Hanna


2010年8月28日(日)「ハンナ」

HANNA・2011・米/英/独・1時間52分(IMDbでは111分)

日本語字幕:手書き風書体下、小寺陽子/シネスコ・サイズ(マスク、Arri、Super 35、HDTV)/ドルビー・デジタル、dts

(米PG-13指定)

公式サイト
http://www.hanna-movie.jp/
(入ったら画面極大化。音にも注意。全国の劇場リストもあり)

フィンランドの山奥の小屋で元CIAの工作員の父エリック・ヘラー(エリック・バナ)によって、徹底的に殺人マシーンとしてのテクニックを叩き込まれた少女ハンナ(シアーシャ・ローナン)は、自ら準備ができたと判断し、使命を果たすためわざと通信機の電源を入れ、位置をCIAに知らせる。そして予定通りCAIに逮捕・連行されると、マリッサ・ヴィーグラー(ケイト・ブランシェット)になら話すと言い放つ。マリッサがニセモノを送り込み本物と信じ込ませると、いとも鮮やかにニセモノを殺害し、守衛も次々と倒して脱出してしまう。マリッサはその筋の問題解決に優れた危ない男アイザック(トム・ホランダー)に、殺さないで捕まえてくれと依頼する。

75点

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 いやあ、主演の少女、シアーシャ・ローソンも良いが、何より冷酷で利己的なCIAのマリッサを演じるケイト・ブランシェットが怖くて良い。ゾッとする。何という冷血。平気でウソをつくし、憎たらしいし、美人だし、見事。この映画は敵役のケイト・ブランシェットの出来にかかっていたのではと思わせるほど良い。

 そして、シアーシャ・ローソンをプロの殺し屋っぽく見せている技術も卓越している。あのかわいい少女が、感情が薄くドール(人形)のように見えるし、17歳とは思えない。無表情で感情の起伏が希薄な分、むしろ13〜14歳の感じ。

 冒険譚、ロード・ムービー的な面白さ、そして少女が主人公なのに本格的なハード・アクションで、しかも少女の成長の物語で、ミステリーとしての要素も取り込み、世間と隔絶された世界で生きてきた少女と現実世界のギャップで笑わせるコメディでもあり、恐ろしい殺し合いの話でもあって、全体としてはミステリー調という仕上がり。見事だと思う。音楽とも良くシンクロしていて、進展を焦らずじっくり描いていくスタイルはいまの時代とは違うかも知れないが好感が持てる。

 主演のシアーシャ・ローナンはアイリッシュ系だそうで、1994年、ニューヨーク生まれ。本作のジョー・ライト監督の「つぐない」(Atonement・2007・英/仏)で無実の人をチクってしまうヴァネッサ・レッドグレーヴの少女時代を演じて注目され、ピーター・ジャクソン監督の残念なスリラー、「ラブリーボーン」(The Lovely Bones・2009・米/英/ニュージーランド)でメジャーになった美少女。冒頭、鹿にとどめを刺すのはルガーP08。ちゃんとオープン・ストップしている。CIAの施設から脱出する時ガードから奪って使う銃は、タウルスかリャマかと思っていたら、imfdbによると南アのヴェクターSP1だとか。

 彼女を追うCIAの黒幕マリッサ・ヴィーグラーはケイト・ブランシェット。さすがにうまい。いかにもこんなやり手がいそう。デビュー翌年の「エリザベス」(Elizabeth・1998・英)ですでに大女優の風格。最近は「ロビン・フッド」(Robin Hood・2010・米/英)でロビンの恋人マリアンを演じていた。悪役としては「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(Indiana Jones and the Kingdom o the Crystal Skull・2008・米)あたりがあるくらい。使っていた銃はサイレンサー付きのシルバーのワルサーPP。やや構え方が古いカップ&ソーサー風だったのは残念。

 CIAの工作員の父エリック・ヘラーはエリック・バナ。「ブラックホーク・ダウン」(Black Hawk Down・2001・米)の特殊部隊員もよかったが、「ミュンヘン」(Munich・2005・米/加/仏)の暗殺者はインパクトが強かった。マッチョな役が多い気がするが、SF純愛ドラマ「きみがボクを見つけた日」(The Time Traveler's Wife・2009・米)などにも出ている。演技は抜群に上手いが、印象としてはちょっと暗い感じ。使っていた銃はベレッタM92のスライド・シルバーと普通のM92。なぜ2種なのかは不明。

 金髪で、アイラインを入れ、セルジオ・タッキーニのテニス・ウェアを来ているオネエっぽい危ない男アイザックはトム・ホランダー。「パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト」(Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest・2006・米)で嫌らしいイギリスのベケット卿を演じていた人だ。ジョー・ライト監督の劇場長編デビュー作「プライドと偏見」(Pride & Prejudice・2005・仏/英)と、見ていないがジョー・ライト監督の最近作「路上のソリスト」(The Solist・2009・英/米/仏)にも出ているとか。ヒット作の続編「エリザベス:ゴールデン・エイジ」(Elizabeth: The Golden Age・2007・英/仏/独)ではケイト・ブランシェットと共演している。

 途中で出会う今どきのハッピー・ファミリーのシンボル的存在の家族のパパはロンドン生まれのジェイソン・フレミング。悪役が多いが、本作はとぼけたオヤジ。A級からB級、超マイナーまで、いろんな映画に出ていて、つい最近面白かった人気シリーズのプリクエル「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」(X-Men: First Class・2011・米)に出ていた。

 その奥さんもロンドン生まれのオリヴィア・ウィリアムズ。ケヴィン・コスナー監督・主演の 「ポストマン」(The Postman・1997・米)でヒロインを演じて注目され、M.ナイト・シャマランで唯一面白かった「シックス・センス」(The Sixth Sense・1999・米)でブルース・ウィリスの妻を演じた。ホラーの「ビロウ」(Below・2002・米)では唯一の女性乗客を演じ、ジェイソン・フレミングと共演している。最新作は見ていないがロマン・ポランスキー監督の「ゴーストライター」(The Ghost Writer・2010・仏/独/英)。

 原案・脚本は、本作が劇場長編映画デビュー作というカナダ生まれのセス・ロクヘッド。この後どんな作品を描くのか、注目だ。もう1人の脚本はデヴィッド・ファー。BBCの人気ドラマ「MI-5」(Spooks・2002〜・英)の脚本を手掛けているので、サスペンス&アクションは得意なのかも。ただ劇場長編映画は初めて。

 監督はジョー・ライト。元はTVの人で、劇場長編映画デビュー作が「プライドと偏見」で、「つぐない」、「路上のソリスト」と続く。基本的にドラマの人かと思っていたら、アクションも撮れるとは。まあ、才能のある人は何をやらせても上手いということはあるのかも。今後どんな作品を撮ってくるのだろう。

 他に銃は、急襲部隊がMP5とM4カービンそっくりのHK416を使っている。

 ラストのセリフ、「心臓、外しちゃった」が効いている。

 公開2日目の初回、新宿の劇場は全席指定で、金曜に確保しておいて30分前くらいに到着。17〜18分前くらいに開場となって場内へ。アナウンスが早口で聞き取りにくかった。歳か。最初はほとんど中高年だった。男女比は7対3くらいで男性が多かった。やがて少し若い人も増えたが、メインは中高年。最終的には157席ほぼ満席。キャパが小さいので当然か。

 気になった予告編は……渡辺謙主演の「はやぶさ 遥かなる帰還」は、確かに感動的な話だったが、映画ねえ……。ハーレクイン的吸血鬼映画のシリーズ最新作「トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーン Part 1」。ボク的にはもうどうでもいい感じだが、待っている人がいるんだから……しかもパート1ということは、前後編じゃなく3も?


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