Edge of Darkness


2010年8月6日(土)「復讐捜査線」

EDGE OF DARKNESS・2010・英/米・1時間56分(IMDbでは117分)

日本語字幕:丸ゴシック体下、松崎広幸/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米PG-13指定、日PG12指定)

公式サイト
http://www.fukushuu-movie.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

ボストンの刑事トーマス・クレイブン(メル・ギブソン)は久しぶりに実家に帰ってきた娘のエマ(ボヤナ・ノヴァコヴィッチ)のようすがおかしいので、何でも話せと促すが、疲れているだけだとごまかされる。しかし、娘は鼻血を流すと慌てた様子で「病院へ連れてって」と懇願、玄関を出たところで、目出し帽の男のショットガンで至近距離から撃たれてほぼ即死する。当初はトーマスを狙ったものと思われたが、復讐を誓い捜査を開始したトーマスは、娘が何か隠していたことを確信する。荷物を調べると、拳銃が出てくる。なぜそんなものを持っていたのか、シリアルから調べると男の名が判明する。

75点

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 タイトルから想像されるB級的なものより重厚。暴力表現も過激で、内容は骨太。ハッピー・エンドとは言えないところが、IMDbでの評価が低くなっている原因かもしれない。しかし感動的で良くできている。

 初めのうちはB級刑事もの的な展開で、かつてメル・ギブソンが演じていたようなステレオタイプの暴走刑事の話かと思いきや、捜査を続けるうちに次第に話は姿を変え、巨大な陰謀にぶち当たり、個人対組織、一般人対権力者の話になっていく。親子の話から、企業の内部告発の話になり、プロのフィクサーや政治家までがからんでくる。このエスカレートがうまい。

 なんでこんなタイトルにしたのだろう。考えた人というより、考えさせた人、それを決定した人に問題ありだろう。「エッジ・オブ・ダークネス」とか「ダークネス」でもいいのに、何か考えないとダメだと無理に考えさせる上司。良くいるんだよなあ……。何もわかっていない。残念。タイトルであやうく見逃すところだった。

 主演のメル・ギブソンは私生活でいろいろと問題アリのようだが、映画はちゃんと作っている模様。本作は出演のみだが、この前に全編マヤ語で撮った「アポカリプト」(Apocalypto・2006・米)の監督・製作・脚本を担当。高い評価を得ている。IMDbでも7.8という高得点。本作は刑事役で使っていた銃はベレッタM92ではなく、グロック。ヒップ・ホルスターは革製。さすがに55歳、やや頭が薄くなってきたようだ。

 その娘役はボヤナ・ノヴァコヴィッチ。セルビア生まれで、オーストラリアへ移住したらしい。メル・ギブソンはアメリカ生まれでオーストラリアへ移住しているから、共通点がある。本作の前に古いスタイルで作ったホラー「スペル」(Drag me to Hell・2009・米)に出ていたらしい。バッグに入れていた銃は、彼からもらったというスプリングフィールド・アーモリー社のウルトラ・コンパクト。ハッキリ刻印が読める。父も娘もアナログ・レコード好きという設定。

 問題処理屋のジェドバーグはレイ・ウィンストン。イギリスのギャング映画「ロンドン・ドッグス」(Love, Honour and Obey・1999・英)に出ていた人で、最近ではオリジナル版野監督によるハリウッド・リメイク映画「ロシアン・ルーレット」(13・2010・米)に出ている。だいたい悪役が多いよう。本作ではなかなか貫録のある悪役で、単なる悪役ではなく、裏を知り尽くしているだけに情けを見せるところがいい。使っていた銃はH&PのP2000。

 娘の勤務先の社長ベネットを演じたのはダニー・ヒューストン。こんな役が多い気がする。最近だとアラスカが舞台のヴァンパイアもの「30デイズ・ナイト」(30 Days of Night・2007・米)のヴァンパイアのボスとか、ウルヴァリンの過去を描いた「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」(X-Men Origins: Wolverine・2009・米)の超能力特殊部隊を創設するストライカーを演じていた。使っていた銃はリボルバー。

 ベネット社長のボディ・カードの1人を演じたフランク・グリロは、出番は多くないがなかなか怖くて印象に残った。止めろと言った手ごと撃たれるし。これまではTVがメインだったようだが、今後活躍しそうな感じ。使っていた銃はP226。そしてSWATはM4カービン。銃器担当はマイケル・パパック。

 原語で技術者のことをグリース・モンキーと自虐的に言っていたが、そういう言い方もあるんだ。

 原作はイギリスのTVドラマの「刑事ロニー・クレイブン」(Edge of Darkness・1985・英)だそうで、書いたのはトロイ・ケネディ・マーティン。全6話からなるミニ・シリーズで、IMDbでは8.7点と言う驚きの高評価。しかもその監督が本作の監督でもあるマーティン・キャンベル。これが認められてハリウッドに進出下という記念すべき作品なんだとか。うーむ、オリジナル版が見たい。ちなみにトロイ・ケネディ・マーティンは傑作ピカレスクものの「ミニミニ大作戦」(The Italian Job・1969・英)、イーストウッドの傑作戦争コメディ「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)、そしてシュワルツェネッガーのアクション「レッドブル」(Red Heat・1988・米)などを書いている人。面白いわけだ。1932年スコットランド生まれで、2009年に亡くなっている。

 脚本はウィリアム・モナハンとアンドリュー・ボーヴェル。ウィリアム・モナハンは骨太で面白かったレオナルド・ディカプリオの「ワールド・オブ・ライズ」(Body of Lies・2008・米)を書いた人。アンドリュー・ボーヴェルはTVの人で、バズ・ラーマン監督の「ダンシング・ヒーロー」(Strictly Ballroom・1992・豪)の初期の脚本を書いているようだ。

 監督のマーティン・キャンベルは1940年ニュージーランド生まれで、「刑事ロニー・クレイブン」が評価されてハリウッドへ進出し「クリミナル・ロウ」(Criminal Law・1989・米)「ノー・エスケイプ」(No Escape・1994・米)とB級系の作品を撮った後、「007/ゴールデンアイ」(GoldenEye・1995・英/米)、「マスク・オブ・ゾロ」(The Mask of Zorro・1998・米/独)と大作をヒットさせた。本作の前には「007/カジノ・ロワイヤル」(casino Royale・2006・英/チェコほか)を撮っている。大ヒットした「ガジノ」も含め、最近のものは今ひとつの感じがするのはボクだけか。

 公開8日目の3回目、銀座の劇場は全席指定で、前日に確保しておいて、25分前くらいに着。ロビーには15〜16人の人。まもなく前回が終了し、掃除が終わってから場内へ。中高年がメインで、女性はやや若い感じ。男女比はほぼ半々。しかしやがておじいちゃんが増えて、6対4くらいに。最終的には469席に4.5割りくらいの入り。なんと8/11が上映最終日とか。短い。

 気になった予告編は……ジャッキー・チェンの記念すべき100本目の作品がやや上下マスクの「1911」。辛亥革命の話らしい。ジャッキーはリボルバーを使っている。

 上下少しマスクで、バイクで7人がやって来るといえば「ワイルド7」。ついに映画になるか。ただ監督が「海猿」の羽住英一郎だが、ガン・アクションが撮れるんだろうか。「ワイルド7」と言えばガン・アクションだ。違うものになるのか。飛葉チャンが瑛太? 草並が中井貴一? 椎名桔平は? 深田恭子は? まさかドロンジョじゃないよね。グロックじゃあ個性がないのでは。

 上下マスク「スリーデイズ」は、大学教授がある日突然逮捕された妻を助けるため、脱獄を計画する話らしい。面白そう。監督が「クラッシュ」のポール・ハギスだし。

 ここにもケータイが平気なオヤジが。ロビーでチェックすりゃ良いじゃないか。なぜわざわざ場内に入ってからチェックするのだろう。映画が終わるとクレジットが流れていてもすぐケータイをチェックするヤツもいるし。ロビーに出てからチェックすればいいじゃないか。


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