The Tree of Life


2010年8月20日(土)「ツリー・オブ・ライフ」

THE TREE OF LIFE・2011・米・2時間18分(IMDbでは139分)

日本語字幕:手書き風書体下、松浦美奈/ビスタ・サイズ(一部デジタル、1.85)/ドルビー・デジタル、dts、SDDS(IMDbではドルビー・デジタルのみ)

(米PG13指定)

公式サイト
http://www.movies.co.jp/tree-life/
(音に注意。全国の劇場リストもあり)

母、オブライエン夫人(ジェシカ・チャステイン)のもとに1本の電話があり、19歳の次男が死亡したことを知らされる。その報は父のオブライエン(ブラッド・ピット)と長男ジャック(ショーン・ペン)の元にも届く。そしてジャックは、いまの自分は母と弟が導いたと、幼い頃を思い出す。弟が産まれた時、記念に庭に木を植えた。やがてもう1人の弟も生まれるが、3人兄弟の中で次男は父に似ており、音楽もこなし、絵もうまく、ジャックにとってかわいいがねたましい存在でもあった。父は子供たちを厳しく育て、妻にもそれを求めた。そして発明家でもあった父は訴訟に敗れ、やがて会社から解雇され、庭付きの家を売らざるを得なくなる。

71点

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 IMDbでは7.8点という高評価。しかもカンヌ映画祭バルムドール受賞。しかし、頭の悪いボクには良くわからなかった。見終わって暗澹たる気持ちになった。デートや友人などと一緒に見たとしても、このあと会話が弾むとは思えない。思わず無口に黙り込んでしまう、そんな映画。だいたいカンヌは映画の芸術性を評価する映画祭なので、受賞した作品はお金を払って見るエンターテインメント作品の観点からは、それに値するかむずかしい作品が多い。しかもテレンス・マリック監督だし。大劇場というより、アート系で掛ける作品。

 ボクなりの印象をひとことで書くと、散文的映画。ストーリーはないに等しい。ある一家のある一時期を、それぞれの視点から、ただ思いつくまま綴った感じ。138分の間、息が詰まるような、居心地の悪い、ときにうんざりするような状況をたっぷりと味合わされる。長い、眠い……倦怠感。袋小路に追い込まれたような……いらいらと感情は動かされるが、感動もない。たぶん絶景的風景や、宇宙、光、森羅万象……それだけでは意味のない絵を排除して、家族のストーリーだけにしたら30分もあるかどうか。セリフも極端に少ない。あってもほとんどは各人のナレーション。うーむ。

 確かに結婚して子供が産まれ、父として尊敬されたいとか、家長として家族を養い導いて行かなければと強く思うと、思いとは逆に独善的になったり、厳格になりすぎたり、独断専行したり……夫婦げんかまで。実際、ボクの友人でもそういうケースがあるし。それが家庭内だけならまだしも、対外の他の人間関係にも影響し出して、あまり人付き合いがうまくいかなくなることさえある。

 本来は家族のことを思ってなのに、それによって家族を壊してしまう。本末転倒。自分もできない事を子供に強制する。なんでも自分の意のまま。成長するに従い、次第にその矛盾に気付き、反抗期を迎える。思春期、ホルモン・バランスも崩れ、心のバランスも崩れる。いらだちが募る。黒い思い。そして親との、父との衝突。危ういところで犯罪者となるのを免れる。紙一重。

 一方で、客観的には裕福ではないにしても、何一つ不自由のない暮らしをしていた少年時代。それはもっぱら父の稼ぎ、努力によるものだったが、愛情は母によってはぐくまれている。少年の心には優しい母、厳しい父というイメージができ上がっていく。

 ほとんどセリフがなくナレーションなので役者はあまり印象に残らないが、横暴な感じだけは伝わってきた父を演じたブラッド・ピットは、本作のプロデューサーでもある。そして製作会社の1つとしてブラッド・ピットの会社プランBが参加している。劇場長編の役者としてはこの前に「イングロリアス・バスターズ」(Inglourious Basterds・2009・米/独)に出ていて、このあと声の出演も含めて5作品が控えている。

 優しい母を演じたジェシカ・チャステインはほとんどTVのゲスト出演をしていた無名の人。本作への出演は最終的に監督が決定したとすれば、いい役者を発掘してきたのではないだろうか。だいたい監督が全体にシロウトかそれに近い出演者を考えていたようなので、その一環ということなのかも。本作の成功で今後は出演依頼が急増することだろう。すでに5作品が公開を控えている。

 暗い長男の少年時代を演じたのはハンター・マクラケン。プロの子役ではなく、スカウト・チームが撮影の地元となるテキサスで探し出してきた子らしい。ほかの2人も同様。とてもシロウトとはおもえないリアルな演技。ちょっと雰囲気が「ワイルド・バレット」(Running Scared・2006・独/米)のキャメロン・ブライトに似ている。

 脚本・監督はテレンス・マリック。「天国の日々」(Days of Heaven・1978・米)の後、映画界から遠ざかっていたようだが、第二次世界大戦の太平洋戦線を描いた「シン・レッド・ライン」(The Thin Red Line・1998・米)から復帰。その後監督作品は「ニュー・ワールド」(The New World・2005・米/英)と続くが、よりピンと来ない作品になっていく気がする。アート系批評家好みであるようだ。「天国の日々」もテキサスで、本作もテキサス。たぶんテレンス・マリック監督はこんな少年時代を過ごしたのだろうと思わせる。しかし生まれはイリノイ州オタワなんだとか。

 公開9日目の初回、新宿の劇場は全席自由で、10:30からのつもりで9:45くらいに着いたらなんと11:00からで、開場予定が10:45という立て札。まだ誰も並んでいない。60分前くらいに窓口が開き、45分前くらいに整列に来て、この時点で10人くらい。ほとんど中高年。男女は半々くらい。25分前くらいに開場となって場内へ。なんとペア・シートも含め全席自由。歌舞伎町の劇場はバダバタとなくなっているが、ここは大丈夫なんだろうか。この時点で25人くらい。

 最終的には若い人も少し増えて、1,064席に2.5割りくらいの入り。アート系(FOXサーチライト)だし、こんなもんだろう。むしろ良く入っている方。人にお勧めしやすい作品じゃない。

 スクリーン周りだけ暗くしての見にくい予告で気になったのは……ブラッド・ピットの「マネーボール」は、実話に基づく野球チーム立て直し映画。なかなか面白そう。

 上下マスクの「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」は新予告に。また3Dというのがどうかと思うが、面白そう。特にクリス・エヴァンスが小男として現れるのがスゴイ。ピラッド・ピットが出た「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」(The Curious Case of Benjamin Button・2008・米)の技術なんだろうけど。

 案内で「ケータイを使うな」と言っているそばから、堂々とケータイを使っているヤツが。具体的にメール・チェックや時間確認などで液晶画面を点灯させるなと言った方がいいのかも。いや、それでもダメかなあ。映画が終わったと思ったらすぐケータイをチェックするヤツいるし。ロビーはすぐそこなんだから、ロビーに出てからチェックすればいいじゃないか。なぜまだ暗い場内で点灯させる?


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