Thor


2010年7月3日(日)「マイティ・ソー」

THOR・2011・米・1時間54分(IMDbでは115分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、川又勝利/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル・サウンド、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル、dts、SDDS、ドルビー・サラウンド7.1)

(米PG-13指定)(日本語吹替版、3D上映もあり)

公式サイト
http://www.mighty-thor.jp/
(わかりにくい。音に注意。全国の劇場リストもあり)

紀元前965年、ノルウェー。人類をヨトゥンヘイムの氷の巨人族が襲う。人類が滅ぼされそうになった時、見かねたアスガルドのアース神族が現れ追い払った。そして巨人族のパワーの源である「箱」を奪ったため、それ以来、争いは起こらず、世界に平和がもたらされた。現代、アスガルドの王、オーディン(アンソー・ホプキンス)の2人の息子、第1子のソー(クリス・ヘムズワース)と第2子のロキ(トム・ヒドルストン)がともに成人し、跡継ぎを決めることになる。その時、アスガルドの武器庫に巨人族が侵入、あやうく「箱」を奪われそうになる。それを戦争行為と見なしたソーは、弟のロキと友人の戦士、シフ(ジェイミー・アレクサンダー)、ヴォルスタッグ(レイ・スティーヴンソン)、ホーガン(浅野忠信)、ファンドラム(ジョシュア・ダラス)の4人とともにヨトゥンヘイムへ行き戦いを挑むが、父オーディンが現れ取り合えずその場を収める。そしてソーは平和を破り戦争を誘発した罪で、力を奪われた上、地球へ追放される。
ニューメキシコ州で異常電波の調査に訪れていた女子大生のジェーン・フォスター(ナタリー・ポートマン)と同級生のダーシー・ルイス(カット・デニングス)、そしてエリック・セルヴィグ教授(ステラン・スカルスガルド)の目の前に1人の男が落ちてくる。

72点

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 北欧神話に基づくアメリカ、マーベル・コミックの映画化。超豪華なセット、実際に起きているかのようなSFX、カッコいい主人公……まさにアメコミがそのまま実写になって飛び出してきたかのような映画。アメリカでは評価が高く、IMDbでは7.4という高得点。ただ、印象としては残念だった「タイタンの戦い」(Crash of the Titans・2010・米)みたいな感じ。あっちはギリシア神話だが。北欧神話はあまり身近ではないし、まったく新鮮というわけでもない。ギリシア神話なら「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」(Percy Jackson & the Olympians: The Lightning Thief・2010・加/米)もあったか。「ゴッド・ディーバ」(Immortel ad vitam ・2004・仏/伊/英)は神が人間の女とやりまくって妊娠させる話だった。西洋人はこれ系の話が好きなようだ。日本人には今ひとつピンと来ない。

 「俺さま、神さま」というキャッチ・コピーがすべてを語っていたのかも。公式サイトじゃ「マイティ総選挙」なんてのもやってるし。おやじギャグだよなあ。なんでも英語の木曜日のThursdayはこの北欧神話のソーThorからきているんだとか。

 神的な能力の持ち主が地球にやって来て、人間の女と恋に落ちるわけだが、どうもその過程が希薄。完成したら長すぎてカットしたのかも。前半の神の世界の前振り部分はいらなかったのでは。ナレーションとかイラストか何かでも十分だった。確かにそれでアクション満載な感じにはなっているものの、ドラマを描き切れなくなってしまった。ラストの方で主人公がヒロインに向かって君のために戻ってくるといってキスするあたりは、良くできているがどうも感情が伝わってこない。それだったら、もっと恋愛の部分をしっかり描かないと。父と子の確執だとか、次男と長男の競争心なども入れたため、欲張りすぎた感も否めない。

 マーベル・コミックのヒーローものに共通の謎の組織シールドも登場する。彼らはM4A1やグロックなどで武装している。武器庫にはHK416のようなものやレミントンM700ライフルもあるが、スナイパーはあえてコンパウンド・ボウ(アーチェリー)を選ぶ。そのスナイパーが、顔見せで、「ハート・ロッカー」(The Hurt Locker・2008・米)や「ザ・タウン」(The Town・2010・米)のジェレミー・レナー。そしてエージェント・コールソンはいつものクラーク・グレッグ。エンド・クレジットのあとに登場するのはシールドの長官のサミュエル・L・ジャクソン。やっぱり続く?

 ソーがシールドの基地からジェーンの手帳を取り返す時、その下にあった書類にJAPANと書いててあったような気がしたが……。

 ソーを演じたクリス・ヘムズワースはちっとも完璧じゃなかった「パーフェクト・ゲッタウェイ」(A Perfect Getaway・2009・米)で、途中で出会う怪しげなカップルを演じていた。また傑作SF「スター・トレック」(Star Trek・2009・米)の冒頭でカーク船長の父を演じていた。いずれもチョイ役だったが、なぜいきなり主役に抜擢されたのかは不明。体つきはまるでプロレスラーか何かのようで、なかなかのマッチョ。本作の役には合っていた気がする。本作のアメリカでの評価が高く、これから撮影されるものも含めて公開を控えている新作が4本ほどもある。評価はそれらを見てからということになるだろう。

 父王、オーディンはアンソー・ホプキンス。この人が出たことたで重みと説得力が出たとは思うが、この人の良さが出ていたとは思えない。いくらこの人でも無理なものは無理。この前に出た「ザ・ライト[エクソシストの真実]」(The Rite・2011・米)のような映画の方が向いている気がする。

 その妻フリッガはレネ・ルッソ。さすがに57歳、「リーサル・ウェポン3」(Lethal Weapon 3・1992・米)の頃とはわけが違う。ロバート・デ・ニーロのアクション・コメディ「ショウタイム」(Showtime・2002・米/豪)に出ていたころはまだ違和感がなかったものの、本作は老けたなあと言う感じ。

 女子大生のジェーン・フォスターはナタリー・ポートマン。見ていないが「ブラック・スワン」(Black Swan・2010・米)でアカデミー賞主演女優賞を受賞した。「レオン」(Leon・1994・仏)の少女ももうすっかり実力派女優になった。30歳だし。最近特にアート系作品に出るようになった印象。

 エリック・セルヴィグ教授はカテラン・スカルスガルド。悪役が多い人で、ちょっと前、アクションの「RONIN」(Ronin・1998・英/米)で出ていて、最近だと話題作の割りには?の「天使と悪魔」(Angels & Demons・2009・米)に出ていた。

 脚本はアシュリー・ミラー、ザック・ステンツ、ドン・ペインの3人。アシュリー・エドワード・ミラーはこれまでTVがメインだったようで、シーズン2から一気に残念になった「ターミネーター:サラ・コナー・クロニクルズ」(2008・米)や、なかなかミステリアスで面白かった「フリンジ」(2009〜2010・米)を書いた人。映画では少年スパイ活劇「エージェント・コーディ」(Agent Cody Banks・2003・米/加)や、「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)を書いているザック・ステンツはもほとんどアシュリー・ミラーと同じ。

 ドン・ペインもTVの人で、映画はユマ・サーマンのコメディ「Gガール 破壊的な彼女」(My Super Ex-girlfriend・2006・米)や「ファンタスティック・フォー:銀河の危機」(4: Rise of the Silver Surfer・2007・米/独/英)などを書いている。

 監督はケネス・ブラナー。俳優の活動の方が多く、監督としてはシェイクスピア系が多い感じ。ちょっと前にミュージカルの「恋の骨折り損」(Love's Labour's Lost・2000・英/仏/米)、最近オペラの映画化「魔笛」(The Magic Flute・2006・仏/英)などを手掛けている。本作のような作品を手掛けるとは意外。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は前日全席自由で、55分前くらいに着いたら誰も並んでいない。50分前くらいになったらオヤジが2人。30分前くらいになって10人くらいとなり、老若は半々くらい。ほぼ男性ばかりで、カップルが1組。暑い中、20分前くらいに地上のドアが開いて階下の入口へ。この時点で30人くらいに。まもなく開場。7〜8分前で588席に50人くらいで、遅れて入って着た人もいたが、たぶんあまり変わっていないだろう。3D上映は最終回の1回のみ。それを待っているのか。

 カーテンが左右に開いて、暗くなって始まった予告編で気になったのは……少し上下マスクの「スリーデイズ」は、ラッセル・クロウ主演で、殺人容疑で逮捕された妻を助けるため脱獄させるというストーリーらしい。その時間の猶予が3日間。監督・脚本があのポール・ハギスなので期待して大丈夫だろう。

 少し上下マスクの「モールス」は、転校生の少女とイジメられっこの少年のホラーらしい。なかなか怖そう。少女は「キック・アス」のクロエ・モリッツ。ただ、劇場がなあ……。

 久々のメル・ギブソン映画、上下マスクの「復讐捜査線」はなんだか「ペイバック」的な話っぽいが、アクション満載のようだし、監督が「007」シリーズのマーティン・キャンベルなので、これも多分大丈夫だろう。

 スクリーンが左右に広がって「俺さま」映画の予告。さすがにスクリーンが大きいと迫力が違う。上に書いたように、本作のキャッチ・コピーが「俺さま、神さま」。こっちはギャグとして使っていたけど。

 シネスコ・サイズでの「キャプテン・アメリカ」も凄い迫力。これも戦争映画みたい。「ベンジャミン・バトン」的デジタル技術で、クリス・エヴァンスが小男になっている。

 エンド・ロール後に映像ありと注が出てから本編の上映。


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