Cars 2


2010年8月6日(土)「カーズ2」

CARS 2・2011・米・1時間46分

日本語字幕:手書き風書体下、森本 務/シネスコ・サイズ(デジタル、IMAX版は1.44)/ドルビー・デジタル、DATASATデジタル、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル、dts、SDDS)

(デジタル上映、3D上映、日本語吹替版、IMAXもあり)

同時上映「トイ・ストーリー・チューン ハワイアン・バケーション」
HAWAIIAN VACATION・2011・6分
日本語字幕:手書き風書体、下/シネスコの左右マスク(デジタル、1.85)

公式サイト
http://www.disney.co.jp/cars/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

英国スパイのフィン・マックミサイル(声:マイケル・ケイン)は太平洋の石油採掘施設に侵入、特殊なTVカメラを発見するが、ザンダップ教授(声:トーマス・クレッチマン)の一味に見つかり海に飛び込んで脱出を図る。同じ頃、ラジエーター・スプリングスの町にピストン・カップ4連覇のマックィーン(声:オーウェン・ウィルソン)が帰ってくる。その夜、TVで元石油王のアクセルロッド卿(声:エディ・イザード)が新しいエコな燃料「アリノール」を開発し、それを使った自動車レースのワールド・グランプリを開催することを宣言する。そしてイタリア代表のフランチェスコ(声:ジョン・タトゥーロ)が挑発したことで、メーター(声:ラリー・ザ・ケーブル・ガイ)はマックィーンを出場させると言ってしまう。マックィーンはオフに入ったためクルーがいないからと断ろうとするが、ラジエーター・スプリングスのみんながやってくれるというので、ついに出場を決意。第1戦は東京で行われるという。そしてフィンもTVカメラを追って東京に向かう。

82点

1つ前へ一覧へ次へ
 よくできた大冒険物語。子どもにも楽しめる内容になっているが、これはほとんど007映画だ。滑らかで立体的な3D-CGはもはや完璧。デフォルメはありながらも非常にリアルで、海の波も実写のよう。音も絵もクリアーで立体的。色もきれいだ。

 106分間、スパイ・ファンタジーの世界にどっぷりと漬かれる。007映画のパターンをほとんど取り込み、おもわずニヤリとさせられる。カー・チェイスもあるし、ドンパチもあるし(ちゃんと薬莢が飛んでいる)、拷問も、色っぽいボンド・ガール、秘密兵器、手ごわい敵……アクション好きな監督は一度は007映画を撮りたいだろう。きっとラセター監督もそうだったに違いない。それでいて、カーズらしく、カー・レースもちゃんとふんだんに盛り込まれている。そういう意味では爆笑の傑作、ブレイク・エドワーズ監督の「グレートレース」(The Great Race・1965・米)にも似ていると言えるかもしれない。

 ただ、007風冒険談にシフトしすぎたため、感動のドラマがちょっと希薄になった。「友情」が1つの重要なテーマだろうが、いまひとつ弱い。付け足し的印象。

 今回も声の出演は豪華。だいたいもう1人の主役のようなアストンマーチン風英国スパイ役がマイケル・ケインというのがスゴイ。1933年生まれだからもうすぐ80歳。高齢とは言え名俳優だ。アカデミー賞ノミネート6回、受賞2回という輝かしい実績。つい最近「インセプション」(Inception・2010・米/英)に出ていた。

 ザンダップ教授の声はトーマス・クレッチマン。ドイツ生まれで、ナチス・ドイツの将校役なんかが多い。有名なところでは「戦場のピアニスト」(The Pianist・2002・仏/ポーランドほか)があるし、最近だとトム・クルーズの「ワルキューレ」(Valkyrie・2008・米/独)もある。

 スパイのプライベート・ジェットのシドレーの声はジェイソン・アイザック。この人もイギリス生まれで、メル・キブソンの傑作「パトリオット」(The Patriot・2000・独/米)や大ヒット戦争映画「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)、そして超人気シリーズ「ハリー・ポッターと秘密の部屋」(Harry Potter and the Chamber of Secrets・2002・米/英/独)2作目以降などの大作映画で印象に残る役を演じている。

 トッポリーノのイタリアに住むオジサン、アンクル・トッポリーノの声は往年のマカロニ・ウェスタン俳優フランコ・ネロ。「続・荒野の用心棒」(Django・1966・伊/西)のジャンゴ役は強烈だった。「ダイ・ハード2」(Die Hard 2・1990・米)で悪役を演じ、世界にその健在ぶりを示した。

 アンクル・トッポリーノの奥さんのママ・トッポリーノの声は、かつてフランコ・ネロのパートナーだったヴァネッサ・レッドグレーヴ。フレッド・ジンネマン監督の「ジュリア」(Julia・1978・米)でジェーン・フォンダと共演、アカデミー助演女優賞を受賞した。最近見たのは、女性の人生の夕暮れを描いた「いつか眠りにつく前に」(Evening・2007・米/独)のボケが始まった母役。本作は74歳とは思えない若い声だった。

 イタリアのちょっと嫌らしいフォーミュラー・カーのフランチェスコ・ベルヌーイの声はジョン・タトゥーロ。つい最近、残念な「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン」(Transformers: Dark of the Moon・2011・米)に変な役で出ていたばかりだが、この人が良いのはコーエン兄弟の傑作「ミラーズ・クロッシング」(Miller's Crossing・1990・米)のような役だと思うが……。

 クルマのボディにペイントするアーティストのラモーンの声はチーチ・マリン。TVの人気アクション「刑事ナッシュ・ブリッジス」(1996〜2001)シリーズでナッシュの相棒、ジョー・ドミンゲスを演じていた人。

 ビックリするのはイギリス代表として登場するキャラクターがルイス・ハミルトンで、声を担当しているのが本物のF1ドライバーのルイス・ハミルトンということ。

 脚本はベン・クィーン。「Drive」というTVシリーズなどを書いていたらしい。車つながりということか。複雑な話を良くまとめていると思うが、次の作品を見ないと実力のほどはわからない感じ。

 監督はピクサーの副社長でもあるジョン・ラセター。初期の短編CGアニメや、躍進のきっかけとなった「トイ・ストーリー」(Toy Story・1995・米)、「バグズ・ライフ」(A Bug's Life・1998・米)を監督している。宮崎駿監督と交流があることでも知られる。しばらく監督作品がなかったが、本作では監督のほかストーリーも担当している。またジョン・ラセッタイアという役で声の出演もしているらしい。

 公開8日目の3D上映・字幕版の初回、新宿の劇場は全席指定で前日に確保しておいて30分前くらいに到着。10分ちょっと前くらいに開場。入口で3Dメガネを渡す時にレンズを触らないように注意していた。しかし、できれば入場前にケータイを切るように注意もした方がいいのではないだろうか。

 観客層のメインは20代くらいから中高年まで幅広い。小さな子ども連れは外国人の家族。数家族いた。男女比は5.5対4.5くらいでやや男性が多い感じ。遅れてくるヤツが多く、半暗になって予告が始まった時点で、232席に3.5割りくらいの入り。

 まあ驚くのは、暗くなってからケータイを点けるバカ女。しかも片づける気配はなく膝の上に起きっぱなしで時々チェック。用事があるんなら映画に来るな。結局、メール・チェックして途中で出て行った。

 とにかく遅れてくるヤツが多く、上映が始まってからも入って来ていた。最終的にはたぶん5割りくらいの入り。

 気になった予告編は……スクリーンが左右に広がってから、スピルバーグ久々の監督作は第一次世界大戦ものらしい「戦火の馬」。舞台はイギリスで、軍馬として徴用された馬と青年の友情を描くらしい。撮影にお金がかかっているようで、壮大な映像を見ることができる。3月公開のようで、まだ公式サイトはない。

 3D眼鏡をかけてから「三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船」。従来のものとほとんど同じ予告だが、3Dだとカットが速すぎて何が何だか良くわからない。やはり3D用の編集をしないとダメなのでは。

 ピクサーの次回作は「メリダとおそろしの森」。白と、馬と、赤毛の女の子、熊?。内容はまったく不明。来年の夏公開らしい。日本語吹替版での予告。


1つ前へ一覧へ次へ