The Mechanic


2010年8月15日(月)「メカニック」

THE MECHANIC・2011・米・1時間33分

日本語字幕:丸ゴシック体下、種市譲二/シネスコ・サイズ(マスク、with Panavision、Super 35)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS

(米R指定、日R15+指定)

公式サイト
http://mechanic-movie.jp/
(全国の劇場リストもあり)

組織の敏腕殺し屋、メカニックのアーサー・ビショップ(ジェイソン・ステイサム)は、綿密な調査と緻密に計算された計画で、殺しの証拠をまったく残さないのが信条。彼に指令を出すのは古くからの友人のハリー・マッケンナ(ドナルド・サザーランド)。ある日、ハリー暗殺の指令が届き、アーサーは組織のボスのディーン・サンダーソン(トニー・ゴールドウィン)に確認したいと面会を求める。ディーンによると、自分とハリーしかしらない南アフリカの仕事で、送り込んだチームが全滅したという。裏切り者はハリーしか考えられないと。君なしでも実行すると言われ、自らの手でピリオドを打つことを決心。そして実行後、罪悪感を覚えたアーサーはハリーの息子で、定職にも就かずブラブラしているスティーブ・マッケンナ(ベン・フォスター)を仕事に誘い、メカニックとしての仕事を教え込むことにする。

73点

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 実にテンポよく、ハラハラ、ドキドキのテンションを保ったまま、一気にラストまで見せる。ジェイソン・ステイサム演じるアーサー・ビショップのプロらしい知識と、計画、そして実行の鮮やかさ、手際の良さに感心させられる。実に見事。まさにジェイソン・ステイサム向きの役。ぴったり。

 オリジナル版の「メカニック」(The Mechanic・1972・米)は劇場で見ているが……チャールズ・ブロンソンがベテラン殺し屋で、ジャン=マイケル・ヴィンセントが新人で、レミントンM31ショットガンを使いまくってたこと以外、ストーリーはほとんど覚えていない。でも本作を見て少し思い出した感じ。

 なかなかよくできた物語。ベンが、アーサーが父親のハリーを殺したことを知らないところがミソ。ただ、オリジナル版は若手がさわやかで魅力的なジャン=マイケル・ヴィンセントだったのに対して、リメイク版は若手が問題児というような設定で、まるで印象がジャンキーというかチンピラのようなスティーブ・マッケンナというのが、どうなんだろう。あまりかわいそうな気がしない。ただ何をやらかすかわからない怖さは確かにある。

 主演のジェイソン・ステイサムは映画出まくり。ついこの前シルヴェスター・スタローンのアクション「エクスペンダブルズ」(The Ezpendables・2010・米)に出ていたかと思えば、つい先日リメイク版の「ロシアン・ルーレット」(13・2010・米)にも出ていた。そして本作だ。仕事中毒か。それぞれの出来はともかく、ジェイソン・ステイサムはみな全力という印象。これだけ映画に出て、手抜きとか、クォリティが落ちたと感じさせないところはすごい。次は刑事ものの「ブリッツ」だとか。控えている作品が「エクスペンダブルズ2」も含めて5本もある。超売れっ子。使っていた銃は、USP、M92、P226、バルメM76、FN F2000など。使っていたPCはMacBook Air、MacBook Pro、iMac。趣味はアナログ・レコードとクラシック・カーのレストアという設定。

 弟子のスティーブ・マッケンナを演じたベン・フォスターはたちの悪い悪役が多い人。フルース・ウィリスのアクション「ホステージ」(Hostage・2005・米/独)では、高級邸宅に侵入したバカな若者を演じて憎たらしかったし、素晴らしい出来だったリメイク西部劇「3時10分、決断のとき」(3:10 to Yuma・2007・米)でも、ラッセル・クロウの暴走してしまう部下を演じて嫌らしかった。この人も上手い人で、新作が5本も控えている。使っていた銃はP226、UZI、G36C、バーレットM82のショート・モデルなど。

 その父親ハリー・マッケンナを演じたのがドナルド・サザーランド。「24」シリーズのキーファー・サザーランドのお父さんだ。ボクは見ていないが「プライドと偏見」(Pride & Prejudice・2005・仏/英)や「再会の街で」(Reign Over Me・2007・米)に出ていたらしい。ボクが見たのはニコラス・ケイジの「ロード・オブ・ウォー」(Lord of War・2005・仏/米/独)。一番好きなのはイーストウッドの「戦略大作戦」(Kelly's Heroes・1970・ユーゴスラビア/米)かな。使っていた銃は、スライド両面に格言が刻まれたM1911A1のニッケルめっき、パール・グリップ付きカスタム。どうもプロップは何種類かあったようで、アップになった時オートオードナンス社のものとコルト社のものがあることがわかるらしい。

 組織のボス、ディーン・サンダーソンを演じたのはトニー・ゴールドウィン。MGMの創始者のサミュエル・ゴールドウィンをおじいちゃんに持ついわばサラブレッド。しかし冷たい悪役の多い人で、渡辺謙を世界的に有名にした傑作「ラスト・サムライ」(The Last Samurai・2003・米)では、トム・クルーズの嫌らしい上司を演じていた。使っていたPCはDELL。

 別組織の巨漢のメカニック、バークを演じていたジェフ・チェイスは、ザ・ロックの痛快アクション「ランダウン ロッキング・ザ・アマゾン」(The Rundown・2003・)でギャングを演じていたこと。「トランスポーター2」(Transporter 2・2005・仏/米)でもそんな役で、ジェイソン・ステイサムと共演している。

 アーサーお気に入りの娼婦サラを演じた美女はミニ・アンデン。スウェーデン生まれのモデル出身で、ハリウッド進出後、主にTVで活躍していたらしい。「オーシャン12」(Ocean's Twelve・2004・米)のモデル役(そのまんまだ)や、「トロピック・サンダー」(Tropic Thunder・2008・米/英/独)のトム・クルーズの秘書役など、小さな役が多かったが。ようやく本作で大きな役を得たと。

 他に使われていた銃は、.380ポケット・オート(imfdbによればNAAガーディアンらしい)、冒頭のギャングがMP5、組織のガードマンがグロックやFN P90など。武器担当は映画のクレジットではセル・リードとあったが、IMDbではマスター・アーマラーはアンドリュー・ワート。アンドリューは第2班らしく、やはりメインはかつての早撃ち世界一、セル・リードだろう。インチキ宗教家のボディ・ガードたちの動きはまさに訓練を受けた特殊部隊や民間軍事会社のオペレーターのそれ。ガン・コーチでもあるセル・リードの仕事に違いない。セル・リードは「プルーフ・オブ・ライフ」(Proof of Life・2000・米)などラッセル・クローの映画のほとんどを手掛けており、「3時10分、決断のとき」もやっているからベン・フォスターはやりやすかったのではないだろうか。近作は「エイリアン&カウボーイ」、西部劇だから当然か。

 オリジナル脚本はルイス・ジョン・カリーノ。TVの人だが、過去にはカーク・ダグラスの「暗殺」(The Brotherhood・1968・米)などを手掛けている。三島由紀夫原作の「午後の曳航」(The Sailor Who Fell from Grace with Sea・1976・英)では監督業にもチャレンジしている。

 本作の脚本を手掛けたのは、オリジナル版のルイス・ジョン・カリーノとリチャード・ウェンクの2人。リチャード・ウェンクはブルース・ウィリスの痛快アクション「16ブロック」(16 Blocks・2006・独/米)の脚本を手掛けた人。どうりでうまいわけだ。

 監督はサイモン・ウェスト。イギリスのBBCテレビからCMの世界へ入り、ニコラス・ケイジのアクション「コン・エアー」(Con Air・1997・米)でハリウッド・デビュー。軍隊ミステリー「将軍の娘/エリザベス・キャンベル」(The General's Daughter・1999・独/米)や「トゥームレーダー」(Lara Croft: Tomb Raider・2001・米/英/日/独)と次々手掛けたあとしばらくTVの方にシフト、久々に撮った劇場作品が本作。2006年に撮ったスリラー「ストレンジャー・コール」(When a Stranger Calls・2006・米)も「夕暮れにベルが鳴る」(When a Stranger Calls・1979・米)のリメイクだったが……。しかも低評価……。ちなみにオリビア・ハッセーの「暗闇にベルが鳴る」(Black Christmas・1974・加)というサスペンスもあったっけ。

 公開3日目の2回目、新宿の劇場は全席指定で、2時間前くらいに確保して、20分前くらいにもどったら平日だというのにお盆休みのためか1Fのエレベーター前からビルの外まで列ができていた。どうもこの劇場は設計が良くないようで、9個もの劇場があるのに1Fのエントランスには小さなエレベーターが3台のみ。たいして混まなくても、まずエントランスがボトルネックになる。しかもその狭いエントランスに入口は3カ所もあり、インターネットのだかのチケット受け取り機械が何台か置いてあり、これがまたじゃま。

 9階のロビーも狭く、帰る人のエレベーター待ちの列、入場券を買う人の列、ドリンクを買う人の列、関連グッズや前売り券を買う列、開場を待つ人たちがそれぞれ交錯してしまい、大混乱。動線の整理がなってない。プロの仕事とは思えない。しかも整理する人が少ないからそれに拍車をかける。見前からストレスのたまる劇場だ。

 どうしてもコーヒーが飲みたくてドリンクの列に並んだが、これが大誤算。時間が掛って10分前の開場のアナウンスがあった時もまだ並んでいて、遅れて劇場へ。

 場内は20代くらいが1/3くらい、中高年が2/3くらい。男女比はほぼ半々。明るいまま「ランゴ」版の案内や、「探偵はBARにいる」の予告があってから、半暗になってCM。本編の上映が始まっても入って来ていたので、はっきりしないが、最終的には253席に8.5割りくらいの入り。平日なのに立派。

 予告編で気になったのは……ジェイソン・ステイサムが過激な刑事を演じる「ブリッツ」はB級的な臭いがぷんぷんするが、おもしろそう。ただメイン・ビジュアルでジェイソン・ステイサムが持っている銃がコルトの残念な銃、ダブル・イーグルのようで、しかもトリガーに指が掛かっているというシロート的持ち方。日本で作ったビジュアルだろうか。

 塀の中でめしの思い出を語るトーク・バトルというのは「極道めし」。予告では、笑えるらしいが、泣かせようという感じがミエミエでちょっとあざといような……。

 韓国映画、上下マスクの「アジョシ」は、おじさんという意味で、隣の家のおじさんと幼い少女の心の交流を描くものらしい。そのおじさんを演じるのが、2年の兵役から帰ってきたウォンビン。9/17から。すごいアクションっぽいし、ちょっと気になる。

 ようやく公開されることになった3D洞窟探検映画「サンクタム」。9/16から。


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