Tantei wa Bar ni iru


2010年9月11日(日)「探偵はBARにいる」

2011・東映/テレビ朝日/木下グループ/東映ビデオ/アミューズ/クリエイティブオフィスキュー/東映チャンネル/北海道新聞社/北海道テレビ/メ〜テレ/朝日放送/広島ホームテレビ/九州朝日放送・2時間05分

ビスタ・サイズ(ARRI)/ドルビー・デジタル

(日PG12指定)

公式サイト
http://www.tantei-bar.com/
(全国の劇場リストもあり)

札幌ススキノの私立探偵、オレ(大泉洋)は、北大農学部の助手で空手の師範代でもある高田(松田龍平)を助手兼運転手としてアルバイトで雇い、バー“ケラー・オオハタ”で仕事の依頼の電話を受けていた。そして雪祭りの夜、2人は北海道日報記者の松尾(田口トモロヲ)の依頼で、盗み撮りされた写真を回収する仕事を無事終え、データを松尾に渡した。同じ頃、霧島グループの20周年パーティーが催され、その帰り、社長の霧島敏夫(西田敏行)は拉致されそうになった少女を見かけ助けに入って逆襲にあい撲殺されてしまう。1年後、オレは「近藤京子」と名乗る女性からの依頼で、札幌経済法律事務所の弁護士、南(中村育二)の調査を始めると、北栄会花岡組の幹部らしい男、加藤(高嶋政伸)が現れ、雪原に生き埋めにされる。

74点

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 面白い。そして感動した。切ない物語。あやうく涙がこぼれそうに……。よくできた物語で、関係なさそうな話もすべてからんできて、最後にはピタリとピースがハマって真相が明らかになる。ただ、オレの冒頭のナレーションで、たぶんこの人だろうという予想はつく。

 2つ気になったことがあって、1つは色調というか、画調がとても古くさい感じだということ。なんだか1960年代とか1970年代に撮ったような、そんな雰囲気。粒状感もあって高感度撮影しような感じで、色はやや黄色みを帯びていて、解像度も低い。確かにフィルムっぽくはあるけど、ハイビジョン時代の映像とは思えない。それが昔のハード・ボイルドの雰囲気を出すのにもひと役買っているのかもしれない。まさか、演出でそれを狙ったとか? 近藤京子の母、近藤百合子(竹下景子)を訪ねるシーンでは、室内撮影なのだがロケっぽく、途中で日が陰ったらしく突然画面が暗くなったりしていたが、それも演出ってことはないと思うけど……でも普通はNGなんじゃないかなあ。

 もう1つは、前半のハードボイルドの硬派な面と、コミカルな部分のバランスが、ややシリアスに寄っていて、カッコつけているように見えてしまうこと。結果論、あるいは好みの問題かもしれないが、前半はむしろちょっとコメディ寄りの方が主人公たちを好きになりやすいし、物語にも入りやすい気はした。スカした感じがしてしまうと、反射的にちょっと引いてしまう。そして笑えるシーンなのに、笑っていいのかためらってしまう。もったいない。

 あとは、ハードボイルドの定番的なものをすべて盛り込んで、ちょっとエロが多い気がしつつも、実に良い感じのミステリーに仕上がっていると思う。125分が全く長くなく、ちょうど良い感じ。探偵さんと一緒に捜査に加わっているような気になる。ちょっとした旅のような、そんな体験ができる。役者もそれぞれ見事で、ピタッとはまっている。まあ写真でしか出てこない人もいるけど。

 主演はどこか飄々として、ちょっとコミカルな大泉洋。良い人という感じ。スカした感じは似合わない。第1作はとても面白かった2作目「ガメラ2レギオン襲来」(1996・日)に地下鉄の乗客として出たあたりから映画のキャリアがスタートしているらしい。アニメの声優も良くやっている。有名なのは「ブレイブストーリー」(2006・日)あたりか。映画のできはともかく「ゲゲゲの鬼太郎」(2007・日)のねずみ男はハマりすぎていて笑った。NHKの大河ドラマ「龍馬伝」(2010)で認知度が一気に上がったのでは。最近は見ていないが「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(2011・日)に出ていた。「則天道場」の副長から奪ったものだったか、後半に手にすることになる銃はS&Wのミリタリー・アンド・ポリス2インチのようだった。

 相棒の高田は松田龍平。こちらも飄々とした雰囲気でいい味を出していたが、やはり大泉洋に比べると暗い感じがしてしまう。弟の松田翔太の方がひょっとしたらこちら向きだったか。でも2人とも似たような感じだと主人公が目立たなくなる。そういう意味ではピッタリだったのかも。大島渚の新撰組もの「御法度」(1999・日)あたりから映画に出て、「昭和歌謡大全集」(2002・日)、「CUTIE HONEYキューティーハニー」(2003・日)、「悪夢探偵」(2006・日)、「伝染歌」(2007・日)など話題作に良く出ている。最近は見ていないが「まほろ駅前多田便利軒」(2011・日)に出ていたらしい。

 謎の女、沙織は小雪。独特の雰囲気を持っている。ベストはハリウッド大作の「ラストサムライ」(The Last Samurai・2003・米)だろう。そして感動名作「ALWAYS三丁目の夕日」(2005・日)、アクション満載の「ラスト・ブラッド」(Blood: The Last Vampire・2009・香/仏/中)、残念だった「カムイ外伝」(2009・日)などに出ている。「ゲゲゲの鬼太郎」で 大泉洋と共演している。使った銃はベレッタのM84。

 不気味な殺し屋、加藤は高嶋政伸。TVドラマ「HOTEL」の元祖良い人、高島弟。本作では前髪をおかっぱのようにして目を隠し、鼻とベロにピアスで不気味さを出していて、ちょっとステレオ・タイプではあるものの成功している。さすが演技もうまい。実に不気味で怖い。何をする革からない感じ。ほとんどTVが多い人で、映画はアクションの「ホーク/B計画」(B計画・1998・香/日)、ホラーの「感染」(2004・日)などに出ているが、最近は「ジェネラル・ルージュの凱旋」(2009・日)や「20世紀少年〈最終章〉ぼくらの旗」(2009・日)であとはTVという感じ。使っていた銃はシルバーの1911オートでサイレンサー付き。

 いいキャラクターだったのは、探偵のオレが通うまずいナポリタンを食わせる喫茶店「モンデ」のお色気過剰なウエイトレス、峰子を演じた安藤玉恵。VシネやTVのほか、「ぼくたちと駐在さんの700日戦争」(2008・日)などに出ていて、最近では「毎日かあさん」(2011・日)や「八日目の蝉」(2011・日)に出ているらしい。とにかくいい味を出している。

 そして、放火事件の犯人らしい即天道場の田口の母、康子を演じた阿知波悟美。いかにもいそうなオバサン。伊丹十三の「スーパーの女」(1996・日)や「ゴジラ2000ミレニアム」(1999・日)にも出ているらしい。最近はTVが多いようで、NHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国」(2011)に出ているんだとか。

 消失した階楽会館にあったスナックの元従業員で、ぺらぺら喋る女を演じていたのが、新谷真弓。この人も本当にいそうな存在感。アニメの声優としての活躍も多く、映画では「CUTIE HONEYキューティーハニー」で松田龍平と共演している。もっと活躍しても良いのでは。

 歌手のマキはカルメン・マキ。オジサン世代には懐かしい名前。「時には母のない子のように」流行ったなあ。本作で唄っていた曲は実にいい雰囲気。「時計を止めて」。良かった。エンディングの雰囲気にもピッタリ。染みた。この曲欲しい。

 脚本は古沢良太とプロデューサーも兼ねる須藤泰司。古沢良太は「ALWAYS三丁目の夕日」やTVの「相棒」第4シーズン(2005)以降、見ていないが「キサラギ」(2007・日)や「釣りキチ三平」(2009・日)なんかも書いている。須藤泰司は「相棒」シリーズのプロデューサーで、脚本は初めての模様。

 監督は橋本一。TVドラマ「相棒」のシーズン2から監督。合間に「極道の妻(おんな)たち情炎」(2005・日)や「茶々天涯の貴妃(おんな)」(2007・日)が入っている。いずれも東映作品。「相棒」を見ていないので、作風など良くわからない。本作だけでは何とも……。

 銃器特殊効果はF&Tの会田文彦。「スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ」(2007・日)や「今日からヒットマン」(2009・日)などを手掛けている。

 銀座の劇場は、公開初日は舞台あいさつがあるというのでパスして、2日目の初回、全席指定で金曜に確保しておいて、20分前くらいに着。すでに開場していた。20代くらいから中高年までいたが、メインは中高年。男女比は4対6くらいで、オバサンが多い感じ。869席中2F席があったのかわからないが、1F席は最終的に7割くらいの入り。客席数の割にはスクリーンが小さい印象。

 「山本五十六」は東映らしい王道の戦争映画という感じ。山本五十六は戦争に反対していたと。上下マスクの「スマグラーおまえの未来を運べ」は面白そう。「トランスポーター」(The Transporter・2002・仏/米)的なところまでいくんだろうか。

 オダギリジョー、チャン・ドンゴン、ファン・ビンビン、監督に「シュリ」(Swiri・1999・韓)のカン・ジェギュで描く第二次世界大戦の裏話「マイウェイ12,000kmの真実」。ノルマンディ上陸でドイツ軍捕虜の中に1人の日本人がいて、信じられないような話を語り始めた、というお話。面白そう。


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