Let Me In


2010年8月7日(日)「モールス」

LET ME IN・2010・英/米・1時間56分

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/シネスコ・サイズ(レンズ、in Panavision)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタル)

(英15指定、米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://morse-movie.com/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

1983年3月のある夜、パトカーに先導された救急車で薬品により全身にヤケドを負った男(リチャード・ジェンキンス)が病院に運び込まれてくる。刑事(イライアス・コティーズ)が尋問しようとするが、目を離した隙に「すまない、アビー」というメモを残して投身自殺する。その2週間前…… 信仰を何より大事にする母(カーラ・ブオノ)と12歳の息子オーウェン(コディ・スミット=マクフィー)は、離婚調停中で2人で暮らしていた。そして夜、アパートの前のジャングルジムにいたオーウェンは、自分と同じくらいの歳の少女(クロエ・グレース・モリッツ)と父親が引っ越してきたのを目撃する。雪が積もっているのに、なぜか少女は裸足だった。翌日、その家の窓はダンボールなどで覆われている。オーウェンは学校で不良グループ3人に陰湿にいじめられ、ついに小さなナイフを購入する。そんな時、町で猟奇殺人事件が発生する。

75点

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 家族崩壊の物語のように始まり、ヴァンパイアもののように展開し、学校でのいじめものに転じると、恋愛ものとして閉じる。血は飛び散り、かなり残酷で恐ろしいが、感動的な物語だ。ある意味、純愛なのかもしれない。切ない。感動した。あまり良い小屋ではなかったが、劇場で見て良かった。

 予告編で見た時から、これはスウェーデン映画「ぼくのエリ 200歳の少女」(Lat den ratte komma in・2008・スウェーデン)のリメイクだと思った。ただオリジナル版は上映劇場があまりにマイクロで、パスした。これはぜひともオリジナル版が見たい。

 全体を通して怖い雰囲気がずっと流れているが、それは人間がヴァンパイアに襲われるという恐怖ではなく、人間の血を吸うことでしか生きられないヴァンパイアが、人間に正体を知られてしまうかもしれないという逆の恐怖。そして過酷な境遇に生まれ、イジメまで受ける少年の悲しさ、健気さ、そしてヴァンパイアの少女と恋に落ちたことで、その小さな心に抱えきれないほどの問題を抱えてしまった不幸……などで彩られた恐怖。

 冒頭、ハマー・フィルムと出るが、これはかつてのイギリスのホラー映画製作会社のことだろうか。倒産したのではなかったのか。原作はヨン・アイヴィデ・リンドクヴィストの2004年のデビュー作「MORSEモールス」(ハヤカワ文庫NV)。スウェーデンのスティーヴン・キングの異名をとる人だそうで、世界的なベストセラーなのだという。オリジナル版の脚本も書いている。

 しかし、ラストの運命は、父と思った男が父でなく恋人だったとしたら、ちょっと変わってくる。ヴァンパイアは歳を取らないのだから男だけが歳を取って、父と思った男のように簡単に乗り換えられてしまうのでは。そう思いたくはないが、そういうことではないか。

 主演の少年はコディ・スミット=マクフィー。あの暗い、絶望映画「サ・ロード」(The Road・2009・)でヴィゴ・モーテンセンの息子を演じていた子。どうりでうまいわけだ。オーストラリア生まれの15歳。公開を控えている作品が4本もある売れっ子。

 ヒロインは大人気のクロエ・グレース・モレッツ。傑作アクション「キック・アス」(Kick-Ass・2010・英/米)のあの子だ。アメリカ生まれの14歳。天才子役。他の子役のように壊れてしまわなければいいが。願いはそれだけだ。インタビューなどを見るととても良い子のようだが。何と控えている新作は9本もある。

 父親に見えた男はリチャート・ジェンキンス。古くから活躍している人で、長官とか将軍なんて役の多い人。「キングダム/見えざる敵」(The Kingdom・2007・米/独)ではFBI長官を、コーエン兄弟の「バーン・アフター・リーディング」(Burn After Reading・2008・米/英/仏)では、小市民なスポーツ・ジムの経営者を演じていた。まあ、ようはなんでもできるわけだ。本作は不思議な存在感。ちょっと悲哀が漂っている。

 刑事は悪役の多いイライアス・コティーズ。スナイパー・アクション「ザ・シューター/極大射程」(Shooter・2007・米/加)で、いやらしい悪党を演じていた。本作も独特の嫌らしい雰囲気。良い方なのに、なぜか悪く見えるからスゴイ。使っていたのは1911オート。ただハンマーが起きていなかったから、最初から撃つ事はないと思った。ノン・ガンだったかもしれない。

 監督と脚本はマット・リーヴス。あの話題先行、手持ち大揺れカメラの「クローバーフィールド/HAKAISHA」(Cloverfield・2008・米)の監督だ。良いという人もいるが、ボクは感心しなかった。本作で普通の撮り方もできる事を証明したが、問題は次だろう。今回は、いずれにしてもヒット作のリメイクだ。

 公開3日目の3回目、新宿の劇場は30分前くらいに着いたらロビーにすでに50〜60人の人で大混雑。自主的に列ができていた。20代くらいから中高年まで幅広い。男女比は6対4で男性の方が多い。まもなく案内があって、列を詰める。15分前くらいに入れ替え。全席自由とは言え、長細い劇場で、かなり前席の人の頭が邪魔になるところ。前方1/3ほどなら頭は大丈夫だが、スクリーンを見上げる形になるし……。最終的に224席がほぼ満席。こんなに人気があるなんて。

 チャイムの後、案内があり、カーテンが上にあがって、ほぼ暗くなって予告へ。気になったのは……上下マスクのフルCGアニメ「タンタンの冒険」は新予告、吹替版。どうして写実で行っちゃったんだろう。風景とかは良いとしても、キャラクターはピクサーなどと同じ様にマンガチックにデフォルメというか、カリカチュアライズというか、すれば良かったような。写実だと動きが不自然に感じてしまうし、不気味な感じもする。別な生き物が人間の真似をしているような。

 韓国映画、上下マスクの「ハウスメイド」はなんだかエロティックで、それでいて怖そう。韓国映画らしく、確実に感情を揺さぶる方向なのは間違いない。見たいが、劇場次第かなあ。

 上下マスクの、昔の人気ホラー・シリーズ最新作「スクリーム4」はウェス・クレイヴン監督で、オリジナル・キャストということなので、期待できるかも。あれから11年……。IMDbでは6.7点なので外すことはなさそうだ。やっぱり劇場次第か。


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