米)でヒロインの7歳の時の役をやっていた女の子。もうこんなに大きくなったか。あの天才美少女子役ダコタ・ファニングの妹だ。2001年に「I am Sam アイ・アム・サム」(I Am Sam・2001・米)でダコタ・ファニング演じるルーシーの2歳の時の役で芸能界デビューというベテラン。さすがにうまい。

 ジョーの父はカイル・チャンドラー。ちょっと困り顔の人で、傑作リメイクの「キング・コング」(King Kong・2005・ニュージーランド/米/独)では確か劇中劇の主役を演じていた人ではなかったか。ほかに「キングダム/見えざる敵」(The Kingdom・2007・米/独)や残念なリメイクSF「地球が静止する日」(The Day the Earth Stood Still・2008・米/加)にも出ているが、TVの方が多い人。腰にはオートマチックを下げていたようだ。抜かないので何かは不明。

 監督・製作・脚本はJ・J・エイブラムス。監督作品は10本、脚本を手掛けたのが20本、プロデュースが26本と、プロデューサーとしての活躍が多い人。TVの「エイリアス/2重スパイの女」(2001〜)や「LOST」(2004〜)、「FRINGE/フリンジ」(2008〜)などのシリーズは有名。監督作品としてはトム・クルーズのアクション・シリーズ「M:i:III」(Mission: Imposible III・2006・米/独/中)や、傑作SF「スター・トレック」(Star Trek・2009・米/独)がある。

 軍はもちろん年代から言ってもM16A1を使用。少年たちが撮影で使っているのはトイガン。スコープ付きの分解したライフルも出てくるが、火薬オタクの少年がSAKOだとひと目で当てる。合っているのかどうかは不明。軍用車両ではM151マット、M113兵員輸送車、M41ウォーカー・ブルドック戦車も登場。

 そうそう、ラストのエンド・クレジットの横で、完成した8mm作品が流れるのも良い。そして当時から、中学生くらいで8mm作品が作れるアメリカの懐の深さ。日本では高校でも8mmが撮れるところは少なく、たいていは大学の映研で撮れるくらい。ちなみに8mmフィルムにはフジのシングル8、コダックのスーパー8、ダブル8などがあった。音を付けるには磁気コーティングが必要で、可能でないものもあった。また磁気テープと同期を取る方式もあったが、シロートにはいろいろと大変だった。本作中ではなんとマイク・ブームが使われており、同録されていることにも驚かされる。

 公開3日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。15分前に開場となって場内へ。観客層は、下は小学1年生くらいから、上は中高年まで幅広かった。男女比はほぼ半々くらい。予告が始まってもまだまだ入ってくる。最終的には287席に8割りくらいの入り。まあまあというところか。

 気になった予告編は……上下マスクの「カンフー・パンダ2」は日本語吹替での予告。面白そうだが、子供向けという感じも。難しいところ。

 スクリーンが左右に広がってシネスコになって007ことダニエル・クレイグが登場。本格的な西部劇のようなのに、宇宙船が登場して……タイトルは「カウボーイ&エイリアン」。悪そうなボスがハリソン・フォードというのも良い。ハリソン・フォードはキャバルリーを使用。とにかくタイトルが出るのが遅い。

 ドラマは期待できないとしても、絵は素晴らしい「トランスフォーマー ダークサイド・ロムーン」はさすがにシネスコだと大迫力。予告編でもサウンドのクォリティも高く、立体的で良く回る。


1つ前へ一覧へ次へ